空き家の火災保険・地震保険 ── 住宅用と扱いが変わる理由と備えの選択肢

実家を相続して空き家のまま持っている、住み替えて前の家が空いている──そんなとき、火災保険をどうしていますか。
「誰も住んでいないから保険は要らない」「今の保険がそのまま使える」と思われがちですが、どちらも正確ではありません。空き家は火災保険の扱いが住宅用と変わることがあり、放っておくといざというとき保険金が支払われないおそれがあります。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、空き家に残るリスク、火災保険の物件区分(住宅物件・一般物件)、空き家になったときの手続き、地震保険の扱い、失火責任法と工作物責任、備えの選択肢までを整理します。
制度・保険の扱いは2026年8月時点のものです。個別の契約の扱いは保険会社・代理店にご確認ください。

空き家にもリスクは残る──むしろ管理が薄い分だけ

まず前提の整理です。人が住まなくなっても、建物のリスクはなくなりません。
・火災:放火や、電気設備・周辺からのもらい火など、無人でも火災は起こり得ます。人の出入りがない分、発見が遅れやすい面もあります
・自然災害:台風・大雪・地震による損傷は、居住の有無に関係なく発生します。傷んだ箇所が放置されると被害が広がりやすくなります
・第三者への損害:外壁や屋根材の落下、塀の倒壊などで通行人や隣家に損害を与えれば、所有者が賠償責任を負うことがあります(後述。具体的なトラブル例は
空き家の近隣トラブルをどうぞ)
つまり、空き家は「守るもの(建物)」と「守るべき相手(周囲)」の両方に対して、居住中と変わらない、管理が薄くなる分むしろ高まり得るリスクを抱えています。その受け皿になるのが保険ですが、空き家では扱いが変わります。ここからが本題です。

火災保険の扱い──「住宅物件」と「一般物件」

火災保険では、建物が用途によって区分されています(2026年8月時点)。
・住宅物件:主に人の居住の用に供する建物として扱われる物件です。一般的な住宅用火災保険の対象です
・一般物件:店舗・事務所など、住宅物件以外として扱われる物件です
・どちらに区分されるかは、建物の実際の使われ方をもとに保険会社が判断します
この区分が空き家の出発点です。
・居住実態のない空き家は、住宅物件として扱われず「一般物件」扱いになる場合があります
・一般物件扱いになると、契約できる商品が限られ、保険料も住宅物件に比べ割高になりやすい傾向があります
・一方、別荘など季節的に使用する建物や、転勤・工事などで一時的に空き家になっている建物は、家財が備え付けられているなどの条件を満たせば、住宅物件として加入できる場合があります
「空き家=保険に入れない」ではありません。使い方・管理状態・今後の予定によって扱いが変わる、というのが正確なところです。だからこそ、状況を正直に伝えたうえで契約することが大切になります。

住んでいた家が空き家になったら──保険会社への連絡が必要

見落としやすいのが、住んでいた家がそのまま空き家になったケースです。
・住宅用の火災保険は「人が住んでいること」を前提にした契約です。空き家になったことは契約の前提が変わる事情にあたるため、保険会社へ連絡し、告知・契約内容を更新する必要があります
・連絡せずに放置すると、いざ火災や災害が起きたときに保険金が支払われないおそれがあります
・住み替え・相続・入院や施設入所など、空き家になる事情はさまざまですが(相続の場合は
相続登記の義務化もあわせて確認を)、いずれの場合も「空き家になったら保険会社に連絡」が基本です
保険は正直な告知が土台の仕組みです。「黙っていれば住宅用のまま安くすむ」は、保険が最も必要な場面で機能しない結果につながりかねません。手続きとしてはひと手間ですが、空き家になった時点で保険会社・代理店に契約内容の確認を依頼しておきましょう。

地震保険の扱い──対象は「居住の用に供する建物」

地震保険は火災保険とは別の整理が必要です(2026年8月時点)。
・地震保険は地震保険法に基づく制度で、対象は「居住の用に供する建物」と家財(生活用動産)に限られています
・地震保険は単独では契約できず、火災保険とセットで契約します
・このため、一般物件として火災保険を契約する空き家には、地震保険を付帯できません
・逆に、別荘のように住宅物件として火災保険に加入できる場合は、地震保険を付帯できることがあります(扱いは保険会社にご確認ください)
地震による損傷は火災保険では補償されないため、「地震にどう備えるか」は空き家では特に悩ましい論点です。住宅物件として扱われる余地があるか、それが難しいなら建物の耐震状態や管理をどうするか──保険の可否とあわせて考えることになります。

隣や通行人に損害を与えたら──失火責任法と工作物責任

空き家の保険を考えるうえで、あわせて知っておきたい法律が2つあります(2026年8月時点)。
●火事を出した場合──失火責任法
・失火責任法により、火元に「重大な過失」がなければ、延焼で隣家に損害を与えても不法行為による損害賠償責任は負わないとされています
・これは裏を返せば、隣家からのもらい火で自分の建物が燃えても、火元に賠償請求できないのが原則ということです。自分の建物は自分の火災保険で守る──これが火災保険が必要とされる大きな理由です
●建物で損害を与えた場合──工作物責任(民法717条)
・建物の設置・保存に瑕疵(かし。安全性を欠く状態)があって他人に損害を与えた場合、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意を尽くしていたときは所有者が賠償すると定められています
・所有者の責任は無過失責任とされ、「知らなかった」「過失がなかった」では免れません。空き家は住んでいる人(占有者)がいないため、所有者の責任が問われやすい構図です
・外壁や瓦の落下、塀の倒壊で通行人にけがをさせた──そうした場合の賠償は高額になり得ます。この備えとして、施設賠償責任保険(建物の管理の不備による賠償をカバーする保険。特約型もあります)が選択肢になります
火災保険が「建物を守る」保険だとすれば、賠償責任の備えは「周囲への責任に応える」保険です。空き家では両方の視点が要ります。

備えの選択肢──保険・管理・そして解消

整理すると、空き家の備えは次の選択肢の組み合わせになります。

備え内容注意点
空き家に対応した火災保険一般物件向けなど、空き家でも契約できる商品で建物を守る引受可否・区分・保険料は会社と物件の状態で異なる。複数社比較と正直な告知が基本
施設賠償責任保険外壁落下・塀の倒壊など、管理の不備で第三者に与えた損害に備える単体・特約の形がある。補償範囲と支払条件は契約により異なる
定期的な管理との併用見回り・通風・修繕で建物の傷みと事故の芽を抑える(遠方の場合は管理代行も)保険は管理の代わりにならない。管理状態が悪いと引受を断られたり、補償されない場合がある
売却・活用で空き家状態を解消売る貸す・住むことで「空き家」でなくす保険料や管理費が積み上がる前に検討する価値がある。空き家の期間が短いほど選択肢は広い

保険はあくまで「起きたときの備え」です。保険料と管理の手間が毎年積み上がっていくなら、売却や賃貸活用で空き家状態そのものを解消することも、同じテーブルに載せて考えてよい選択肢です(比べ方は空き家をどうする?で整理しています)。

空き家の今後を含めた整理は、LINEでもご相談いただけます。持ち続ける場合の備えから、売却・活用まで、状況に合わせて一緒に考えます。

まとめ

空き家の火災保険・地震保険は、次のように整理できます。
・空き家にもリスクは残る:火災・自然災害・第三者への賠償。管理が薄い分むしろ高まり得る
・火災保険は区分で扱いが変わる:居住実態のない空き家は一般物件扱いになる場合があり、商品が限られ割高になりやすい。別荘など季節的使用は住宅物件となる場合も(保険会社の判断による・2026年8月時点)
・空き家になったら保険会社に連絡:告知・契約の更新を怠ると、保険金が支払われないおそれ
・地震保険は居住用建物が対象:一般物件として契約する空き家には付帯できない
・賠償リスクにも備える:失火責任法(もらい火は自分の保険で)と工作物責任(所有者は無過失責任)。施設賠償責任保険が選択肢
・保険は管理とセット、解消も選択肢:定期管理と併用し、保険料が積み上がるなら売却・活用も同じテーブルで
空き家は「持っているだけ」でも責任と費用が続きます。保険・管理・解消のバランスを、早めに整理しておきましょう。

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