なぜ "毎月赤字" でもワンルーム投資が成立するのか、ゼロから解説 ── 元ワンルームデベトップ営業がフェアに答える

2026-05-17

ワンルーム投資は、月単位で見ると赤字になる案件も多いです。
そのため "やめとけ" と一刀両断する声も、"絶対に得をします" と煽る営業も、どちらも世の中には溢れています。
ですが、本質はそのどちらでもないと私は考えています。

お金は手段であり、目的から逆算して "いくら必要か" を把握しないと、ワンルーム投資は損になります。
逆に目的と仕組みを正しく理解すれば、"毎月赤字" でも合理的な投資として成立し得ます。
結論を先に出すと、ワンルーム投資は4つの仕組みとポートフォリオ視点で成り立ちます。
ただし、誰でも得をするわけではありません。

私は元京都ワンルームデベのトップ営業として、業界の内側を見てきました。
その立場から、賛否どちらにも偏らない "条件付き擁護" の視点でお伝えします。

著者の立場 ── 賛否どちらも見てきた人間として

私は京都のワンルームマンションデベロッパーで、トップ営業として実際に物件を販売してきた経歴があります。
つまり "売る側" の論理と、現場でお客様がどんな不安を抱えるのかを、両方知っている立場です。

現在は独立し、ONZA Estateの代表として、好立地の区分マンションを中心とした投資用物件の仲介を行っています。
売る側と買う側の双方を経験している人間は、業界でも限られます。
だからこそ、営業トークの "盛っている部分" も、批判派が "見落としている部分" も、どちらも具体的に指摘できると考えています。

この記事は、私が現場で実際にお客様に説明している内容を、可能な限りフェアに、数字つきで整理したものです。
営業的な煽りも、感情的な批判も、できる限り排除して書きます。

なぜ "毎月赤字" でも成立するのか、4つの仕組み

ワンルーム投資のキャッシュフローは、表面だけ見ると確かにマイナスになることが多いです。
ですが、"見えないリターン" が同時に動いています。
まずは全体像をテーブルで整理します。

仕組み何が起きるか効果(目安)
①ローン元本返済自己資本が積み上がる月約37,000円・年約44万円(初年度元本部分)
②団信生命保険の代替数千円相当の保障価値
③減価償却費と経費計上会計上の減価償却費に加え、不動産運営の実費を経費控除できる年0〜約80,000円程度の税負担軽減余地(所得・収支で変動)
④完済後ローン返済がなくなり手残りが増える月6万〜7万円前後・年80万円前後(空室・修繕・税金で変動)
上記はあくまでモデル試算です。
物件価格・金利・賃料・税率・空室・修繕により変動します。

① ローン元本の返済 ── 赤字に見えて、自己資本が育っている

仮に2,250万円・金利2.0%変動・35年元利均等でローンを組むと、月返済額は約74,500円になります。
このうち初年度の元本部分は月約37,000円、利息部分は月約37,500円です。

月のキャッシュフローが仮に -6,000円だったとしても、その裏側で月37,000円分の自己資本が育っています。
家賃という他人のお金で、自分の資産を組み立てている構造です。
30年間で元本返済の累計は約1,820万円にのぼり、ローン残債は約425万円まで減ります。

この関係を、簡易キャッシュフロー表と貸借対照表で見てみます。

項目金額
家賃収入+85,000円
月返済(うち元本返済約37,000円、利息約37,500円)-74,500円
諸費用(管理費・修繕積立金・賃貸管理料・固都税月割)-16,500円
月キャッシュフロー-6,000円

表面上は "毎月6,000円の赤字" です。
ですが、その裏側で何が起きているかを、次の表で見てみます。

時点資産(物件価格想定)負債(ローン残債)純資産
購入直後2,250万円2,250万円0万円
10年後約2,050万円約1,760万円約290万円
20年後約1,900万円約1,160万円約740万円
30年後約1,800万円約425万円約1,375万円
物件価格は京都駅近RC区分の築年経過による減価を織り込んだモデル試算です。
実際の相場・空室・修繕により変動します。

月単位では確かに赤字ですが、純資産は毎年着実に積み上がっていく構造です。
30年後には、年-72,000円のキャッシュアウトを30年累み重ねた -216万円に対し、純資産は約1,375万円まで成長します。

会計的な赤字と、実質的な資産形成は、別の話だということです。

② 団信 ── 月数千円で生命保険に入っているのと同じ

投資用ローンでも、団体信用生命保険が付帯できる商品は多くあります。
ただし、金融機関や健康状態により加入可否・保障範囲・金利条件は異なります。
契約者が死亡または高度障害になった時点で、ローン残債がゼロになる仕組みです。
つまり遺族には、無借金の収益不動産がそのまま残ります。

2,250万円相当の死亡保障を生命保険で確保しようとすると、年齢・条件にもよりますが、それなりの保険料が発生します。
団信は、その保障を実質的に肩代わりしてくれる装置と考えられます。

これによって "既存の生命保険を見直せる" のも、団信の大きなメリットの一つです。
家族構成や既存保障とのバランスを踏まえて必要保障額を設計し直せば、毎月の保険料を合理化できる可能性があります。
ただし、遺族の生活費や教育費まで含めた必要保障額は、団信だけでは足りないケースもあるため別途確認が必要です。

詳しくは 団信のレバレッジ で扱っています。

③ 減価償却費と経費計上 ── 高所得者ほど効きやすい税負担軽減

不動産投資では、減価償却費・運営に関わる実費を経費として計上できる仕組みがあります。
不動産投資は分離課税の証券投資とは違い、”総合課税”なので給与所得と不動産所得を合算して、課税所得を計算します。

会社員の場合、給与所得は「給与所得控除」という定型の控除しか使えませんが、不動産投資を始めれば不動産所得の計算上、自営業者のように実費の経費を控除できるようになります。
これは給与所得だけでは取りに行けない税負担軽減の手段として、会社員にとっても活用しやすいメリットです。

不動産投資の運営に関わる範囲で、以下のような支出が経費として計上できます。

管理費・修繕積立金

賃貸管理委託料

固定資産税・都市計画税

火災・地震保険料

ローン金利部分(元本返済は経費にはなりません)

修繕費・原状回復費・設備交換費

物件視察や運営に関わる交通費・通信費

司法書士報酬・確定申告のための税理士報酬

不動産投資関連の書籍・セミナー代

その他不動産投資にかかわる経費

そして、これらの経費の中で最も大きなものの一つが減価償却費です。
築10年のRC区分を例にすると、建物部分の価格を仮に1,000万円とすれば、 "年約26万円の減価償却費" を経費計上できます。

例えば年収が700万円の方であれば、所得税と住民税を合わせた税率は概ね30%前後になります。
減価償却費だけでも、26万円 × 30% = 年約7〜8万円分、所得にかかる税負担を抑える効果が見込まれます。

ただし、給与所得との損益通算による還付が生じるかは、賃料収入・借入利息・その他経費の扱いによって変わります。

高所得者ほど限界税率が高いため、損益通算できる赤字がある場合の税負担軽減効果は大きくなりやすいです。

築20年超など築古物件の場合は残存耐用年数が短くなり、年間償却額・節税額が大きくなる傾向があります。
ただし耐用年数を超えると償却は終了するため、節税効果は永続しません。

なお私の立場としては、"節税だけを目的にした不動産購入はおすすめしません"。
節税は "あれば嬉しいおまけ" 程度に位置付けるのが健全です。

節税の仕組みを整理した記事は 減価償却で給与所得を圧縮する仕組み で扱っています。

④ 完済後 ── ローン返済がなくなり手残りが増える

ローンを完済すれば、それ以降は管理費・修繕積立金・固都税・賃貸管理料・空室や修繕費を差し引いた後の手残りが大きくなります。

モデル試算の前提では、月賃料85,000円から諸費用16,500円を引いて、月約68,500円(年約82万円)が手元に残る計算になります。
一定の管理負担と変動リスクはありますが、ローン完済後は年金的な収入源になり得ます。
賃料は経年で下落する可能性もあるため、新築時の水準そのままではない可能性がある点には注意が必要です。

利益確定 ── 売却タイミングを自分で選べる

ここまでの4つのリターンを受け取りながら、損益が最終的に確定するのは、売却時です。
もちろん、不動産を持ち続けて家賃収入を受け取り続けるのも一つの選択肢です。
ただしこれは投資全般に共通する話で、保有中はあくまで含み損益で、損益が確定するのは売却したタイミングです。

そして不動産は、その売却タイミングを自分で選びやすい資産です。
株式の信用取引や為替FXなど他のレバレッジ商品では、価格が下がると追証やロスカットが発生し、相場が戻る前にポジションを切らされるリスクがあります。
一方で不動産は、金利(返済)を支払い続ける限り、相場が一時的に下がっても保有を続けて "上がるまで待てる" 構造です。
家賃収入が月々のキャッシュアウトを補い、元本返済が進むほど売却時の損益分岐点(黒字になる売却価格の水準)も下がっていきます。
"レバレッジを取りつつ、撤退タイミングを自分で決められる" ── これも長期形成において大きな武器です。

10年後・20年後・30年後の売却価格の目安や、保有継続と売却をどう選ぶか、など出口の詳細は別記事 ワンルーム投資の出口を一次データで描く で扱っています。

単体で見ない ── ポートフォリオの一部としての不動産

ここまでは、不動産単体で見た仕組みです。
ですが私は、不動産は単体ではなくポートフォリオの一部として組み込むべきだと考えています。

資産形成の基本は分散です。
エリア・通貨・銘柄を分けて持つことで、特定の市場が下落しても全体のダメージを抑えられます。
株・債券・現金・コモディティと並んで、実物資産としての不動産は、独自のポジションを担います。

さらにインカム商品(家賃・配当・分配金)を多く持つほど、複利が回りやすくなります。
家賃は株式配当や債券利息とは別の収入源であり、ポートフォリオ全体の安定性を高める効果が期待できます。

そして不動産にしかない特徴が、"レバレッジ" です。
インデックス積立では基本的に自己資金の範囲でしか運用できませんが、不動産ローンは自己資金の何倍ものスケールで資産を動かせます。
これは長期形成における強力な武器です。

不動産 "だけ" に賭けるのはおすすめしません。
あくまで全体の一部として、株式インデックスや現金と組み合わせて使うのが王道だと考えています。

実数値で見る30年シミュレーション(3パターン比較)

ここからは、具体的な数値で比較していきます。
仮設を明示した上で、3つのパターンを並べます。

"【モデル試算の前提】"
・京都駅近 築10年RC 1DK 30㎡(表面利回り 約4.53%)
・物件価格2,250万円・取得諸経費150万円
・ローン2,250万円・金利2.0%変動・35年元利均等
・月返済 約74,500円
・月賃料 85,000円
・月諸費用 約16,500円(管理費4,000円 + 修繕積立金4,000円 + 賃貸管理委託料4,250円 + 固都税月割4,200円)
・月キャッシュフロー -6,000円(年-72,000円)
・課税所得ベースで限界税率30%前後
・初期手元金融資産 650万円(全パターン共通)

あくまでモデル試算であり、物件・金利・賃料・税率・空室・修繕・売却タイミングにより結果は変動します。
パターン内容30年後の概算資産
A650万円を普通預金(0.3%)に寝かせる約710万円(税引前)
B650万円をインデックスファンドに一括投資(年利5%想定)約2,810万円(非課税口座)/約2,380万円(課税口座・運用益課税後)
C取得諸経費150万円を支払いワンルーム購入 + 残り500万円をインデックス一括投資約3,390〜3,590万円(売却費用・税金控除前)

C案の内訳を分解すると、次のようになります。

30年での元本返済合計:約1,820万円(残債約425万円)

30年後の物件想定売却価格:1,800〜2,000万円(築40年RC、京都駅近想定)

物件売却差引:1,800〜2,000万円 - 残債約425万円 = 約1,375〜1,575万円

売却時の仲介手数料等:概算70万〜80万円程度(譲渡益が出る場合は長期譲渡所得税が別途発生)

30年の累積キャッシュアウト:年72,000円 × 30年 = -216万円

30年の税負担軽減累計:年最大7.5万円 × 30年 = 最大+225万円(不動産所得が黒字の年は効果が縮小)

500万円のインデックス一括投資:500万円 × 1.05^30 = 約2,160万円(非課税口座前提。課税口座の場合は運用益課税後で約1,820万円程度)

"合計(モデル試算):約3,390〜3,590万円(売却費用・税金控除前)"

A・B・Cの違いは、単純な金額の優劣ではなく、投資の性質の違いです。
Aは現金そのまま、Bは現金を使った投資(インデックス)、1軸に集中しています。
それに対しCは、レバレッジ投資(ワンルーム)と現金投資(インデックス)を2軸同時に走らせています。
同じ自己資金650万円でも、Cだけが "レバレッジ" を使って並行運用できるという点が、本質的な違いです。
そして "レバレッジ" "減価償却による税負担軽減" "完済後の資産" という3要素は、現金投資単体では取りに行けない、レバレッジ投資ならではのリターンです。

"【注意点】"
・減価償却は残存耐用年数を超えると終了します。
・税率は所得・税制改正により変動します。
・空室・修繕・金利上昇・売却タイミングのリスクは本試算には織り込んでいません。
・譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合、売却益には長期譲渡所得として20.315%が課税されます。
・売却時の仲介手数料・印紙代・抵当権抹消費用も別途発生します。

また、下振れ時の想定も必須です。
簡易ですが、表を置いておきます。

下振れ時の感応度(簡易)

下振れ要因インパクト(概算)
空室1ヶ月/年年-85,000円(30年で約-255万円)
金利+1%(2%→3%)月返済 約+12,000円前後
突発修繕30万円累計-30万円(発生都度)
賃料下落 月-5,000円年-60,000円

ただし、誰でも得するわけではない ── 境界線(条件付き擁護)

ここが本記事で一番大事な部分です。
ワンルーム投資は、条件を満たす人にとっては合理的な選択肢になり得ますが、条件を満たさない人にとっては純粋な損になります。

得しやすい人の7条件

賃貸需要が続く物件を選べる(利回りだけに釣られない)

レバレッジの効果を理解し、ポートフォリオの一部として考える(不動産だけに賭けない)

変動金利を選択できる(金利上昇リスクを許容できる)

団信を生命保険の代替と理解できる

税金対策 "だけ" で選ばない

相場に合った物件を選べる

購入後も生活防衛資金を6~12ヶ月分以上残せ、空室・修繕・金利上昇時にも家計が耐えられる

この7つにチェックが多く入る方ほど、ワンルーム投資との相性は高いです。
逆にチェックが少ない方は、無理に手を出さない方が良いと私は考えています。

損する人の典型

失敗パターン具体例
高値づかみ立地・スペックに見合わない価格
立地ミス駅徒歩圏外、人口減地域、再開発予定なし
無理なローン生活費を圧迫する返済比率
税金対策のみが目的節税効果終了後に持て余す物件

営業現場では、これらに該当する物件が "買いやすい" 顔をして提案されるケースもあります。
新築・中古どちらにも売主の利益は乗っており、構造的には大差ありません。
大事なのは新築か中古かではなく、立地・スペック・価格のバランスを冷静に見極めることだと考えています。

この "境界線" を3パターンのシミュレーションと売却相談の現場で見た典型パターンで深掘りした内容は、別記事 キャッシュアウトでも得した人 / 苦しくなった人の境界線 で扱っています。

よくある "やめとけ派" の主張

ネットでよく見かける "やめとけ派" の主張(毎月赤字だから損/インデックスの方が得/流動性が低い/業者の利益が乗っていて割高/人口減で空室・賃料下落/金利上昇/節税目的のみ)は、すべて "条件次第" でフェアに答えられます。
各論点への詳しい回答は、別記事
ワンルーム投資は "やめとけ" なのか で1つずつ扱っています。

まとめ ── あなたはワンルーム投資に向いているか

ここまで読んでくださった方は、ワンルーム投資が "絶対得" でも "絶対損" でもないことを、理解いただけたと思います。
大事なのは、自分が得する側に立てるかどうかです。

先ほどの7条件を、もう一度振り返ってみてください。
Yesが4つ以上つく方は、詳細を検討する余地があります。
ただし、最終判断には物件価格・融資条件・家計余力の個別確認が必要です。
Noが多い方は、無理に手を出さず、インデックス投資など他の選択肢を優先する方が合理的だと考えられます。

一段抽象化すると、ワンルーム投資は "目的逆算" "分散の一部" "レバレッジ装置" として使う道具です。
道具である以上、使いこなせる人だけが得をします。
そして使いこなせるかどうかは、年収や年齢だけでなく、知識・スタンス・目的設計に依存します。

私の結論は "条件付き擁護" です。
条件を満たして丁寧に設計すれば、得をする可能性がありますが、誰でも得をするわけではありません。
このフェアな結論こそが、業界の両極にある "やめとけ派" と "絶対得します派" の間にある、本当の答えだと考えています。


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物件ありきではなく、目的・家計・融資条件からフェアに整理します。

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