不動産投資の出口を一次データで描く ── 売却と保有継続、30年シミュレーション

2026-05-21

不動産投資の出口は、売却と、売らずに持ち続け家賃を受け取るという2つの選択肢があります。
本記事では、国土交通省・REINS・賃料インデックスの一次データをもとに、10年後・20年後・30年後の売却と保有継続を整理します。
結論は "立地と条件が揃えば成立する" という条件付き擁護のスタンスです。

著者の立場 ── データで出口を整理する

私はかつて京都のワンルームデベロッパーでトップ営業として新築区分を売っていました。
現在は ONZA Estate 代表として、好立地の区分マンションを中心とした投資用物件の仲介と出口相談を受けています。
売る側と買う側の両方の立場を経験した私から見ても、出口を "売却か保有継続か" の二択で考える時点で、不動産の柔軟性を半分捨てていると感じます。

出口の話は、立場によって語り口が大きく変わる領域です。
新築を売る側は "将来の価格は読めないが、立地が良ければ大丈夫" と言いがちで、批判派は "築古になったら売れない" と言い切りがちです。
どちらも一面の真実ですが、どちらも数字に基づいていません。

私のスタンスは "条件付き擁護" です。
立地と物件タイプ、買い方の条件が揃えば、不動産投資の出口は成立する可能性があります。
逆に言えば、条件が揃わない物件は出口で苦労します。
その境界線をデータで引くのが、本記事の目的です。

本記事で使う一次ソースは以下の通りです。

国土交通省「不動産価格指数」(区分所有マンション、ヘドニック法による品質調整あり)

東日本不動産流通機構(東日本REINS)築年帯別成約データ(2026年4月期)

近畿圏不動産流通機構(近畿圏REINS)マンスリーレポート・季刊市況トレンドレポート(2025年)

アットホーム × 三井住友トラスト基礎研究所「マンション賃料インデックス」(2025Q3)

国税庁「譲渡所得の計算のしかた」

前提 ── 4つの仕組みは別記事に集約

出口の議論に入る前に、不動産投資の基礎構造(ローン元本返済・団信・減価償却・完済後の家賃)については、別記事 なぜ "毎月赤字" でもワンルーム投資が成立するのか で扱っています。
本記事はその前提を踏まえて、"30年後にどう着地するか" の出口側に絞って整理します。

中古マンション価格と賃料 ── 一次データで見る長期推移

出口の絵を描くために、まず一次データで市場水準を押さえ、そのうえで3パターンのシミュレーションを並べます。

国土交通省「不動産価格指数」で見る15年の推移

国土交通省が毎月公表している「不動産価格指数」は、2010年平均を100として、ヘドニック法(築年・面積・所在地などの品質要因を調整する統計手法)で算出される指数です。
区分所有マンションの全国指数は、2025年6〜8月時点で211.8〜216.8 のレンジを推移しています。
つまり、2010年比で約 "2.12〜2.17倍" です。
同じ期間、戸建住宅や住宅地(更地)の指数は1.2〜1.3倍程度にとどまっており、区分所有マンションの上昇率が突出して高いです。

あくまで全国平均の品質調整後指数です。
個別の物件価格がそのまま2倍になったわけではなく、"同じスペックの物件なら2倍前後で取引される水準にある" という読み方が正確です。

ここで押さえたいのは、区分マンションという投資対象が、過去15年で実体として強かったという事実です。

近畿圏REINSで見る足元(京都・大阪を含む)

近畿圏REINSのレポートによると、中古マンションの成約価格は次のような水準です。

近畿圏REINS 四半期データ

期間成約価格前年比
2025年7-9月期3,206万円+6.2%

近畿圏REINS 月次データ

期間成約価格前年比単価
2025年12月度3,233万円+1.0%(7ヶ月連続上昇)47.27万円/㎡(前年比+6.1%)

注目すべき点は3つあります。

1つ目は、価格・単価ともに前年比プラスで推移している点です。
2025年12月度時点で成約価格は7ヶ月連続上昇しており、足元の市況は強いです。

2つ目は、2025年1-3月期時点で、成約価格が19期連続で上昇していた点です。
同時期の成約件数も6期連続で増加しており、"売りたくても売れない" 状態ではなく、"売り物が出れば買い手がつく" 状態が継続していました。

3つ目は、成約物件の平均築年数が約26.36年という事実です。
市場で実際に売れている物件の中心は "築20年台後半" の中古です。
築古だから売れない、というのは少なくとも近畿圏のマクロデータには表れていません。

首都圏も上昇基調 ── 築年帯別データ

価格指数は品質調整済みの数字なので、"同じ物件が築年を経るとどう動くか" を直接示すものではありません。
そこで、品質調整なしの実成約データである、東日本REINSの築年帯別レポート(2026年4月期)を見ていきます。

築年帯別 成約㎡単価(首都圏、2026年4月期)

築年帯成約㎡単価
築5年以内204.7万円/㎡
築10年以内167.9万円/㎡
築15年以内155.1万円/㎡
築20年以内142.8万円/㎡
築25年以内123.5万円/㎡
築30年以内102.6万円/㎡
築30年超76.8万円/㎡

築年帯別 成約価格(首都圏、2026年4月期、データのある築年帯のみ抜粋)

築年帯成約価格
築5年以内12,610万円
築10年以内9,700万円
築20年以内8,882万円
築30年以内6,606万円
築30年超4,153万円

単価ベースで見ると、築5年→築30年超で約62%下落しています。
価格ベースでは築5年→築30年超で約67%下落です。
ただし、これは品質調整のかかっていない実成約の平均値であり、築30年超の物件は専有面積・所在地・スペックが多様で、単純比較できません。
また、築30年超でも、首都圏平均では一定の成約水準が確認できます。
ただし、これは個別物件の下限価格を保証するものではありません。

家賃側のカーブについては 家賃下落カーブの真実 で詳しく扱っています。

京都・大阪の賃料水準

アットホーム × 三井住友トラスト基礎研究所「マンション賃料インデックス」(2025Q3)によると、2009年第1四半期を100とした賃料指数は次の水準です。

京都市:139.22

大阪市:122.72

つまり、京都市の賃料は2009年比で約 "1.39倍"、大阪市は約 "1.23倍" に上昇しています。
同インデックスは品質調整がかかっており、"築年経過の影響を除いた純粋な賃料水準" を示すものです。
背景には、物価・人件費・建築費の上昇、都市部の賃貸需要など、複数の要因があると考えられます。

京都・大阪の中でも、駅距離・賃貸需要・管理状態が揃う物件では、"売却できる築古" と "賃料上昇基調" の両方を狙えるケースがあります。

30年出口シミュレーション ── 立地別A/B/Cパターン

ここまでの市場データを前提に、立地の違いで30年後の出口がどう変わるかを3パターンで並べます。
共通前提:物件価格2,500万円、借入2,500万円(フルローン)、金利2.0%、期間35年、月家賃9.0万円、管理費・修繕積立金1.2万円/月、固定資産税6万円/年、賃貸管理手数料5%、空室率5%、家賃下落率年0.5%、35年返済のPMT計算による月返済額82,790円。

項目Aパターン(強い立地)Bパターン(中間立地)Cパターン(弱い立地)
月返済額82,790円82,790円82,790円
月キャッシュフロー(初年度)▲3,400円▲5,200円▲8,500円
年キャッシュフロー(初年度)▲4.1万円▲6.2万円▲10.2万円
年間元本返済額(初年度)約49.8万円約49.8万円約49.8万円
減価償却節税額(年・所得税率30%想定)約12万円約12万円約12万円
30年累計手残り(CF + 元本返済 + 節税)約1,650万円約1,450万円約1,150万円
30年後残債約460万円約460万円約460万円
30年後売却価格想定1,900万円1,400万円900万円
売却時手取り(諸費用・税控除後)約1,300万円約880万円約400万円
30年累計トータル(保有+売却)約2,950万円約2,330万円約1,550万円
あくまでモデル試算であり、物件・金利・賃料・税率・空室・修繕により大きく変動します。
個別物件の数値を保証するものではありません。

A/B/Cの差は、結局のところ "立地と購入価格" で決まります。
立地が強いほど家賃下落カーブが緩やかで、30年後の売却価格も下げ止まり水準が高くなります。

出口の選択肢 ── 売却・保有継続、どちらも選べる

不動産投資の出口を考えるうえで、まず押さえたい構造的な強みは、撤退タイミングを自分で決められるという点です。

株式の信用取引や為替FXは、相場が逆行すると追証(追加証拠金)やロスカット(強制決済)が発動し、自分の意思に関係なく撤退させられます。
レバレッジを取った時点で、撤退タイミングは相場が決めることになります。

不動産は違います。
約定どおり返済し、管理費・税金なども滞納していない限り、日々の価格変動だけで強制決済される仕組みではありません。
相場が下がっている時期は持ち続け、相場と家賃が回復してから売る、という判断ができます。
つまり、レバレッジを取りつつ、撤退タイミングを自分で決められるのが、不動産の構造的な優位性です。

そのうえで、出口は "売却" と "保有継続" の両方を選べます。

売却を選ぶ場合、国税庁の規定では、不動産の譲渡所得は所有期間によって税率が変わります。

譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年以下(短期譲渡所得):所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税で合計 "39.63%"

譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超(長期譲渡所得):所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税で合計 "20.315%"

取得日と売却予定日をもとに、譲渡した年の1月1日時点で5年を超えているかを必ず確認する必要があります。
結果として、取得からおおむね5年超〜6年程度を見ておくケースが多いです。
売却時の実費としては、売買価格400万円超の場合は、仲介手数料の上限が売買価格×3% + 6万円 + 消費税です。
これに加えて抵当権抹消費用、印紙税などがかかります。

保有を続ける場合、ローン完済後は家賃収入から固定資産税・管理費・修繕積立金・賃貸管理手数料などを差し引いた分が、毎月の手残りキャッシュフローとして積み上がります。
物価上昇局面では、募集賃料や新規契約の賃料に上昇圧力がかかることがあります。
ただし、既存入居者の賃料改定は合意や法的な手続きが前提になるため、自動的に家賃が上がるわけではありません。

出口で損する典型パターン

ここまでは出口が成立しやすいケースを中心に見てきました。
逆に、出口で苦労するパターンも整理しておきます。

一つ目は、立地が弱い物件を買って、出口で買い手がつかないケースです。
供給が多い・人口減少エリア・賃貸需要が薄い場所では、築年経過とともに下げ止まり水準が低くなり、売却時に残債を下回るリスクがあります。

二つ目は、サブリースや家賃保証を前提に組んだ収支が、契約改定で崩れるケースです。
サブリースは賃料減額請求リスク・契約解除の難しさなどがあり、過去にトラブル事例が多く報告されています。
詳しくは別記事
家賃保証30年の罠 で扱っています。

出口で得する人の条件

出口で得をする人は、以下の条件を備えています。

立地を最優先で見られる(駅距離・賃貸需要・人口動態)

短期売却を前提にしない(譲渡した年の1月1日時点で5年超を確認する)

毎月収支だけで判断せず、元本返済・完済後を含めて見られる

空室・修繕・賃料下落の前提を保守的に見込める

売却と保有継続の両方をシミュレーションで試算できる

利回りだけを見ていると、出口の絵が描けません。
"30年後にどのカーブに乗るか" を、価格側・家賃側の両方で押さえることが、立地選びの本質です。

まとめ ── あなたの物件は10年後・20年後・30年後にどう動くか

本記事の要点を、もう一度数字で振り返ります。

中古マンション価格は全国指数で2010年比約2.12〜2.17倍(国土交通省・不動産価格指数)

築年経過で単価は下がるが、首都圏REINS で築30年超でも約76.8万円/㎡・約4,153万円の成約水準が確認できる

近畿圏は2025年12月度で成約価格3,233万円・7ヶ月連続上昇、平均築年数26.36年で "築古でも売れている" 市場

京都市の賃料は2009年比約1.39倍、大阪市は約1.23倍

出口は売却・保有継続のどちらも選べ、長期譲渡所得税は譲渡した年の1月1日時点で5年超なら20.315%

株式・為替のような日々の価格変動による強制決済はなく、撤退タイミングを自分で決められる

ここで紹介した数字はすべてマクロの平均値や指数であり、個別物件の価格を保証するものではありません。
あくまでモデル試算であり、物件・金利・賃料・税率・空室・修繕により大きく変動します。
立地を大きく誤らず、購入価格・借入条件・管理状態も確認できていれば、10年後・20年後・30年後のシナリオを描きやすくなります。

出口の絵が描けない投資は、入口で止めるべきです。
逆に言えば、出口の絵が描ければ、不動産投資は中長期の資産形成手段として成立する可能性があります。


個別の物件・属性・条件を踏まえた出口シナリオ(売却タイミング、保有継続時のキャッシュフロー、譲渡所得税の試算など)を整理したい方は、LINEからお気軽にお問い合わせください。

不動産投資に関するご相談は、LINEからお気軽にどうぞ。毎日7:00〜21:00、無料で対応しています。