中古マンションのリセールバリューと賃貸需要 ── 駅徒歩で見る立地評価

2026-05-25

「駅近マンションは資産価値が落ちにくい」── 不動産投資の世界で繰り返し言われてきた言葉です。
では、なぜ駅徒歩がリセールバリュー(再販価値)に効くのでしょうか。

答えは、駅徒歩が "賃貸需要を支える主要因の一つ" だからです。
投資用物件の買い手は投資家が多く、家賃を利回りで評価して価格をつけることも多いです。
つまり、賃貸需要が太いエリアほど家賃が下がりにくく、その家賃水準が売却価格を支える構造になりやすい、ということです。

本記事では、駅徒歩がリセールにどう効いているのかを、東京カンテイのデータを軸に整理していきます。

売却相談の現場で見てきた駅徒歩の効き方

私はもともと京都のワンルームマンションデベロッパーで営業をしていました。
現在は ONZA Estate の代表として、好立地の区分マンションを中心とした投資用物件の仲介を行っています。

仲介の現場では、購入相談と同じくらい売却相談を受けます。
そこでよく耳にするのが「査定がこれだけしか出ないのか」という声です。

査定が伸びない物件には、ある程度の共通項があります。
駅徒歩、管理状態、そして物件が建っているエリアの賃貸需要全体です。
逆に、駅近で管理が良く、賃貸需要が太いエリアの物件は、築年数が進んでも査定が底堅いことが多いです。

駅徒歩は賃貸需要を支える大きな要因の一つ、と整理した上でデータを見ていくのが、現場感覚としてはフェアだと思います。

なぜ立地が売却価格を支えるのか ── 投資家評価のメカニズム

まず、投資用物件の売却ロジックを整理しておきます。

投資用として見られやすい中古マンションは、買い手に投資家が多いという特徴があります。
実需(自分で住む人)も一部いますが、投資家比率の高いマーケットであることは押さえておきたいところです。

そして投資家が大きな判断材料にすることが多いのが "利回り" です。
具体的には、年間家賃 ÷ 物件価格で計算される表面利回り、そこから経費を引いた実質利回りなどを見ます。

結果として、物件評価額は "想定家賃 ÷ 期待利回り" に近い形で組み立てられることも多いです。
仮に同じエリアの期待利回りが 5% だとすると、年間家賃 60 万円の物件は概算で 1,200 万円、年間家賃 72 万円の物件は 1,440 万円、というイメージになります。

あくまで簡略化したモデルです。
実際には築年数・管理状態・建物構造・売却タイミング・買い手属性で大きく振れます。

ここから言えるのは、家賃水準が売却価格を支える構造になりやすい、ということです。
賃貸需要が太い立地は、家賃が下がりにくいので、投資家評価で組み立てられる価格も維持されやすいです。
逆に賃貸需要が薄い立地は、家賃が下がりやすい → 投資家評価も弱くなりやすい → 売却価格にも影響が出やすい、という二重の弱さが出ることがあります。

この「家賃水準が売却価格に影響しやすい」という構造については、不動産投資の収支構造を解説したフラッグシップ記事でも触れています。

マクロデータで見るリセール ── 首都圏・近畿圏の築10年

まずは全体感を、東京カンテイの公表データで押さえます。

首都圏(築10年・2024年改定版)

東京カンテイが2025年10月30日に公開した「中古マンションのリセールバリュー 2024【改定版】」によると、首都圏の築10年中古マンションのリセールバリュー平均は "148.8%"(404駅平均)です。
つまり、新築時に比べて築10年で価格が平均1.5倍近くになっている、ということになります。

最高駅は東京メトロ千代田線「新御茶ノ水」で "336.0%"。
新築時の3倍以上の水準で中古流通している計算です。

近畿圏(築10年・2024年改定版)

同じく東京カンテイの近畿圏データでは、築10年中古マンションのリセールバリュー平均は "138.6%"(194駅平均)。
最高駅は JR大阪環状線「大阪」で "258.1%" です。

東京カンテイの近畿圏分析では「大阪市中心部は賃料水準が相対的に高く、表面利回りで京都市中心部の駅を総じて上回る」「投資対象としての優位性が中古流通価格の上昇度合いに現れている」と指摘されています。
これは、まさに先ほど整理した「賃料水準が売却価格を支える構造」を裏付けるものです。

数字は築10年の平均値です。
個別物件は立地・管理・売却タイミング・市況で大きく振れますので、平均値はあくまで全体感の参考と捉えてください。

ここ数年は首都圏・近畿圏ともにマンション価格の上昇を背景に、リセールバリューの数字自体が近年でも高い水準にあります。
この水準がそのまま続くと決め打ちする必要はありませんが、賃貸需要が太いエリアほど価格が支えられやすい、という見方は今後も大事だと考えています。

駅徒歩別のリセールバリュー ── 段階的に下がる構造

ここから本題の駅徒歩データに入っていきます。

※次の徒歩時間別データは東京カンテイの過年度集計で、上記の2024年改定版とは調査年・対象駅・集計条件が異なります。
水準ではなく、徒歩時間による傾向を見るための参考値として捉えてください。

徒歩時間別リセールバリュー(首都圏・東京カンテイ過年度集計)

駅徒歩リセールバリュー前段からの落差
5分以内101.0%──
6〜10分94.5%-6.5pt
11〜15分87.5%-7.0pt
16〜20分84.9%-2.6pt
21分以上80.9%-4.0pt

出典:東京カンテイ、築10年中古マンションのリセールバリューに関する過年度集計(対象年・対象駅数は出典確認後に明記)。

このデータから読み取れることは、シンプルに言うと "駅徒歩が長くなるほど段階的に下がる" ということです。

徒歩5分以内はリセールバリュー 100% 超のプレミアム圏

徒歩6〜10分も 94.5% で比較的強い水準

徒歩11〜15分で 87.5%

徒歩16〜20分、21分以上はさらに一段ずつ下がる

国土交通省データで見る傾向(参考)

国土交通省の不動産情報ライブラリから編集部で集計した参考値でも、駅から遠ざかるほど平米単価が段階的に下がる傾向が同様に見られます。
対象期間・エリア・専有面積帯・築年数帯・サンプル数などの集計条件によって振れ幅は変わるため、ここでは数値の細部ではなく傾向の方向感として参照してください。

指標が異なるので東京カンテイのデータと単純比較はできませんが、こちらでも "駅から遠ざかるほど段階的に下がる" という傾向は共通しています。

賃貸需要を構成する "他の要素"

駅徒歩は賃貸需要の主要因の一つではありますが、すべてではありません。
賃貸需要を構成する要素には、たとえば次のようなものがあります。

商業集積(スーパー、コンビニ、飲食街、ドラッグストアなど日常生活の利便性)

職住近接(主要なオフィス街、大学、病院などへのアクセス)

エリアブランド(賃貸検索で名前で指名されるエリアかどうか)

再開発の予定(駅前再整備、新線開通など)

人口動態(単身世帯の流入・流出)

教育機関や生活インフラの有無

アットホームが2024年10月2日に発表した、加盟店464店を対象にした調査(複数回答)では、資産性の高いマンションを見極めるポイントとして、周辺環境編で次のような結果が出ています。

1位「最寄り駅との距離」72.8%

2位「周辺環境の充実性(スーパー・コンビニ等)」51.5%

3位「エリアの人気」50.6%

駅徒歩が大きな要因であることは確かです。
一方で、周辺環境の充実性やエリアの人気も半数以上のプロが指摘しています。
つまり、駅から少し離れていても "賃貸需要が太いエリア" は実在する、ということです。

京都を例にすると、駅徒歩は中程度でも、大学や観光地、商業集積に近いことで単身世帯需要が安定しているエリアがあります。
こうしたエリアは駅徒歩のスコアだけで切り捨てると見落としやすい部分です。

個別判断のときは、駅徒歩データを軸にしつつ、これらの要素も加味して見るのが現実的だと思います。

駅徒歩以外のリセール要因 ── 管理と築年数

駅徒歩だけがリセールを決めるわけではありません。
査定の現場で必ず見る要素として、管理状態と築年数があります。

管理状態と修繕積立金

先ほどのアットホーム調査の条件・設備編で、1位は「管理状況」"67.0%" でした。
区分マンションは、管理組合の健全性で長期の価値の落ち方が変わってきます。

見るべきポイントはいくつかあります。

修繕積立金が将来の大規模修繕に対して十分積み上がっているか

長期修繕計画が現実的な内容で更新されているか

管理組合の総会・理事会が機能しているか

共用部の清掃・設備保全が行き届いているか

滞納者の比率が高すぎないか

同じ駅徒歩、同じ築年数でも、管理の良し悪しで査定が数百万円単位で変わることは珍しくありません。
「駅徒歩○分」だけで物件評価を決めてしまうと、ここを見落とします。

築年数の影響

駅近マンションは、築年数の影響が相対的に小さい傾向があります。
賃貸需要が太いので、築20年超でも家賃の底が固く、結果として投資家評価額も底堅いです。

逆に、賃貸需要が薄いエリアの物件は、築年が進むにつれて家賃下落が加速し、売却価格もより大きく下がりやすい傾向があります。
家賃の年経過変化については「
家賃下落カーブの真実」で詳しく整理しています。

投資判断への落とし込み

ここまでの内容を、実際の物件検討にどう活かすかを整理します。

駅徒歩の段階別の見方

駅徒歩帯位置づけ判断の目安
5分以内プレミアム圏リセール・賃貸需要ともに強い帯。
価格も高く出やすい
6〜10分好立地の目安多くの投資判断で "好立地" と呼べる範囲
11〜15分条件次第賃貸需要・周辺環境次第で十分成立する範囲
15分超慎重に判断データ上もう一段低くなる帯。
他要素でより慎重に見る

大事なのは、徒歩15分超でも一律で否定しないことです。
商業集積や職住近接、エリアブランドなどで賃貸需要が太いケースはありますし、そうした物件は適正価格で買えていれば十分成立します。

ただし、駅徒歩が長くなるほど目利きの難易度が上がるのは事実です。
賃貸需要全体を読む力に自信がない段階では、駅近を中心に検討するのが堅実だと思います。

投資判断のチェックリスト

検討中の物件の駅徒歩が何分か正確に把握できている

駅徒歩だけでなく、商業集積・職住近接・エリアブランドなど賃貸需要を構成する他要素も見ている

投資家視点の利回り評価額(想定家賃 ÷ 期待利回り)まで意識できている

管理状態・修繕積立金・長期修繕計画の健全性を確認できている

売却と保有のパターンをそれぞれ想定できている

最後のチェック項目について少し補足します。

不動産は株式や為替のように短期の値動き益を主目的にしにくく、流動性も低いです。
その代わり、市況が一時的に下がっても保有を続けて待てる、というのが構造上のメリットです。

だからこそ、「いつ売るか」を購入時点で決め打ちするのではなく、"どうなったら売るか、どうなったら保有し続けるか" のパターンをそれぞれ想定しておくことが、リセールを意識した投資判断では大事になります。
出口の考え方については、売却データをベースに整理した
出口戦略の記事で詳しく解説しています。

まとめ ── リセールを支えるのは賃貸需要、駅徒歩はその主要因

最後に要点を整理します。

中古マンションのリセールバリューを支えているのは、根本的には "賃貸需要" です。
投資用物件は買い手に投資家が多く、家賃を利回りで評価して価格をつけることも多いため、家賃水準が売却価格を支える構造になりやすいです。

駅徒歩は、その賃貸需要を構成する要素の中で "比較的データで見やすい主要因" です。
東京カンテイの徒歩時間別リセールバリュー(過年度集計)は、徒歩5分以内 101.0% → 徒歩21分以上 80.9% と段階的に下がっており、駅徒歩が長くなるほどリセールが弱くなる傾向は、データで明確に出ています。

ただし、商業集積、職住近接、エリアブランドなど、駅徒歩以外の要素でも賃貸需要は変わります。
だから、駅徒歩データを軸にしつつ、他の要素も加味して総合判断するのが現実的なやり方です。

「駅近だから安全」でも「駅から遠いから危険」でもありません。
"賃貸需要全体で評価する視点" が、リセールを意識した不動産投資の出発点だと考えています。

首都圏と近畿圏で平均リセールバリューが 148.8% / 138.6% という高水準にあるのは、ここ数年のマンション価格上昇という追い風があってこそです。
市況は変わりますが、賃貸需要が太い立地ほど価格が支えられやすいという見方は、これからも不動産投資の大事な土台になりやすいと思います。


検討中の物件の賃貸需要、駅徒歩、管理状態のバランスを個別にチェックされたい方は、LINEからお気軽にお問い合わせください。
個別の物件・属性・条件に合わせて、リセールを意識した立地評価の見方をお伝えします。

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