売却時の譲渡税、結局いくら取られるのか

2026-06-02

投資用物件の売却を考えると、必ず気になるのが "税金でいくら持っていかれるのか" です。

ここで押さえておきたいポイントは2つあります。
1つは、税率が所有期間で2倍近く変わること。
もう一つは、課税されるのは "売却価格" ではなく "利益" だということです。

本記事では、譲渡税がどう計算されるのかを正確に整理したうえで、引ける費用、申告と納税のタイミング、売却前に揃えたい書類まで、関西エリアのモデル試算とあわせてお伝えします。

なお、私は税理士ではありません。
仕組みの整理はしますが、個別の税額計算や申告は、必ず税理士に確認することをおすすめします。

課税されるのは利益だけ

最初に、いちばん誤解されやすい点から整理します。

譲渡税がかかるのは、売却価格の全部ではありません。
売って出た "利益"(譲渡所得)にだけ課税されます。

計算式はこうです。

譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

取得費は、その物件を買ったときの代金や手数料など。
譲渡費用は、売るためにかかった費用で、仲介手数料・印紙税・取り壊し費用などが含まれます。
通常の管理費・修繕費・固定資産税は、譲渡費用には含まれません。
ただし、資本的支出にあたる改良費などは取得費に関係する場合があります。

たとえば3,000万円で売れても、取得費と譲渡費用を引いた利益が500万円なら、課税対象はその500万円です。
"売却額の4割" ではなく "利益の2〜4割" が、税額の感覚に近いです。

取得費・譲渡費用に入るもの/入りにくいもの

実務上、どの費用が引けるかは見落としやすいので、代表的なものを整理しておきます。

取得費に入りやすいもの

購入時の物件代金(建物部分は減価償却後の金額)

購入時の仲介手数料

購入時の登録免許税・不動産取得税・印紙税

司法書士報酬など登記関係費用

取得後に行った資本的支出(建物の価値や耐用年数を高める改良費)

譲渡費用に入りやすいもの

売却時の仲介手数料

売却時の印紙税

売却のための取り壊し費用や測量費

借家人に立ち退いてもらうために支払った立退料

入りにくいもの

保有中の管理費・修繕積立金

保有中の固定資産税・都市計画税

通常の修繕費(原状回復レベルのもの)

保有中のローン利息(事業用以外)

境界線がグレーな費目は、税理士に判断を仰ぐのが安全です。

税率は所有期間で大きく変わる

譲渡所得の税率は、その物件を何年持っていたかで2区分に分かれます。

区分所有期間税率
長期譲渡所得譲渡した年の1月1日時点で5年超20.315%
短期譲渡所得譲渡した年の1月1日時点で5年以下39.63%

長期の20.315%は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計です。
短期の39.63%は、所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%の合計です。
復興特別所得税は2037年分まで上乗せされます。

ここで注意したいのが、5年の判定基準です。
所有期間は "売った年の1月1日時点" で数えます。
実際に保有していた日数が5年を超えていても、売った年の1月1日時点で5年以下なら短期扱いになります。
感覚的には、長期になる境目は実日数より1年ほど遅れて来る、と思っておくと安全です。

取得費は思ったより小さくなる

「買った値段で売れば利益ゼロ、税金もゼロ」と考えがちですが、そうはならないことが多いです。
理由は、建物部分の取得費が減価償却で目減りするからです。

取得費のうち建物部分は、保有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
つまり、年を追うごとに帳簿上の取得費(簿価)は下がっていきます。
買った値段で売っても、簿価が下がっている分だけ利益が出て、そこに課税される ── これが見落とされやすい点です。

減価償却の仕組みそのものは 減価償却で給与所得を圧縮する仕組み で詳しく扱っているので、あわせて読んでみてください。

もう一つ、決定的に大事なのが書類の保管です。
取得費を証明できない場合、"概算取得費" として売却価格の5%で計算せざるを得ないことがあります。
3,000万円で売るなら、取得費はわずか150万円とみなされ、残りのほぼ全額が利益として課税されます。
契約書がなくても、通帳の振込履歴・ローン契約資料・登記関係書類など、当時の客観資料で取得費を合理的に証明できる可能性はあります。
とはいえ、購入時の契約書や領収書は、売るその日まで必ず保管しておいてください。

モデル試算で見る

数字で見たほうがイメージしやすいので、関西エリアを想定したモデル試算を置きます。

以下はあくまでモデル試算です。
取得費・譲渡費用・減価償却・税率は物件や条件で変わるため、実際の税額は個別に確認してください。

試算例:中古の投資用物件を想定

購入総額:2,000万円(うち建物1,000万円)

モデル上、建物部分の減価償却累計を約200万円と置き、取得費は約1,800万円とする

売却価格:2,200万円

譲渡費用(仲介手数料・印紙税など):80万円

この条件だと、譲渡所得はこう出ます。

譲渡所得 = 2,200万円 −(1,800万円 + 80万円)= 320万円

保有10年なので長期譲渡所得です。
税額は 320万円 × 20.315% =
約65万円 となります。

ここで、もし取得費を証明できる書類がなかったらどうなるか。
概算取得費は 2,200万円 × 5% = 110万円。
譲渡所得は 2,200万円 −(110万円 + 80万円)= 2,010万円となり、税額は桁が変わってしまいます。
書類1つで、これだけ差が出ます。

都市部の中古マンションでは、近年、価格が上がったエリアもあります。
売却益が出る可能性がある局面ほど、"いくら課税されるか" の理解が効いてきます。

申告と納税のタイミング

譲渡税は、売却した瞬間に天引きされるものではありません。
売った翌年に、自分で申告して納める流れになります。

売却した年の翌年2月16日〜3月15日に、確定申告で譲渡所得を申告する

所得税・復興特別所得税は、原則として申告期限までに納付する

住民税は、申告内容に基づき、翌年6月以降に通知が届いて納める

つまり、年末に売っても、税金を納めるのは翌年の春以降です。
売却代金から残債を返した後、税金分を別に確保しておかないと、申告のときに資金繰りが苦しくなります。
"売却益の2〜4割は、翌年の納税まで動かさない" と決めておくのが安全です。

売却前に揃えておきたい書類

税額の計算と申告に備えて、売却の話が出てきたら早めに集めておきたい書類です。

購入時の売買契約書・重要事項説明書

購入時の仲介手数料・登記費用・不動産取得税などの領収書

ローン契約書、返済予定表、残債の証明

建物の構造・築年数・耐用年数がわかる資料

過去に行った修繕やリフォームの請求書・領収書

賃貸契約書(入居中の場合)

直近の固定資産税納税通知書

相続で取得した物件の場合は、被相続人の購入時資料と、相続税の申告書一式も必要になります。

相続で取得した物件の特例

相続で引き継いだ物件を売る場合は、知っておきたい特例があります。

1つは "取得費加算の特例" です。
相続税を納めた人が、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始から3年10ヶ月以内)に売却する場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できることがあります。
取得費が増える分、譲渡所得が減り、税額が軽くなります。

もう一つ、所有期間の数え方です。
相続した物件は、被相続人(亡くなった方)が買った時期と取得費を引き継ぎます。
自分が相続してから5年経っていなくても、被相続人の保有期間と通算して長期になることが多いです。

相続まわりの全体像は 相続対策としての不動産投資 で整理しています。

なお、よく混同されるのが "3,000万円特別控除" です。
通常の投資用物件には、マイホーム売却時の3,000万円特別控除は使えません。
ただし、相続した空き家や、過去に自宅として使っていた物件には、別条件の特例が関係することがあります。
投資用物件の売却で一律に3,000万円が引けると考えていると、税額の見込みが大きく狂うので注意してください。

まとめ

売却時の譲渡税について、要点を整理します。

課税されるのは売却価格ではなく "利益" です。
譲渡所得は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を引いて計算します

税率は長期20.315%・短期39.63%です。
5年の判定は "売った年の1月1日" 時点で数えます

建物の取得費は減価償却で目減りします。
買った値段で売っても利益が出やすい構造です

取得費を証明できないと概算取得費5%で計算せざるを得ないことがあります。
購入時の書類は必ず保管してください

相続物件には取得費加算の特例があります。
ただし3,000万円控除はマイホーム特例で、通常の投資用物件には使えません

申告と納税は売却の翌年です。
売却益の一部は翌年の納税まで動かさないでおくのが安全です

税額は手取りを見るときの一要素です。
売却は相場・残債・税の3つを並べて総合的に判断します

税額の出方を正しく理解しておくと、売却の話が出たときに慌てずに済みます。
そのうえで、最終的な税額計算と申告は税理士に確認するのが安全です。


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