売りにくい物件の共通点 ── 元トップ営業が見てきた、買う前に見抜く5つのポイント

2026-05-26

投資用区分マンションの売却相談を受けていると、査定が伸びにくい物件・売却が長引く物件には、ある程度の共通の構造があると感じます。
本記事では、私が現場で見てきた "売りにくい物件" の共通点を5つに整理します。
"絶対に避けるべき" と断罪したいわけではなく、購入検討中の方が買う前に見抜くためのチェック観点としてまとめたものです。

結論を先に書くと、これから紹介する5つを物件選定の時点でチェックできていれば、出口で苦しむリスクは抑えやすくなると考えています。

著者の立場 ── 売却相談の現場で見てきた共通点

私はもともと京都のワンルームマンションデベロッパーで営業をしており、現在は ONZA Estate の代表として、好立地の区分マンションを中心とした投資用物件の仲介をしています。
仲介業に移ってからは、他社で購入された物件の売却相談を多く受けてきました。

その中で気づいたのは、"査定が伸びにくい"・"売却が長引く" 物件には、共通する構造的な要因が繰り返し出てくる、ということです。
もちろん市況や金利環境による影響もありますが、それを除いても、物件側の条件で説明できる部分が大きいと感じます。

構造的に売りにくくなる物件があるのは事実で、買う前にその構造を理解しておくだけで、購入判断の質は大きく変わります。

投資用物件売却の特徴

話を進める前に、投資用物件特有の売却メカニズムを整理しておきます。

不動産は流動性が低い商品です。
株式やFXのように、売り注文を出せば短時間で取引が成立しやすい商品ではなく、買い手が現れるまで売れません。
急いで売ろうとすれば、値下げを迫られやすい構造です。

投資用物件は買い手が "投資家中心" になります。
重要なのは、投資家が物件を評価するときに大きな判断材料にすることが多いのが "利回り" だという点です。
家賃 ÷ 物件価格で計算される表面利回りを起点に、「想定家賃 ÷ 期待利回り」で逆算した価格が買付の目線になることも多くあります。
結果として、家賃水準が下がりやすい物件は、売却時の評価額も下がりやすい二重構造になりがちです。

逆に言えば、賃貸需要が太い好立地は "家賃が下がりにくい × 投資家評価額も維持されやすい" の二重で強い、ということになります。

以上を踏まえて、売りにくい物件の共通点を5つ見ていきます。

共通点① 管理が崩れている

マンションでは、専有部分を所有していても、建物全体の管理は管理組合の運営に依存します。
つまり、管理組合の健全性で長期の価値の落ち方が大きく変わる商品です。

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(2024年6月公表)によると、修繕積立金が "不足している" と回答した管理組合は 36.6% にのぼります。
調査回答ベースでは、およそ3分の1強の管理組合が、計画的な修繕に必要な積立金に不足感を持っているという結果です。

修繕積立金不足、長期修繕計画が整備されていない、滞納率が高い ── こうした物件は、買い手側の指値(値下げ要求)が厳しくなる傾向があります。
査定の現場でも、まず修繕積立金残高と滞納状況、長期修繕計画の有無は必ず確認する項目です。

投資家は、重要事項調査報告書や長期修繕計画、管理状況の資料を見て判断することが多いです。
管理が弱ければ、家賃そのものよりも先に査定額に反映されやすくなります。

管理は購入時に重要事項調査報告書で確認できる項目です。
"ぱっと見の物件の綺麗さ" よりも、書類で出てくる数字を冷静に読むほうが、長期の出口リスクを見抜く精度は高くなります。

共通点② 賃貸需要が薄い立地

2つ目は、賃貸需要が薄い立地です。

賃貸需要が薄いエリアは、空室期間が長くなりやすく、入居者を埋めるために家賃を下げざるを得ない場面が増えやすいです。
そして前述の通り、投資用物件は家賃水準が査定額に直結しやすい商品です。
家賃が下がりやすい → 投資家評価も下がりやすい → 売却価格にも影響しやすい、という連鎖が起きることがあります。

よくあるのは、駅から遠い、人口減エリア、競合過多エリアといったパターンです。
ただし "駅から遠い=必ず売りにくい" と単純化するのは危険で、商業集積、職住近接、大学・病院・大企業などの賃貸需要の "源" がある立地は、駅徒歩だけでは測れない強さを持つこともあります。

買う前のチェックとしては、駅徒歩・周辺の商業集積・職住近接・人口動態など、複数の観点で賃貸需要を評価することが大事です。
賃貸需要が太い好立地は、家賃面でも売却面でも二重に強い、というのが現場の実感です。
賃貸需要とリセールの関係は、首都圏・関西の公表データを使って別記事
リセールバリューと駅徒歩で詳しく整理しています。

共通点③ 再建築不可・既存不適格

3つ目は、再建築不可・既存不適格の物件です。

再建築不可や、現行法では同規模の建物を建てにくい既存不適格の物件は、金融機関や買い手によって評価が分かれやすく、売却時の買い手が限られることがあります。
金融機関の融資評価が厳しくなりやすく、現金購入の投資家などに買い手が限られることがあるためです。

さらに、建て替え時の選択肢が限られるため、買い手から将来価値を厳しめに見られることがあります。
区分マンションの場合、自分一人の判断で建て替えできないので、この影響はじわじわ効いてきます。

これらは購入時の重要事項説明で必ず確認できる項目です。
価格が周辺相場より大きく安い物件は、こうした事情が織り込まれていることもあるので、"なぜこの価格なのか" を冷静に紐解く必要があります。

共通点④ オーバーローン状態

4つ目は、購入時点で実勢価値以上のローンを組んでしまうパターンです。

適正価格よりも高い価格で購入した物件は、購入直後から売却価格がローン残債を下回りやすい構造になります。
いわゆるオーバーローン状態です。
この状態で売ろうとすると、不足分を自己資金で埋める必要が出てきます。

結果として "売れない" のではなく、"売れる価格では残債が返せない" 状態に陥ります。
任意売却・自己資金持ち出しが視野に入り、心理的にも財務的にも売却を見送るケースが少なくありません。

状況売却価格ローン残債結果
健全な購入残債を上回る売却で完済可能通常の売却が成立しやすい
オーバーローン残債を下回る不足分は自己資金売却に踏み切りにくい

これを避けるには、購入時に物件が適正価格かどうかを冷静に判断することが何より大事です。
同じ立地・スペックの中古流通価格と比較して、価格が著しく高い場合は、その差分の説明を求めるべきです。
このあたりは別記事
月のキャッシュフローがマイナスでも不動産投資が成立する仕組み の "得する人/損する人の境界線" にも通じる論点です。

共通点⑤ 家賃保証契約付き

5つ目は、家賃保証(サブリース)契約付きの物件です。

サブリースは、サブリース会社が物件を一括借り上げし、オーナーに毎月一定額を支払う仕組みで、入口の説明では "家賃保証=安心" として提案されることが多い契約形態です。
ただし、出口の場面では一転して "売りにくさの要因" になりやすい構造を持っています。

まず、サブリース契約は借地借家法上、サブリース会社(借主)の権利が強く保護されており、オーナー側からの一方的な解除が難しい契約です。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律では、2020年12月15日にサブリース業者への規制が施行され、2021年6月15日に全面施行されました。
ただし、契約後にオーナー側から解除しにくい構造そのものがなくなったわけではありません。

そのため、家賃保証付きのまま売却するケースが多くなります。
買い手から見ると、次の3つが重なる三重のディスカウント要因になりがちです。

保証賃料が市場家賃より低く設定されていることが多い

自分のタイミングで解約しにくい

結果として、本来の市場家賃で運用できない

投資家は利回りで判断することが多いので、保証賃料ベースで利回りを計算すると、市場家賃ベースの査定よりも価格が下がりやすくなります。
つまり、入口で受け取った "保証" の安心感が、出口で売りにくさに置き換わる構造です。

家賃保証の構造的な問題は、別記事 家賃保証30年の罠 で詳しく整理しています。

5つの共通点まとめ

ここまでの5つを整理しておきます。

共通点売りにくさの理由購入時の確認方法
①管理状態に不安がある修繕積立金不足・滞納が価格交渉材料になりやすい重要事項調査報告書・長期修繕計画
②賃貸需要が薄い家賃下落が投資家評価にも反映されやすい駅徒歩・商業集積・人口動態
③再建築不可・既存不適格融資評価が分かれ買い手が限定されやすい営業担当への確認・重要事項説明書
④オーバーローン売却価格がローン残債を下回り売却に踏み切れない中古流通相場との比較
⑤家賃保証契約付き保証賃料ベース査定+解約困難で三重ディスカウント賃貸借契約書・売買契約書・重要事項説明

どれも、購入時の書類確認・現地確認・賃貸需要分析で事前にチェックできる項目です。

買う前のチェックリスト

投資用物件を購入検討中の方が、自分で事前に確認できる観点を5つにまとめます。

重要事項調査報告書で、修繕積立金残高・滞納状況・長期修繕計画を確認

駅徒歩・商業集積・職住近接など複数の観点で、賃貸需要の強さを評価

営業担当から、再建築不可・既存不適格に該当しないか確認

同じ立地・スペックの中古流通価格と比較し、販売経費を含む価格になっていないか冷静に判断

家賃保証(サブリース)契約の有無と、付いている場合の解約条件・保証賃料の改定条件を確認

上記5つを事前にクリアできる物件は、本記事で挙げた "売りにくい" 共通点に該当しにくくなります。
逆に1つでも該当する場合は、その分のディスカウントを織り込んだ価格になっているかを確認する視点が必要です。

"安い物件" を見るときの注意

最後に、現場でよくある誤解について触れておきます。

相場より大幅に安い物件には、安いだけの理由が織り込まれていることがほとんどです。
本記事で整理した5つの共通点 ── 管理状態に不安がある・賃貸需要が薄い・再建築不可/既存不適格・オーバーローン・家賃保証付き ── のどれかが原因で、買い手側がディスカウントを求めた結果として安くなっているケースは少なくありません。

これらが事前に見抜けたうえで、"自分はその出口リスクを引き受ける代わりに安く買う" という判断をするなら、それはひとつの戦略です。
ただし、構造を理解せずに "安いから良い物件" と判断してしまうと、入口の安さが出口の苦しさに置き換わるリスクがあります。

安く買うリターンと、出口リスクを天秤にかける視点が大事です。

まとめ ── 出口で困らないために、入口で見抜く

売りにくい物件には、共通する構造があります。
本記事で整理した5つは、いずれも購入時の重要事項説明・現地確認・賃貸需要分析でチェックできる項目です。

不動産は、値動きで短期に資産価値が増加する商品ではなく、すぐに売却できる商品でもありません。
家賃インカム+元本返済の積み上げで時間を味方につけるのが本領であり、市況が一時的に下がっても保有を続けて待てるのが構造上の強みです。
だからこそ、"どうなったら売るか"・"どうなったら保有し続けるか" のパターンをそれぞれ想定しておくことが大事で、その想定を成立させるには、そもそも "売りにくい構造" を持たない物件を選ぶことが土台になります。

だからこそ、入口で売りにくい構造を見抜くことが大事です。
本記事の5つの共通点は、そのための判断材料として使っていただければと考えています。


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