表面利回りの先 ── CCRとIRRで自己資金効率と時間まで見る
2026-06-18
物件広告に並ぶ表面利回り。
経費まで引いた実質利回り。
ここまで見れば、物件の収益力はだいぶ正確につかめます。
ただ、実質利回りまで見ても、まだ抜けている視点が二つあります。
一つは、自分が実際に入れた自己資金が、どれだけ効率よく働いているか。
もう一つは、お金の"時間"を考えた、保有から出口までの総合的な利回りです。
それを見るのが、CCR(自己資金利回り)とIRR(内部収益率)という二つの指標です。
この記事は、表面利回りと実質利回りを整理した別記事の一歩先として、この二つの読み方を、モデル試算を交えて見ていきます。
表面・実質をまず確認したい方は、別記事の利回り表示の見方 ── 表面利回りと実質利回りを先にどうぞ。
物件の点数と投資の点数
表面利回りも実質利回りも、分母は物件価格(または総投資額)です。
つまり"その物件そのものが、いくらの収益力を持っているか"を測る、いわば物件の点数です。
同じ価格・同じ家賃・同じ運営費で見るなら、表面利回りや実質利回りは、借入の条件では変わりません。
ところが実際の投資では、いくら自己資金を入れ、いくら借りたかで、手元に残るお金の効率は大きく変わります。
同じ物件でも、現金で買う人と、借入を使う人とでは、自己資金から見たリターンはまったく別物になります。
そこを測るのがCCRであり、さらに時間の流れまで織り込むのがIRRです。
こちらは"投資の点数"と言えます。
四つの指標を並べて整理します。
| 指標 | 計算(ざっくり) | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃 ÷ 物件価格 | 物件の入口の収益力(経費・空室は無視) |
| 実質利回り(NOI利回り) | (年間家賃−空室損−運営費)÷ 総投資額 | 経費まで引いた、物件の実際の収益力 |
| CCR(自己資金利回り) | 年間キャッシュフロー(返済後)÷ 自己資金 | 入れた自己資金が、どれだけ効率よく回っているか |
| IRR(内部収益率) | 全期間のお金の出入りを時間価値で割り引き、釣り合う利回り | 保有から出口まで、時間を考えた総合的な利回り |
表面から実質、CCR、IRRへと、見える範囲が一段ずつ広がっていきます。
どれか一つで決めるのではなく、この順に積み上げて見るのがコツです。
CCR ── 自己資金がどれだけ働いているか
CCRは"Cash on Cash Return"の略で、自己資金利回りとも呼ばれます。
計算式はこうです。
年間キャッシュフロー(家賃収入から運営費とローン返済を引いた、税引前の手残り)を、投じた自己資金(頭金+購入諸経費)で割る。
これがCCRです。
表面・実質との決定的な違いは、分母です。
表面・実質の分母は物件価格ですが、CCRの分母は"自分が実際に出したお金"です。
だからこそ、借入の使い方でCCRは大きく動きます。
借入条件と物件の収益力がかみ合えば、自己資金を圧縮することでCCRは上がります。
分母である自己資金が小さくなるからです。
これがレバレッジ(てこ)の効果です。
同じ物件を、現金で買う場合と、借入を使う場合とで比べてみます。
○前提(モデル試算)
○物件価格:2,000万円
○購入諸経費:約140万円(総投資額 約2,140万円)
○満室家賃:年120万円(表面利回り6.0%)
○運営費・空室損を引いた純収益(NOI):年約90万円(実質利回り 約4.2%)
○借入条件:変動金利2.0%・35年
○ケースA:全額自己資金(2,140万円)で買う
○年間キャッシュフロー:90万円(借入がないので純収益がそのまま手残り)
○CCR:90万円 ÷ 2,140万円 = 約4.2%
○ケースB:頭金200万円+諸経費140万円=自己資金340万円、借入1,800万円
○年間返済額:約72万円
○年間キャッシュフロー(返済後):90万円−72万円=約18万円
○CCR:18万円 ÷ 340万円 = 約5%
手残りの金額そのものはケースBのほうが小さい(18万円)のに、自己資金から見た利回り=CCRは、全額自己資金の4.2%より高い約5%になりました。
少ない自己資金で物件を動かしているからです。
これが、借入と物件の収益力がかみ合ったときの数字の姿です。
ご自身の物件価格・自己資金・金利で、CCRがどう変わるかを試算したい方は、こちらから条件を教えてください。
ただし、CCRが高いほど良い、と単純に受け取るのは危険です。
注意点を押さえておきます。
自己資金を絞るほどCCRは高く見えるが、借入への依存度が高く、金利上昇や空室が出たときに返済後の手残りが薄く耐えにくい
自己資金ゼロのフルローンでは分母がゼロになり、CCRは計算上は無限大で、指標として意味をなさない
CCRは単年度の数字で、減価償却の終了・家賃下落・修繕費の発生で翌年以降のキャッシュフローは変わる
CCRの分子は、家賃から生まれる返済後の手残りです。
家賃が下がりにくい立地でなければ、この分子はすぐに痩せます。
CCRは、家賃という土台があってはじめて意味を持つ指標です。
IRR ── お金の時間まで考える
CCRは、ある一年を切り取ったスナップショットです。
これに対してIRRは、買ってから売るまでの全期間を、一本の利回りに束ねます。
IRRは"内部収益率"と訳されます。
投資期間に発生するお金の出入り(最初の自己資金の支出、毎年のキャッシュフロー、出口の売却手取り)を、お金の時間価値で割り引いて、ちょうど釣り合う利回りのことです。
お金は早く受け取るほど価値が高い、という考え方を織り込んでいます。
ここで効いてくるのが、CCRでは"出ていくお金"に見えていた元本返済です。
毎年のローン返済のうち元本部分は、家賃で残っている借金(残債)を削っている、いわば自分の資産を積み上げている部分です。
CCRの返済後キャッシュフローでは差し引かれて手残りが薄く見えますが、売るときには残債が減っているぶん、手取りとして返ってきます。
IRRでは、売却価格・残債・売却費用を置くことで、元本返済による残債の圧縮が出口の手取りに反映されます。
家賃で毎月の収支を埋めながら資産が積み上がる構造は、別記事なぜ"毎月赤字"でも不動産投資が成立するのかでも詳しく扱っています。
先ほどのケースBを、10年保有して売る前提で見てみます。
○前提(モデル試算・ケースBの続き)
○初期投資:自己資金340万円の支出
○毎年の手残り:約18万円(家賃は横ばいと仮定)
○10年後に売却:売却価格は取得時と同じ2,000万円(価格は上がらない前提)
○10年後の残債:約1,400万円(家賃で返済を続けた結果)
○売却費用:約70万円
○税引前の売却手取り:2,000万円−1,400万円−70万円=約530万円
○結果(税金・譲渡税は考慮しない税引前モデル)
○IRR:約9%
実質利回り4.2%、CCR約5%に対して、この税引前モデルではIRRは約9%です。
差はどこから来たのか。
価格は1円も上がっていないのに、です。
正体は、家賃が返済を通じて削ってきた元本です。
借入1,800万円が10年で約1,400万円まで減り、その差の約400万円が、家賃の力で積み上がった自分の持ち分になりました。
出口の手取り約530万円の大半は、この元本返済ぶんです。
つまりIRRが示す収益は、値上がり益をあてにしたものではなく、家賃が時間をかけて生んだものです。
さらに、投資用物件は、買い手の多くが投資家で、家賃収入と期待利回りから価格を組み立てることも多いです。
だから家賃が下がりにくい物件は、保有中のキャッシュフローだけでなく、出口の売却価格まで支えられやすくなります。
このIRRにも、読むときの注意点があります。
出口の売却価格の置き方で数字は大きく動き、ここでは横ばいと置いたが、価格が下がればIRRも下がる
保有期間によって変わるため、何年で見るかを決めないと計算できない
投資の規模を映さないため、IRRが高くても、投じた額が小さければ手にする金額そのものは小さい
だからIRRも、単独で"高いから買い"とは判断できません。
表面、実質、CCR、IRRを束で見て、はじめて投資の姿が立体的になります。
どの順で見るか
四つの指標は、こう積み上げて見ます。
表面利回り:経費も空室も無視した、広告の入口でいちばん甘い数字(ここで飛びつかない)
実質利回り:経費を引いた、物件そのものの実力を映す数字
CCR:自己資金がどれだけ効率よく回っているかを映し、借入で上がることもあるが、高いほど良いわけではない
IRR:時間と出口まで含めた総合点で、ただし売却価格の仮定しだいで動く
そして、四つすべての土台にあるのは家賃です。
指標がどれだけ精緻でも、家賃が下がりやすい立地なら、CCRの分子も、IRRの出口も、前提から崩れます。
逆に、家賃が下がりにくい好立地であれば、価格が横ばいでも、家賃が返済を通じて資産を積み上げてくれます。
指標は、家賃という土台の上で、投資の効率を映す鏡です。
順番に積み上げて読めば、表面利回りの数字一つでは見えなかった、投資の本当の姿が見えてきます。
まとめ
表面・実質利回りは物件の点数、CCR・IRRは投資の点数で、分母が物件価格か自己資金かで見える世界が変わる
CCRは自己資金利回りで、借入と物件の収益力がかみ合えば上がるが、絞りすぎは金利・空室への耐性を下げる
IRRは時間と出口まで含めた総合利回りで、価格が横ばいでも、家賃が返済を通じて削った元本が出口で返るぶんCCRより高く出ることがある
どの指標も土台は家賃で、家賃が下がりにくい立地でなければすべての前提が崩れる
表面→実質→CCR→IRRと束で見て、投資の姿を立体的につかむ
自己資金をいくら入れ、いくら借りて、何年で見るか。
条件が変われば、CCRもIRRも変わります。
ご自身の物件と資金計画で、家賃で成り立つ設計になっているかを一緒に確かめたい方は、LINEからお気軽にご相談ください。
表面の数字だけでなく、自己資金効率と時間まで含めて、収支の中身を一緒に見ていきます。
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