大津市

大津市の再開発と都市計画ーー膳所駅前・新庁舎の動きと立地適正化計画を住む前に確認する

大津市で住宅購入を検討するとき、いまの利便性や価格だけで判断するのは早計です。
都市計画や再開発の動向は、購入後の暮らしやすさや、将来の資産性を考える際の重要な判断材料になります。

この記事では、京都・滋賀エリアを専門とするONZA Estate代表の飯田の視点から、大津市が公表している都市計画・再開発の情報を整理し、住まい選びにどう活かすかという視点で解説いたします。

大津市の都市計画・再開発の全体像

大津市の人口は、令和7年国勢調査の速報値で343,051人と前回調査から0.59%の微減となった一方、世帯数は150,426世帯と2.97%増えています。
市域は南北45.6kmと細長く、琵琶湖線・湖西線・京阪という沿線ごとに街の性格が異なり、大津駅から京都駅まで新快速で約9分、石山駅から大阪駅まで乗り換えなしの約46分(いずれも2026年時点の目安)という通勤圏が住まいの需要を支えています。
ただし新快速が停まる駅と停まらない駅が混在し、駅からの距離とあわせて、同じ市内でも需要の厚さに差が出るのが大津の特徴です。

都市計画の根幹となるのが、大津市都市計画マスタープラン2017-2031です。
2017年(平成29年)3月に策定され、2031年までを計画期間として、学区を単位とした7つの地域ごとの構想を示しています。

この上位計画を具体化する個別計画が、大津市立地適正化計画です。
2021年(令和3年)4月1日に策定され、計画期間は2021年から2031年まで、人口減少・高齢化を見据えて居住機能と都市機能をゆるやかに誘導する「コンパクト・プラス・ネットワーク」の考え方に立っています。
いずれも改定・見直しが行われることがあるため、購入を検討する際は大津市公式サイトの最新版で確認してください。

膳所駅前再開発と浜大津・琵琶湖文化館の動き

県庁・市役所などの行政機能と商業が集まる中心部では、まちの更新が続いています。

JR膳所駅前では、2024年8月に地権者による市街地再開発準備組合が設立され、2025年10月に市街地再開発基本構想が策定、同年12月には事業協力者の募集が始まりました。
まだ構想段階ですが、駅前の更新に向けた動きが具体化しつつあり、市も膳所駅周辺の整備を検討・推進しています。
びわ湖浜大津駅の近くでは、休館中の琵琶湖文化館の後継施設が2027年12月に開館予定で、こちらは時期まで公表された整備です。

中心部の中古マンションの中央値は、80〜100㎡で大津駅の4,880万円と市内で最も高い水準です(SUUMO掲載情報・集計期間2025年7月1日〜2026年6月30日・徒歩15分以内の最終掲載価格で、成約価格ではありません)。
再開発は資産価値の上昇を約束するものではなく、人を呼び込む更新が続いていること自体を、需要の持続性を判断する材料の一つとして見るのが現実的です。
価格水準が高いエリアだけに、周辺の成約事例や総支払額を冷静に見て、無理のない予算で選ぶことが前提になります。

新庁舎の整備ーー大津京・皇子山の動き

もうひとつの大きな動きが、老朽化した市役所の建て替えです。
大津市は2025年8月に庁舎整備基本計画を策定し、新庁舎を現庁舎の東側にある皇子山総合運動公園の一部に「公園と一体となった庁舎」として整備する方針を示しました。

設計業務は2026年4月に事業者が決まり、2026年6月から2029年3月までの期間で進められ、建設工事は2030年から、2032〜33年度の供用開始を目指しています(6階建ての計画・2026年時点の公表情報)。
公園のテニスコートは2026年3月31日で利用を終え、4月から解体工事が始まっています。
大津京駅から新庁舎への歩行者動線の整備も検討されており、行政機能が駅の近くにまとまることは、湖西側の主要エリアである大津京駅周辺の需要を下支えする材料の一つです。
ただし供用までは数年先で、計画は変わり得るため、期待を先取りして価格を判断するのではなく、今の暮らしやすさを軸に見ておくことが大切です。

湖西の道路整備ーー湖西道路4車線化と小松拡幅

湖西・北部で暮らす場合、日常の移動は車の比重が高くなります。
その幹線である国道161号では、近年、整備の節目が続きました。

湖西道路の真野IC〜坂本北IC間(6.6km)は4車線化工事が完成し、2025年8月の暫定運用を経て、2025年9月27日から本格運用が始まりました。
さらに北の小松拡幅では、北小松地区(2.4km・暫定2車線)が2025年11月24日に開通し、渋滞の起きやすかった交差点付近を迂回できるようになりました。
いずれも渋滞緩和と地域の安全性向上が目的で、湖西・北部から市中心部や京都方面へ車で向かう際の利便が高まっています。

一方で、鉄道側の実情は別に見ておく必要があります。
湖西線から大阪方面へは山科駅での乗り換えが基本で、冬の強風による運転規制もあります。
道路整備で車の利便が上がったことと、鉄道通勤の条件は分けて確認し、家族の通勤・通学スタイルに合うかで判断してください。
湖西北部の暮らしは、別記事「
堅田駅・和邇以北に住むのはどう?」で整理しています。

立地適正化計画とハザードから見る大津市の拠点配置

立地適正化計画は、市街化区域のなかに「居住誘導区域」と「都市機能誘導区域」を設定し、医療・福祉・商業などの立地を促すエリアと、人口密度を保って居住を促すエリアを地図上で明示するものです。
大津市では、都市機能誘導区域を地域拠点の中心から概ね半径800mの範囲を基本に設定し、居住誘導区域は生活利便性が確保される区域などに設定しています。

住宅購入の観点で重要なのは、検討しているエリアが居住誘導区域に含まれているかという点です。
区域内であることは、居住や生活機能をゆるやかに誘導・維持していく市の方針を読み取る手掛かりになります。
ただし、個別の道路・上下水道・公共施設の整備予定は別途の確認が必要で、区域内であることが将来の維持を保証するわけではありません。
なお、居住誘導区域外で3戸以上の住宅を建てる・開発する場合などは市への届出制度があります。
これは「区域外には住めない」という意味ではなく、区域外にも暮らしやすい場所はあり、駅距離・生活施設・災害リスク・価格のバランスで判断することが大切です。

あわせて押さえておきたいのが、災害リスクとの関係です。
大津市の立地適正化計画では、土砂災害特別警戒区域(急傾斜地に係る土砂災害警戒区域を含む)・地すべり防止区域・急傾斜地崩壊危険区域を居住誘導区域に含めない方針をとっており、計画策定後に新たにハザードエリアが指定された場合も同じ考え方で扱われます。
山手の住宅地が多い大津では、この区域の該当有無が住まい選びの確認材料になります。

ハザードマップも「今」の注意点があります。
滋賀県が2026年3月末に洪水浸水想定区域を更新した一方、現在公開されている大津市のハザードマップ(土砂・洪水)は更新前の令和4年3月作成のもので、市は令和8年度中に新しいハザードマップを作成予定です。
購入を検討する際は、市のマップに加えて、県の最新の洪水浸水想定区域図や防災情報マップもあわせて確認してください。
詳しくは、別記事「
大津市のハザードマップと防災リスクを住む前に確認する」「大津市で将来売却しにくくなる住宅の特徴」で整理しています。

都市計画情報を住まい選びに活かす視点

ここまでの内容を、住まい選びにどう落とし込むか整理します。

1. 新快速停車駅の徒歩圏か、拠点圏か
大津・石山・大津京・比叡山坂本・堅田といった新快速停車駅の徒歩圏は、通勤利便と需要の厚みを兼ね備え、将来の売却・賃貸でも選択肢が残りやすいエリアです。
普通列車のみの駅や駅から離れたエリアは、価格や住環境の魅力と、通勤時間・流動性の差を分けて見ます。

2. 居住誘導区域・都市機能誘導区域の確認
検討エリアが立地適正化計画上どう位置づけられているかは、市の公開資料で確認できます。
誘導区域内は生活機能が維持されやすい傾向がありますが、個別の整備予定は別途の確認が必要です。

3. ハザード情報の確認
山手の土砂災害関連区域と、琵琶湖岸・河川沿いの浸水想定は購入前に必ず見ておきたい判断材料です。
県の更新を反映した最新情報で確認し、重要事項説明でも確かめます。

4. 再開発・整備の進捗は中長期で見る
膳所駅前の再開発や新庁舎の整備は、短期の値動きを狙うものではなく、長期で街の機能が厚くなっていく過程を享受するものと捉えるのが現実的です。
エリアごとの資産性の見方は、別記事「
大津市の住宅は資産価値を維持できる?」もご参照ください。
居住誘導区域やハザード、物件ごとの規制の確認は、
LINEからお気軽にご相談ください。

まとめ:大津市の都市計画動向を踏まえた住宅購入の判断軸

大津市は、新快速が停まる駅と停まらない駅が混在する南北に長い市域に、世帯増と複数の需要源、そしてコンパクト・プラス・ネットワーク型の都市計画が組み合わさったエリアです。
再開発の主役は、膳所駅前と浜大津の中心部の更新、皇子山での新庁舎整備、そして湖西の道路整備で、いずれも街の機能をゆるやかに底上げしています。

住宅購入の判断軸としては、次の4点を軸に検討することをおすすめします。
○ 新快速停車駅の徒歩圏か拠点圏か
○ 居住誘導区域・都市機能誘導区域に含まれるか
○ ハザードリスクはどうか(県の最新情報で)
○ 再開発・公共整備は中長期で捉え、長期保有に耐えうる立地か

都市計画は購入後の暮らしと将来の資産性を左右する重要な情報です。
出口戦略はあくまで「もしもの時の保険」として備えつつ、長く暮らせる立地を選ぶ姿勢が、結果的に最も堅実な選択につながります。

大津の街全体の特徴は、別記事「大津市はどんな街?」もあわせてご覧ください。
大津市での購入・賃貸を、都市計画やハザード情報もふまえて検討したい方は、
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