契約不適合責任とは ── 家を売る売主の責任と告知書・特約での備え

家を売ったあと、「雨漏りがあった」「設備が壊れていた」と買主から連絡が来たら──売主が引渡し後に負う責任が、契約不適合責任です。
先に結論を言えば、売主の最大の防御は隠すことではなく、知っていることを正直に告知することです。仕組みを知れば、恐れる制度ではありません。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、契約不適合責任の基本(2020年の民法改正)、買主の権利と通知期間、告知書の役割、特約でできること・できないこと、インスペクションでの備え、段取りまでを整理します。
制度の内容は2026年7月時点のものです。個別の契約・紛争の判断は弁護士に、契約書の内容は不動産会社にご確認ください。

契約不適合責任とは──2020年の民法改正で変わったこと

まず制度の基本です。
・契約不適合責任とは:引き渡された物件が、種類・品質・数量に関して「契約の内容」に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任です
・2020年4月施行の改正民法で、従来の「瑕疵担保責任」から変わりました。旧制度は「隠れた瑕疵(欠陥)」があるかが問題でしたが、現制度は「契約の内容に適合しているか」が基準です
・この変更が売主にとって意味するのは、契約書・告知書に何を書くかが決定的に重要になった、ということです。同じ不具合でも、契約に織り込まれていれば「契約どおり」、書かれていなければ「契約不適合」になり得ます
たとえば「雨漏りの修理歴がある」と告知して売れば、雨漏り歴は契約の前提になります。黙って売れば、後から発覚したときに契約不適合を問われ得ます。
つまりこの制度は、「正直に書いた売主」を守る方向に働きます。以下、買主側の権利から順に見ていきます。

買主の権利と通知期間

物件が契約内容に適合しない場合、買主には4つの権利があります(民法562〜564条・2026年7月時点)。
・追完請求:修補や不足分の引渡しを求める
・代金減額請求:追完がされない場合などに、代金の減額を求める
・損害賠償請求:売主に責任がある(帰責事由がある)場合に、損害の賠償を求める
・契約の解除:目的を達せられない場合などに、契約を解除する
期間のルールもあります。
・種類・品質の不適合について、買主は不適合を知った時から1年以内に売主へ通知する必要があります(民法566条)。通知しないと責任を追及できなくなります
・ただし、売主が不適合を知っていた場合や、重大な不注意で知らなかった場合は、この期間制限は適用されません
「知りながら黙っている」ことには保護がない──ここでも制度は正直な売主に有利にできています。

売主の最大の防御──告知書に正直に書く

売主の備えの中心が、告知書(物件状況確認書)と付帯設備表です。
・告知書(物件状況確認書):雨漏り・シロアリ被害・給排水の故障歴・修繕歴・
境界の状況・周辺の音やにおいなど、物件の状態を売主が記載する書類です
・付帯設備表:エアコン・給湯器などの設備の有無と不具合の有無を一覧にする書類です
この2つに知っていることを正直に書くことが、契約不適合責任へのいちばんの備えです。理由ははっきりしています。
・書いた不具合は契約の前提になる:買主がその状態を了解したうえで契約するため、その不具合が契約不適合に当たるかの判断で売主に有利に働きます(個別の契約内容によります)
・黙っていた不具合は守られない:後述の免責特約があっても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません
「古い家だから不具合を書くと売れなくなるのでは」と心配される方もいますが、状態が明示された物件は買主が確認したうえで検討しやすくなり、認識違いによるトラブルの予防につながります。書く内容に迷ったら、不動産会社に相談しながら埋めていけば大丈夫です。

告知書の書き方は、LINEでもご相談いただけます。物件の状況に合わせて記載すべき項目を整理できます。

特約でできること・できないこと

契約不適合責任は、契約で調整できる部分と、できない部分があります(2026年7月時点)。
●特約でできること
・個人間の売買では、契約不適合責任を免責する特約や、責任の期間を限定する特約(引渡しから数か月程度とする例が実務で多い)が有効です。築年数の古い物件では全部免責の特約が使われることもあります
・設備については、経年劣化が前提のため、契約不適合責任の対象外とする、または短期間に限る特約が実務で一般的です。付帯設備表で状態を明記したうえで運用します
●特約でもできないこと
・売主が知りながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません(民法572条)。免責特約は「告知の代わり」にはならない、ということです
なお、売主が宅建業者の場合はルールが異なり、通知期間を引渡しから2年以上とする特約を除いて、民法より買主に不利な特約は無効です(宅建業法40条)。個人が売主の場合はこの制限はなく、特約の設計は契約交渉によります。
特約は有効な備えですが、順番を間違えないでください。まず正直な告知、そのうえで責任範囲を特約で明確にする──この順番です。

インスペクションと瑕疵保険──状態を「見える化」する備え

もう一歩進んだ備えとして、物件の状態を専門家に調べてもらう方法があります。
・インスペクション(建物状況調査):既存住宅の基礎・外壁・雨漏りの状況などを専門の調査員が調べる仕組みです。2018年4月施行の宅建業法改正で、媒介契約の際に不動産会社がインスペクション事業者のあっせんの可否を示すことなどが義務化されており、売却時に不動産会社から案内を受けられます
・売主が事前に実施するメリット:自分も知らなかった不具合を引渡し前に把握でき、告知・修繕・価格への反映という形で先に手を打てます。「知らなかった不具合が引渡し後に見つかる」リスクを抑える、売主側の備えとしての使い方です
・既存住宅売買瑕疵保険:引渡し後に見つかった欠陥の補修費用等をカバーする保険制度もあります(加入には検査等の要件があります。詳細は不動産会社・保険法人にご確認ください)
すべての売却で必須というものではありません。築年数が古い・長く
空き家だった・状態に不安がある──そんな場合に、費用と安心のバランスで検討する選択肢です。

段取り──売出し前からの備え

時系列で整理します。
・売出し前:物件の不具合・修繕歴を思い出せる範囲で書き出しておきます。過去の修繕の領収書や点検記録があれば集めます
媒介契約時:不動産会社にインスペクションの案内を確認し、実施するか相談します
・売買契約前:告知書・付帯設備表を不動産会社と一緒に丁寧に作成します。迷う項目は「書くかどうか」ではなく「どう書くか」を相談してください
・契約時:契約不適合責任の範囲・期間の特約を確認します。免責や期間限定の内容は契約書に明記されます
・引渡し後:買主から連絡があった場合は、まず契約書と告知書の記載を確認し、不動産会社に相談します
知っている不具合の未記載や、状態確認の不足は、引渡し後の認識違いにつながることがあります。告知と確認を丁寧に行うことが、リスクを抑える基本的な備えです。

まとめ

契約不適合責任と売主の備えは、次のように整理できます。
・制度の基本:2020年の民法改正で「契約の内容に適合するか」が基準に。契約書・告知書に何を書くかが決定的に重要(2026年7月時点)
・買主の権利は4つ:追完請求・代金減額・損害賠償・解除。種類・品質の不適合は知った時から1年以内の通知が必要(売主が知っていた場合等は除く)
・最大の防御は正直な告知:告知書・付帯設備表に書いた不具合は契約の前提になり、責任を問われにくくなる(個別の契約内容による)
・特約は有効だが限界がある:免責・期間限定特約は個人間で有効。ただし知りながら告げなかった事実は免責されない(民法572条)。宅建業者売主には別ルール(宅建業法40条)
・インスペクションという備えも:2018年から媒介契約時に案内が受けられる。状態の見える化は売主側の備えになる
・段取りは売出し前から:不具合の書き出し→告知書の丁寧な作成→特約の確認
契約不適合責任は、正直な売主を守る方向に働く制度です。隠さず、書いて、確認して──この基本を押さえて売却に臨んでください。
なお、過去に人の死があった場合の告知(心理的瑕疵)には国交省のガイドラインがあり、
事故物件の売却と告知義務で別途整理しています。

売却のご相談は、LINEからお気軽にお問い合わせください。
物件の状況をうかがい、告知・特約・インスペクションを含めた段取りを一緒に整理いたします。
購入・賃貸のご相談も承っています。

ONZA Estate | 滋賀・京都エリアの不動産仲介

空き家・売却に関するご相談は、LINEからお気軽にどうぞ。毎日7:00〜21:00、無料で対応しています。