変動金利を選ぶ理由 ── 金利上昇局面での選び方
2026-06-05
ローンを組むとき、必ず一度は迷うのが "変動か、固定か" です。
先に私の立場を書いておきます。
私は、ローンは変動金利を基本に考えます。
ただし、変動には金利上昇のリスクがあるので、そこは正直に併記します。
理由は、元本がいちばん大きい序盤に、低金利の効きが最も大きいからです。
いまはむしろ利上げ局面で、政策金利を引き上げる話も出ています。
変動も今後は上がりうる ── その前提を置いたうえで、なお変動を基本に考える理由を、この記事で実数値とともに整理します。
なお、本記事の金利は2026年6月公開時点の公表情報をもとにした目安です。
金利は毎月のように動くので、実際に借りるときは、その時点の最新値で判断してください。
いまの金利はどうなっているか
まず、足元の金利環境を整理します。
日本銀行の政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)は、2026年6月時点で年0.75%です。
利上げ局面が続いていて、市場では追加利上げを警戒する見方もあります。
変動金利の基準として使われることが多い短期プライムレートも、2026年3月の改定で2.125%まで上がっています。
そのうえで、住宅ローンの金利を並べると、変動と固定でかなり差がついています。
変動金利の最優遇例:ネット銀行・メガバンクでは年0.9〜1.1%台の例があります。
ネット系では0.8%台の例もあります
フラット35(21年以上・融資率9割以下):年3.21%。
前月から0.50ポイント上がり、3カ月連続の上昇で、現行制度では初めて3%を超えました
投資用の不動産ローン(アパートローン)は、これより水準が高めです。
一例として、メガバンクや地方銀行では年1%台後半〜3%台、信用金庫やノンバンクでは年2%台〜5%台になることもあります。
水準そのものは住宅ローンより高いですが、"変動のほうが固定より低い" という関係は同じです。
ただ、固定がここまで上がっているのは、市場が今後の利上げを織り込んでいるからです。
“差が開いているから変動が得” とは考えません。
変動を選ぶなら、その変動もこの先上がりうる、という前提で見ておく必要があります。
なぜ変動が基本になりやすいか
ここから、変動を基本に考える理由を整理します。
理由は、元本が大きい序盤ほど低金利が効くという構造的なものです。
メリットを挙げたあと、注意点も併記します。
変動のメリット
当初金利が低い間は、同じ借入額でも毎月の利息負担を抑えやすくなる
当初金利が低い間は、毎月返済額に占める元本部分が大きくなりやすく、残債が減りやすい
残債が早く減れば、その後に金利が上がったときの影響も小さくなる
浮いた分を自由に使える
低金利で浮いたお金は、繰上返済を急ぐより、手元資金や運用に回すという選択ができる
変動の注意点
多くの変動金利型ローンでは、半年ごとに適用金利が見直される
上昇局面では、適用金利が上がり、利息が増えていく
"5年ルール・125%ルール" には落とし穴
このルールは、金利が上がっても5年間は返済額が変わらず、見直し後も増加は1.25倍までに抑えるというもの
ただし、返済額が据え置かれても、金利が上がれば利息の割合が増え、元金が減りにくくなる
金利が大きく上がると、利息を払いきれない "未払利息" が出ることも
一部の金融機関では、この5年・125%ルールを採用していない商品もある
その場合、金利上昇がそのまま返済額に反映される
自分のローンがどちらかは、必ず確認
変動を選ぶなら、これらの注意点を前提に、返済に余力を持たせておくことが欠かせません。
固定金利が向く人
固定金利が悪い選択というわけではありません。
固定が向く人もはっきりいます。
こちらも、メリットを挙げたあとに注意点を併記します。
なお、フラット35は自宅向け住宅ローンの代表例です。
投資用不動産ローンでは、金融機関ごとに固定期間選択型や全期間固定型の商品条件が異なるため、固定金利と一口にいっても中身は同じではありません。
固定のメリット
返済額が完済まで確定する
家計や事業の計画が立てやすく、将来の見通しがぶれない
金利が上がっても影響を受けない
上昇局面でも、返済額が変わらない安心がある
半年ごとの金利見直しを気にしなくてよく、精神的な負担が軽い
固定の注意点
金利が高め
現在はフラット35は3.21%で、変動との差が大きく、低金利のメリットが取りにくくなる
上昇局面で借りると、その高い金利のまま固定される
あとで金利が落ち着いても、借り換えない限りは下がらない
整理すると、固定は "返済額を確定させて安心したい人" に向く、対等な選択肢です。
金利を読むのが難しいいまの局面で、計画を固めたい人には合理的です。
「元本が大きいときに低金利が効く」とは
変動を基本に考える、もう一段深い理由がここです。
金利差が家計に効く金額は、おおまかに "金利差 × 元本 × 期間" で決まります。
同じ1%の差でも、元本が大きいほど、その差が生む金額は大きくなります。
ローンは、借りた直後がいちばん元本の大きい時期です。
その後、返済が進むほど元本は減り、金利が動いたときの影響も小さくなっていきます。
数字で見てみます。
前提:借入3,000万円・35年・元利均等
変動の例:金利0.9%とすると、月々の返済は約8.3万円
固定の例:金利3.21%とすると、月々の返済は約11.9万円
同じ借入でも、序盤の毎月返済額の差は約3.5万円になります。
元本が大きい序盤を低金利で走り、その間に元本を早く削っておく ── これが、変動の合理性です。
投資用の不動産ローンは借入額が大きくなりやすいので、この効果はさらに効いてきます。
ただし、これは "変動なら必ず得" という話ではありません。
序盤の低金利を活かしつつ、上昇局面に備えて元本を減らし、手元資金を確保しておく ── そこまでがセットです。
なお、低金利で浮いたお金を繰上返済に全部回すか、手元に残して運用や備えに使うかは、現金の置き方の問題でもあります。
預金金利の考え方は、別記事の預金は「0.1%への投資」であるで整理しています。
金利が上がったときの月返済シミュレーション
変動を選ぶなら、"いま" の返済額だけでなく、"上がったあと" の返済額も見ておきたいです。
借入3,000万円・35年・元利均等の前提で、当初金利0.9%から金利が上昇したケースを並べます。
当初0.9%:月々の返済は約8.3万円
1.9%まで上昇:月々の返済は約9.8万円(差は約1.5万円)
2.9%まで上昇:月々の返済は約11.4万円(差は約3.1万円)
3.9%まで上昇:月々の返済は約13.1万円(差は約4.8万円)
1%上がるごとに、月々の返済はおおむね1.5〜1.7万円ずつ重くなっていきます。
5年・125%ルールが適用される商品でも、ルールはあくまで "見た目の返済額" を抑えるだけで、利息の重さそのものは消えません。
ストレスをかけるなら、金利が1〜2%上がっても返済比率が崩れないかを、借りる前に確認しておきたいところです。
変動が向く人・固定が向く人の整理
ここまでの話を、向き不向きで並べ直します。
変動が向きやすい人
借入額が大きく、序盤の低金利メリットを取りにいきたい人
金利が1〜2%上がっても返済を続けられる収入・資産の余力がある人
半年ごとの金利見直しを定期的に確認できる人
繰上返済や手元資金の調整を、自分で判断していきたい人
固定が向きやすい人
返済額を完済まで確定させて、家計や事業計画を固めたい人
金利上昇局面で精神的な負担を抱えたくない人
借入期間が長く、上昇リスクを取りたくない人
自営業や個人事業など、収入の変動を別途抱えている人
どちらが正解という話ではなく、自分の収入の安定度、手元資金、借入額、性格まで含めて選ぶものだと考えています。
投資用ローンで確認したい項目
投資用の不動産ローンは、住宅ローンよりも金融機関ごとの差が大きいです。
変動・固定を選ぶ前に、商品条件そのものを確認しておきたい項目を並べます。
基準金利と優遇幅:基準金利が何に連動し、優遇幅は完済まで続くのか、一定期間で見直されるのか
5年・125%ルールの適用有無:投資用ローンでは適用されない商品も多いため、契約前に確認できる
金利見直しの頻度:半年ごとか、それ以外か
繰上返済の手数料:一部繰上返済・全額繰上返済の条件と費用
団信の扱い:加入可否、保障範囲、上乗せ金利の有無
借り換え時の制約:他行への借り換え、追加担保・保証の条件
このあたりを揃えて比較すると、表面金利だけでは見えなかった差が見えてきます。
変動で組むときの備え
変動を選ぶなら、上昇局面でも崩れないよう、いくつか備えておきたいことがあります。
借りる前に、次の点を確認しておきましょう。
金利が1〜2%上がっても返済を続けられるか、事前にストレスをかけて確認できる
繰上返済や急な支出に回せる手元資金を確保できる
自分のローンに5年・125%ルールが適用されるかを、契約前に把握できる
半年ごとの金利見直しの通知を、毎回確認する習慣をつけられる
ここを押さえておけば、金利が上がっても慌てずに対応できます。
逆に、ここに余裕がないまま変動で目一杯借りるのは、避けたいところです。
なお、団信(団体信用生命保険)は、変動・固定の金利タイプだけで決まるものではなく、金融機関や商品によって加入可否・保障範囲・金利条件が異なります。
団信を生命保険として見た価値は、別記事の団信のレバレッジで整理しています。
まとめ
変動と固定について、要点を整理します。
いまは利上げ局面で、固定(フラット35 3.21%)は今後の利上げを織り込んで高い
“金利差が開いているから変動” という選び方はしない
変動は当初金利が低く、序盤は元本が減りやすいのが強み
ただし、半年ごとの見直しと、5年・125%ルールの落とし穴という上昇リスクは理解しておく
固定は、返済額を確定させて計画を立てたい人に向く、対等な選択肢
元本が大きい序盤ほど低金利が効く
金利は変わる
借りる時点の最新値と、自分の返済余力で判断
私は変動を基本に考えますが、固定が合う人もいます。
大事なのは、金利のタイプそのものより、上昇局面でも返済を続けられる余力を持っておくことです。
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