都市部駅近RC区分 vs 郊外一棟木造 ── 利回り・資産性・流動性をどう天秤にかけるか
2026-05-30
利回りだけで比べると、郊外一棟木造のほうが魅力的に見えます。
ただ、判断軸は資産性・流動性・目利きの難度まで含めて考える必要があります。
本記事では、都市部駅近RC区分と郊外一棟木造の違いをフェアに整理し、どちらがご自身の目的に合うかを考えていきます。
著者の立場
ONZA Estate代表の飯田です。
私たちONZA Estateは、好立地物件を中心とした投資用不動産の仲介を行っています。
もともとは京都のワンルームマンションデベロッパーで営業をしていました。
そこから独立し、現在は好立地物件を中心とした投資用不動産の仲介を行いながら、一棟物件のご相談や現場も見てきています。
区分だけを扱ってきた人間ではなく、両方を横で比較してきた立場から、今回の論点を整理します。
どちらか一方を否定する話ではありません。
それぞれに向く目的・属性があり、そこを取り違えないことが大切だと考えています。
利回りの見え方
まず、数字の傾向から見ていきます。
一般財団法人日本不動産研究所『第53回 不動産投資家調査』(2025年10月時点) によれば、東京・城南エリアの期待利回りはワンルームで3.7%、ファミリータイプで3.8%です。
関西でも、同調査の大阪エリアのワンルームの期待利回りは4.3%と、東京よりわずかに高いものの、いずれも低い水準です。
市場の実勢としても、都市部の区分マンションの表面利回りは、ワンルームで4%台前半、ファミリーで4%前後というレンジに収まることが多いです。
一方、郊外・地方の一棟木造アパートに目を向けると、表面利回り8%前後、物件によっては8%台後半というケースも珍しくありません。
数字だけ並べれば、ほぼ倍の差です。
あくまで市場全体の傾向としての数値であり、個別物件は立地・築年・賃料水準・空室状況によって大きくぶれます。
同じエリア・同じ築年でも、物件ごとに条件は変わります。
ではなぜ、ここまで差がつくのか。
答えはシンプルで、"高い利回りには、それに対応した理由がついている" ことが多いからです。
空室リスク、流動性の低さ、将来の賃貸需要減のリスク。
これらが価格に織り込まれた結果、利回りが高く見えるという構造です。
そして、利回りには表面と実質があります。
管理費・修繕積立金・原状回復費・固定資産税・空室期間などを差し引いた"実質"で見ると、表面の数字ほどの差はつかないこともあります。
表面8%の一棟木造が、修繕や空室を加味した実質ベースでは大きく目減りすることもあれば、表面4%の都市部区分が実質ではあまり下がらないこともあります。
表面利回りの数字だけで比較すると、見えている景色と実態がずれやすいというのが、最初に押さえておきたい点です。
都市部駅近RC区分の強み
ここから、それぞれの特徴を整理していきます。
まずは都市部駅近RC区分の強みからです。
資産性と流動性が高い
都市部の駅近物件は、買い手が見つかりやすい傾向があります。
賃貸需要が太いエリアでは、家賃水準が下がりにくく、空室期間も短くなりやすいです。
そして投資用物件の売却価格は、買い手である投資家が "利回り" を大きな判断材料にすることが多いため、家賃水準が維持され、期待利回りや融資環境が大きく悪化しなければ、売却時の評価額も維持されやすい傾向があります。
つまり、賃貸需要が太い好立地は二重に強いということです。
一つは、家賃そのものが下がりにくい(賃貸市場での競争力)。
もう一つは、売却時の評価額も維持されやすい(投資家の利回り評価で価格が支えられる)。
物件評価額は、想定家賃 ÷ 期待利回りで見られることも多いです。
逆に賃貸需要が薄い物件は二重に弱くなります。
家賃が下がる → 同じ期待利回りで逆算した評価額が下がる → 売却価格も下がりやすい、という連動が起きやすいです。
立地を語るときに、家賃面だけでなく売却価格面まで含めて考える必要があるのは、このためです。
目利きの難度が比較的低い
都市部駅近RC区分の二つ目の強みは、"目利きの難度が比較的低い" ことです。
これは "誰でも勝てる" という意味ではありません。
賃貸需要を読みやすいエリア・建物・間取りが、ある程度パターンとして見えやすい、という意味です。
単身世帯が集まる都市部の駅近で、適正な広さ・適正な間取り・適正な築年帯を選ぶ。
賃貸需要が集まる好立地物件を適正価格で選べれば、初心者でも大外しを避けやすい傾向があります。
管理の手間が少ない
区分マンションは、共用部の管理を管理組合が担います。
オーナーが個別に外壁や屋上、エントランスを修繕する必要がありません。
専有部の管理も、管理会社に委託すれば、入居者対応・家賃集金・退去時のやり取りまで任せられます。
本業を持ちながら、副業的に保有していく前提では、この "手間の少なさ" は実質的な価値が大きいです。
弱みもフェアに
もちろん、都市部の駅近RC区分にも弱みはあります。
表面利回りが低いです。
管理費・修繕積立金などの固定費が、月々の収支から確実に引かれ続けます。
そして1戸所有の場合、空室は0か100です。
満室か空室かの二択で、空室期間中は家賃収入がゼロになります。
ただし、賃貸需要が太い都市部の駅近では、空室期間自体が短くなりやすいので、年単位で見れば収支の振れ幅は抑えやすい傾向があります。
このあたりの "月次CFがマイナスでも長期で成立する構造" については なぜ "毎月赤字" でも不動産投資が成立するのか で詳しく扱っています。
郊外一棟木造の強み
次に、郊外一棟木造の強みを整理します。
キャッシュフローが出やすい
一つ目は、何より "キャッシュフローが出やすい" ことです。
表面利回りが高い分、満室稼働していれば月々の手残りも大きくなりやすいです。
都市部区分が月々の手残りは小さく(物件によってはマイナスで)長期の資産形成を狙う色合いが強いのに対し、一棟木造は満室稼働時の手残りを大きく取りに行ける可能性があります。
"毎月の手残りを増やしたい" という目的が明確な方にとって、一棟木造は有力な選択肢になります。
利益の幅が大きい
二つ目は、"物件選びと運用が良ければ、利益の幅が大きい" という点です。
複数戸を持つので、1戸が空いても他の戸が稼働していれば収入はゼロになりません。
空室リスクを建物内で分散できます。
リフォーム・客付け・賃料設定など、運用の自由度も高いです。
共用部の修繕タイミング、外装の色、設備のグレード、これらをオーナー自身でコントロールできるので、バリューアップによって賃料を引き上げられる余地があります。
区分マンションでは管理組合の決議が必要な部分も、一棟ならオーナー判断で動かせます。
さらに、土地評価が下支えになる場合もあります。
ただし、需要の弱いエリアでは土地そのものの流動性も低くなるため、土地値が残るかどうかも個別に見る必要があります。
税務面では、木造は法定耐用年数が22年(RC造は47年)と短いため、中古で取得した場合に簡便法で短期に大きく減価償却を計上できる場面があります。
耐用年数を過ぎた中古木造は、簡便法で耐用年数が4年になる場合があります。
実際の節税効果は所得、取得価格、建物割合などで変わるため、税務面だけを判断軸にしないほうがいいです。
その分、目利きがより必要
三つ目は、"その分、目利きがより必要になる" という点です。
郊外一棟木造は、目利きと運用がハマれば、区分にはない伸びしろを取れる選択肢です。
ただし、その "目利き" と "運用" の難度は、都市部駅近区分より上がります。
具体的には、賃貸需要を読み違えると一気に苦しくなります。
賃貸需要が弱いエリアでは、人口動態の影響を受けやすく、5年後・10年後にその街の単身者・ファミリー世帯がどう動くかを読む必要があります。
大学や工場、再開発計画の有無で需給が大きく変わるエリアもあります。
修繕・管理を自分で回す力も必要になります。
外装の塗装、屋根、給排水、空室時の原状回復、これらをいつ・どのタイミングで・いくらで実施するかを、オーナーが意思決定する必要があります。
そして出口では、木造は法定耐用年数が短い分、買い手側の融資期間が短くなりがちです。
買い手(投資家)は収益還元で価格を見ることが多いため、家賃水準と稼働率が維持できているかが、そのまま売却価格に効いてきます。
弱みもフェアに
弱みとしては、流動性の低さがあります。
一棟は価格帯が大きく、買える属性が限られるため、買い手が現れるまで時間がかかりやすいです。
空室・修繕リスクを自分で背負う必要があり、賃貸需要が弱いエリアでは需要を読み切る難度がさらに上がります。
二つの軸をどう取るか
両者の違いは、突き詰めると "何を取りに行くか" の違いです。
一棟木造が取りに行くのは、キャッシュフローと利益の幅です。
手間をかけ、賃貸需要を読み切れる人なら、区分にはない伸びしろを取れます。
事業として不動産を回していきたい方には、相性の良い選択肢です。
都市部駅近RC区分が取りに行くのは、資産性と流動性です。
不動産は株式や為替のように、ボタン一つで売れる商品ではありません。
買い手が現れるまで売れず、急いで売ろうとすれば値下げを迫られます。
だからこそ、いざというときに "売れる" こと、"価格が崩れにくい" ことは、長期保有を前提にすると効いてきます。
老後の年金的キャッシュフロー、資産の分散、相続といった目的とは、相性が良い面があります。
どちらの軸を重く見るかは、目的・属性次第です。
手をかけてキャッシュフローと伸びしろを取りに行くのか、それとも手間を抑えて資産性と流動性を確保するのか。
まずは、自分がどちらを重く見るのかを言葉にするところからだと考えています。
どちらが自分に合うか
"どちらが優れているか" ではなく、"どちらが自分の目的・属性に合うか" で考える視点を整理します。
都市部駅近RC区分が向きやすい方
本業に集中したく、運用の手間を最小限にしたい
流動性を確保し、いざというときに売れる選択肢を持っておきたい
賃貸需要を読む経験がまだ浅く、型に乗って堅実に始めたい
給与所得が安定しており、長期で着実に積み上げる時間軸を取れる
郊外一棟木造が向きやすい方
毎月のキャッシュフローを大きく取りに行きたい
賃貸需要を読む目利きと、修繕・客付け・運用に手をかける覚悟がある
事業性を持って不動産経営に取り組みたい
万一空室や修繕が重なっても耐えられる自己資金の厚みがある
この整理はあくまで傾向です。
同じ "老後のキャッシュフローが目的" でも、属性によって最適解は変わります。
そして両方を組み合わせるという選択肢も、当然ありえます。
大事なのは、利回りの数字に引っ張られて目的を見失わないことです。
まとめ
本記事の論点を整理します。
表面利回りの高さだけで選ぶと、判断を誤りやすいです。
高い利回りには、それに対応した理由がついていることが多く、空室・流動性・将来需要のリスクが価格に織り込まれた結果として、利回りが高く見えている構造があります。
都市部駅近RC区分は、資産性と流動性が高く、目利きの難度が比較的低い、堅実な選択肢です。
表面利回りは低めですが、家賃が下がりにくく売却価格も維持されやすい二重の強みがあります。
郊外一棟木造は、キャッシュフローが出やすく、物件選びと運用が良ければ利益の幅も大きくなる選択肢です。
その分、賃貸需要を読む力、修繕・管理を回す力、出口を読む力という "目利きの難度" が上がります。
ハマれば強い、ただし誰にでも合う商品ではないということです。
どちらを選ぶかは、優劣ではなく、目的・属性次第です。
出発点は、目的逆算です。
自分は何のために不動産投資をするのか、何を取りに行きたいのか。
その問いに照らして、どちらが合うかで決める ── これが本記事でお伝えしたかった一番のメッセージです。
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