一般管理 vs サブリース vs 自主管理 ── 損益分岐の実数値
2026-06-01
物件を買うと、必ずひとつ決めることがあります。
"どう管理するか" です。
選択肢は大きく3つ。
一般管理(集金代行)、サブリース(家賃保証)、自主管理。
勧められるまま "家賃保証で安心" の一言で選ぶと、手取りで損していることに後から気づく ── そんなケースが少なくないです。
この記事では、3つの管理方式を手取りの実数値で並べます。
そのうえで、自分の物件の稼働見込みと、自分がどこまで手をかけられるかで選ぶ ── という形に着地します。
著者の立場
ONZA Estate の代表として、好立地物件を中心とした投資用不動産の仲介を行っています。
以前は京都のワンルームマンションデベロッパーで営業をしていました。
販売の現場でも、仲介の現場でも、"サブリースのままでいいのか" "集金代行に切り替えるべきか" という相談を数多く受けてきました。
感覚論で語られがちなテーマですが、実際には数値で比べると分岐点がきれいに見えます。
本記事では、その分岐点を実数値で整理します。
管理方式の違い
まず仕組みを整理します。
一般管理(集金代行・賃貸管理)
入居者募集、契約、家賃集金、クレーム対応、退去対応などを管理会社に委託します。
手数料は家賃の3〜5%程度で、5%前後で見ると大きく外れにくいです。
空室になると家賃は入りません。
サブリース
管理会社が部屋を借り上げて、オーナーに一定の賃料を支払う仕組みです。
入居者がいてもいなくても、契約上はオーナーに賃料が入ります(免責期間を除く)。
その代わり、満室想定家賃の10〜15%程度が管理会社の取り分になります(契約によってはそれ以上になることもあります)。
自主管理
オーナー自身がすべて行います。
手数料はゼロですが、募集・契約・対応の手間と専門知識を自分で負います。
| 項目 | 一般管理 | サブリース | 自主管理 |
|---|---|---|---|
| 空室リスク | オーナー負担 | 契約上は管理会社負担。ただし免責期間・賃料改定・中途解約あり | オーナー負担 |
| 滞納リスク | オーナー負担(保証会社で軽減可) | 契約上は管理会社負担。ただし契約条件による | オーナー負担 |
| 入居者対応 | 管理会社 | 管理会社 | オーナー |
| 募集活動 | 管理会社 | 管理会社 | オーナー |
| 手数料相場 | 家賃の3〜5%程度 | 満室想定の10〜15%程度 | 0% |
それぞれの実数値(相場)
一般管理の数字
手数料:家賃の3〜5%程度
関西(大阪・京都)も5%程度が中心、大阪は競争で3%〜のケースもあります
別途、入居時の広告料(AD)として家賃1〜2ヶ月分が発生することがあります
業務範囲や契約内容によっては別途費用がかかることがあります
サブリースの数字
借上げ賃料:満室想定家賃の85〜90%程度(管理会社の取り分10〜15%程度)
免責期間:契約開始時や入居者退去後に1〜3ヶ月程度設定されることが多いです
賃料改定:通常2年ごとに見直し。借地借家法第32条の借賃増減請求権により、貸主側の増額請求・借主側の減額請求のどちらもあり得ます。サブリースでは、借上げ賃料の減額請求が問題になりやすいです
2020年12月15日から、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に基づくサブリース業者規制が始まりました。
特定賃貸借契約の締結前には、契約内容やリスクについて書面を交付して説明することが義務づけられています。
なお、同法の全面施行は2021年6月15日です。
仕組みや数値を契約前に確認すべき項目として、制度上も明確にされています。
実際に契約する際は、書面で一つひとつ確認することが重要です。
自主管理の数字
手数料:0%
ただし、原状回復・修繕の判断、入居者トラブル対応、家賃督促、契約書作成などを自分で処理する必要があります
国土交通省 "原状回復をめぐるトラブルとガイドライン" では、故意過失は借主、経年劣化・通常損耗は貸主負担が原則 ── ここを理解していないと、退去時に揉めやすいです
※ サブリースの借上げ率・免責期間・改定ルール、一般管理の手数料率や原状回復負担区分は契約ごとに異なります。
以下のモデル試算は "あくまで例" としてご覧ください。
損益分岐
ここが本記事の中心です。
結論を先取りすると、一般管理とサブリースの損益分岐は稼働率およそ90%です。
賃貸需要が太く高稼働を保てる物件なら、一般管理(場合により自主管理)のほうが手取りは多くなりやすいです。
逆に稼働を読みにくい物件では、サブリースの保証料が効きます。
満室想定家賃を月10万円(年120万円)と置いて、3方式の手取りを並べます。
一般管理(手数料5%とする)
手取りは "年120万円 × 稼働率 × 0.95" で計算できます。
| 稼働率 | 手取り(年) |
|---|---|
| 100% | 約114万円 |
| 95% | 約108万円 |
| 90% | 約103万円 |
| 85% | 約97万円 |
| 80% | 約91万円 |
サブリース(借上げ85%とする)
借上げ率を85%とすると、手取りは年約102万円。
免責期間を除けば、空室や滞納があっても契約上は入ります。
自主管理(手数料0%とする)
手取りは "年120万円 × 稼働率"。
手数料分は浮きますが、対応の手間と専門判断を自分で負うことになります。
分岐点はどこか
サブリース(借上げ85%)と一般管理(手数料5%)を比べると、稼働率およそ90%が分岐点になります。
稼働率90%超 → 一般管理の手取りがサブリースを上回ることが多いです
稼働率90%未満 → サブリースの保証が効くことがあります
※ あくまでモデル試算です。
借上げ率(85%か90%か)、手数料率(3%か5%か)、免責期間、原状回復や修繕の負担区分、滞納発生率などで分岐点は前後します。
表面の借上げ額だけで判断せず、契約書の細部まで含めて比較するのが安全です。
好立地と保証料
ここまでの試算からわかるのは、稼働率が高く読める物件ほど、サブリースの "保険料" は割高になるということです。
賃貸需要が太い好立地、たとえば京都駅近・大阪都市部の駅近など、単身者向けの賃貸ニーズが厚いエリアでは、稼働率95%以上を保てるケースもあります。
その水準なら、一般管理の手取りはサブリースを年6万円前後上回ることになります(120万円×0.95×0.95=約108.3万円、サブリース約102万円との差は約6.3万円)。
10年で約60万円、20年で約120万円 ── 長期で見ると差は無視できない大きさです。
さらに、賃貸需要が太い立地は家賃自体が下がりにくい特性も併せ持ちます。
そして投資用物件の売却価格は、買い手である投資家が "想定家賃 ÷ 期待利回り" に近い形で評価額を組み立てることも多いため、家賃水準が売却価格を支える構造になりやすいです。
つまり好立地の物件は、
高稼働を保ちやすい → サブリースの保証料が割高になりやすい
家賃が下がりにくい → 売却価格も維持されやすい
という二重の意味で、サブリースという "保険" の出番が少ないといえます。
参考までに、日本不動産研究所の第53回(2025年10月)不動産投資家調査による期待利回りを挙げておきます。
| エリア | 物件タイプ | 期待利回り |
|---|---|---|
| 東京・城南 | ワンルーム | 3.7% |
| 東京・城南 | ファミリー | 3.8% |
| 大阪 | ワンルーム | 4.3% |
| 京都 | ワンルーム | 4.6% |
これは市場全体の期待利回りを見るための参考値であり、個別の投資用物件の売却価格をそのまま示すものではありません。
都市部の賃貸需要が強いエリアで期待利回りが低めに見られやすい背景には、稼働の読みやすさや家賃の安定性があります。
どの方式が自分に合うか
3方式に "絶対的な勝者" はないです。
稼働見込みと、自分が手をかけられる度合いで決まります。
一般管理が向きやすい人
賃貸需要が太い好立地で、高稼働を保てる見込みがある
手取りを最大化したい
入居者対応や事務作業は管理会社に任せて、手間は抑えたい
好立地物件を持つ多くのオーナーは、この一般管理が現実的な選択肢になりやすいです。
サブリースが向きやすい人
賃貸需要を読みにくい立地、または遠隔地で手をかけにくい物件を持っている
空室や滞納による収支の振れを避けて、毎月の入金額を一定にしたい
その "安心料" として満室想定の10〜15%程度を払うことを納得できる
自主管理が向きやすい人
物件1〜数戸を、自分の生活圏の近くで保有している
時間と賃貸実務の知識をかけられる
手数料分も惜しまず、自分で運営したい
ハードルは上がりますが、好立地で高稼働なら手取りは最も大きくなります。
サブリース自体は、リスクを管理会社に移す仕組みとして合理性があります。
悪役にする必要はないです。
ただし、好立地で高稼働が読める物件で選ぶと、保証料の割高さが手取りに効いてきます。
サブリースを選ぶ/継続する場合は、保証賃料が永続ではないこと、減額請求や中途解除の条件、出口(売却)での扱いを契約前の説明で必ず確認してください。
この深掘りは別記事にまとめています ── 家賃保証30年の罠
実質利回りに与えるインパクト
もう一段、視点を引いて見ます。
物件広告に出ている表面利回りは、満室想定家賃を物件価格で割っただけの数字です。
実際に手元に残るかどうかは、管理方式の選び方で大きく変わります。
例として、物件価格3,000万円・満室想定家賃年120万円(表面利回り4.0%)の物件を考えます。
| 管理方式 | 想定手取り(年) | 想定実質利回り |
|---|---|---|
| 一般管理(5%・稼働95%) | 約108万円 | 約3.6% |
| サブリース(借上げ85%) | 約102万円 | 約3.4% |
| 自主管理(稼働95%) | 約114万円 | 約3.8% |
(固定資産税・修繕積立金・管理費等の経費は除いた粗手取りベースです)
この前提では、管理方式の選択だけで利回りに0.2〜0.4ポイント前後の差が出ます。
融資を組んで長期で持つ前提なら、この差は毎月のキャッシュフローと残債の進み方に効いてきます。
表面利回りと実質利回りの考え方そのものについては別記事で詳しく扱っています ── 利回り表示の見方 ── 表面利回りと実質利回りはこんなに違う
まとめ
3つの管理方式を、手取りの実数値で並べ直しました。
一般管理は、手数料3〜5%程度で、稼働率が高いほど手取りが大きくなる仕組みです
サブリースは、満室想定の10〜15%程度を払って空室・滞納リスクを管理会社に移す "保険" です
自主管理は、手数料0%ですが、手間と専門対応を自分で負います
一般管理(手数料5%)とサブリース(借上げ85%)の損益分岐は、稼働率およそ90%
賃貸需要が太い好立地で高稼働を保てるなら、一般管理(場合により自主管理)のほうが手取りで有利になりやすいです
逆に賃貸需要を読みにくい・遠隔で手をかけられない物件では、サブリースの保証料が "保険" として機能します
大事なのは、表面の保証額や見た目で決めず、自分の物件の稼働見込みと、自分がどこまで手をかけられるかで選ぶことです。
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個別の物件・契約条件・稼働見込みを踏まえて、数字で整理します。
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