"お金を増やすこと" が目的化していませんか ── 目的逆算で考えるマネープラン
2026-05-29
新NISAが始まり、SNSを開けば "FIRE" "億り人" "サイドFIRE" という言葉が並びます。
つみたて投資を数年続けて慣れてきた方ほど、"もっと増やしたい" "次は何に投資しようか" と感じ始めているのではないでしょうか。
その気持ち自体は健全です。
ただ、私が不動産仲介の現場で多くの方とお会いしてきて感じるのは、"お金を増やすこと" そのものが目的化している方ほど、長期で見た満足度が下がりやすいということです。
お金は手段であって、目的ではありません。
いつまでに・何のために・いくら必要かから逆算してマネープランを組み、その差を埋める手段として投資商品を選ぶ ── この順番が逆になると、自分の目的とずれた商品を持ってしまいやすくなります。
不動産投資もその選択肢の1つに過ぎません。
この記事では、ONZA Estateが不動産投資メディアでありながら、あえて目的逆算という上流の話から書きます。
著者の立場
私はONZA Estateの代表として、好立地物件を中心とした投資用不動産の仲介を行っています。
その前は京都のワンルームマンションデベロッパーで営業をしていました。
現場で多くの方とお会いしてきて、ご相談に来る方は、大きく2つに分かれると感じています。
1つは "もっと増やしたい" "効率よく資産を増やしたい" と来られる方。
もう1つは "老後のキャッシュフローを作りたい" "給与所得と分散したい" "相続に残せる資産を持ちたい" と、具体的な目的を持って来られる方です。
後者の方のほうが、購入後・保有中・売却時のいずれの局面でも、長期で満足度が高い実感があります。
理由はシンプルで、判断軸が "自分の目的" にあるからです。
市況や他人の成功談に振り回されにくく、想定外の出来事が起きても "自分の目的に合っているか" で冷静に判断できます。
お金は手段
"お金を増やす" 自体は目的になりません
お金そのものは消費できません。
紙幣もデータも、それ自体では食べられず、住めず、誰かを幸せにもしません。
"何に使うために" を抜きにすると、いくら増やしてもキリがなく、"もっと、もっと" の無限ループに入りやすくなります。
年収1,000万円の方が "3,000万円あれば安心できる" と言い、年収3,000万円の方が "1億円ないと不安だ" と言うのを、私は何度も見てきました。
金額の問題ではなく、目的が定まっていないと "いくらあっても足りない" という感覚に陥りやすいということだと考えています。
投資3〜10年目に潜む罠
投資に慣れてきた時期ほど、リスク管理が緩むことがあります。
現場で見てきた中で、次のようなパターンに気付くことが多いです。
経験を積んだ自信から、初心者の頃にあったリスク管理が緩む
SNS・成功談に過剰反応し、自分の状況と切り離して判断する
短期間で利益を出そうとする傾向が強まる
目的・目標が曖昧なまま、新しい商品に手を出す
実践重視で、立ち止まって整理する時間を取らない
投資を始めたばかりの頃は、"自分はまだよく分からない" という前提があるので、慎重に動きます。
ところが数年経って一定のリターンが出てくると、"自分には分かる" という感覚が芽生え、これが判断を歪めることがあります。
業界のメッセージは "ゴールの先行" が共通している
"FIRE" "億り人" "サイドFIRE" "絶対儲かる" "今がチャンス" ── これらに共通するのは、ゴール(結果)が先に提示されていることです。
"あなたの目的は何ですか" を聞かずに、"これだけ増やせます" "こうなれます" が先に来る。
自分の目的を確認しないまま乗ってしまうと、商品は買えても、自分の人生のどこに位置づくのかが曖昧なまま残ってしまいます。
目的逆算の手順
具体的な手順に落とします。
完璧を目指す必要はなく、紙に書き出すか、メモアプリに入れる程度で十分です。
ステップ1:いつまでに(時間軸)
5年後、10年後、20年後、定年時、相続時 ── どの時間軸の話をしているのかを決めます。
時間軸が違えば、適する手段も変わります。
5年後に使うお金と、30年後に残したいお金は、同じ "資産" でも性質が違うものです。
ステップ2:何のために(目的)
"漠然と豊かに" ではなく、具体的な目的を1つ以上書き出します。
子どもの教育資金
住宅購入の頭金、または住み替え
老後の生活費
親や自分の介護費用
相続に残せる資産
独立・起業の準備
自由時間の確保(労働時間を減らす)
複数あって構いません。
むしろ複数あるほうが普通です。
ステップ3:いくら必要か(必要額)
各目的に対して、相場感のある金額を置きます。
後段で目安データを載せますが、まずは "だいたいこの規模感" をつかむことが目的です。
ステップ4:今いくらあって、いくら足りないか
現状の資産を棚卸しします。
預金・投信・株式・iDeCo・保険・実物資産 ── 全部を一覧にして、目的別必要額との差分を計算します。
ここで初めて、"自分はあといくら必要なのか" が数字で見えてきます。
ステップ5:その差をどう埋めるか(手段の選択)
埋め方は複数あります。
預金で積み立てる
投資商品で運用しながら積み立てる
借入を活用してレバレッジをかける
既存資産を組み替える(流動性の低いものを高いものへ、あるいはその逆)
手段はステップ5で初めて出てきます。
1〜4を飛ばしていきなり手段から入ると、商品の良し悪しで判断することになり、自分の目的とのフィットが見えなくなります。
完璧な数字でなくて構いません。
ざっくりでも書き出すと、"自分が今、何に向かって投資しているのか" が言語化されます。
言語化されると、SNSの強い言葉や他人の成功談に左右されにくくなります。
ライフプラン別の必要額目安
ステップ3で使う相場感のデータを載せておきます。
| 項目 | 金額目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 住宅(新築マンション) | 全国平均 約5,592万円 | 住宅金融支援機構『フラット35利用者調査 2024年度』 |
| 住宅(中古マンション) | 全国平均 約3,033万円 | 住宅金融支援機構『フラット35利用者調査 2024年度』 |
| 介護費用 | 平均総額 約540万円(一時47万円+月9万円×平均4年7ヶ月) | 生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』 |
| 老後の月生活費(夫婦2人) | 基本生活費は月約26万円、ゆとりある生活では月30万円台後半が目安 | 総務省『家計調査』、生命保険文化センター『生活保障に関する調査』 |
参考までに、家計の金融資産(金融資産を保有していない世帯を含む全世帯ベース)は、単身世帯で平均919万円・中央値130万円、2人以上世帯で平均1,940万円・中央値720万円というデータもあります(金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」)。
平均と中央値に大きな差があり、"平均像" は実態を表しにくいことが分かります。
数字はあくまで目安です。
地域・物件・ライフスタイル・家族構成で前後しますし、年金見込み額や退職金の有無で必要額も大きく変わります。
重要なのは、自分のケースに当てはめて "だいたいこの規模感が必要" をつかむことです。
手段の選択肢と特徴
目的と必要額が見えたら、それを埋める手段を選びます。
主な選択肢の特徴を整理します。
| 手段 | 強み | 弱み | 向きやすい目的 |
|---|---|---|---|
| 預金 | 流動性が高い、元本割れしにくい | 名目で増えない、インフレに弱い | 短期の生活防衛、近い時期の支出 |
| 投資信託・株式 | 分散・成長性、新NISAで非課税枠を活用できる | 価格変動リスク、市況の影響を受けやすい | 中長期の積み立て、教育・老後 |
| iDeCo | 掛金の所得控除、運用益非課税。ただし受取時は退職所得または公的年金等として課税対象になる場合がある | 原則60歳まで引き出せない | 老後資金、節税効果も狙う属性 |
| 不動産投資 | 家賃インカム、元本返済の積み上げ、借入を活用した資産形成 | 流動性が低い、初期費用が大きい、空室・修繕リスク | 長期の年金的キャッシュフロー、株式投資や為替投資との分散 |
新NISA制度の開始以降、投資信託や株式は "始めるかどうか" ではなく "どう組み合わせるか" のフェーズに入ってきています。
その上で、目的によっては不動産投資が選択肢に入ってくる、という順番です。
不動産投資の向き不向き
不動産投資は万能ではありません。
合う目的と合わない目的がはっきりしているので、ここを誤解しないことが重要です。
合いやすい目的
老後の年金的キャッシュフローを作りたい ── ローン完済後は家賃の大部分が手残りになる構造で、公的年金との差を補完する役割を果たしやすい
相続を見据えて実物資産で持ちたい ── 不動産は相続時の評価や分け方も含めて、現金とは違う整理が必要になります
給与所得・株式投資や為替投資との分散を効かせたい ── 株式とは値動きの相関が低めで、給与収入とも独立した家賃インカムが入る
インフレヘッジ(実物資産)として持ちたい ── インフレ局面では、立地や賃貸需要がある物件ほど、賃料・物件価格が名目上昇しやすい傾向
合いにくい目的
短期で資産を増やしたい ── 不動産は値動きで短期に資産価値が増加する商品ではなく、家賃インカムと元本返済の積み上げで時間を味方につける投資です
すぐに現金化したい ── 流動性が低く、急いで売ろうとすれば値下げを迫られやすい
リスクを一切取りたくない ── 空室・修繕・金利上昇など、保有期間中のリスクは必ず存在する
この "合う・合わない" の見極めを抜きに、"不動産投資は儲かる/儲からない" の二択で語るのは、議論として粗いと考えています。
不動産投資の構造(家賃インカムと元本返済の積み上げ、借入活用)がなぜ "毎月赤字" でも成立するのかは、なぜ "毎月赤字" でも不動産投資が成立するのか で詳述しています。
ONZA Estateの基本スタンス
不動産投資を選ぶ場合、ONZA Estateの基本スタンスは明確です。
長期保有を前提に、賃貸需要が太い好立地で、目的逆算と整合する物件を選ぶ。
賃貸需要が太い好立地は、家賃自体が下がりにくいだけでなく、売却時の評価額も維持されやすい傾向があります。
投資用物件の買い手は投資家が多く、投資家が大きな判断材料にすることが多いのが "利回り" です。
"想定家賃 ÷ 期待利回り" に近い形で物件評価額が組み立てられることもあるため、家賃水準が売却価格を支える構造になりやすいわけです。
だからこそ、賃貸需要が太い好立地は二重に強く、賃貸需要が薄い物件は二重に弱くなりやすい ── これがONZAの選定軸の核にあります。
なお、相続を目的とする場合は、評価方法や分割方法が個別性の高い論点になるため、税理士等も交えて個別に整理する必要があります。
目的逆算チェックリスト
自分のマネープランを点検する観点を箇条書きにしておきます。
全部にチェックが入る必要はなく、"自分がどこを言語化できていないか" を見るためのものです。
"いつまでに" の時間軸を1つ以上書き出せる
"何のために" の目的を具体的に書き出せる
各目的の必要額を、相場感のある数字で置ける
今の資産と必要額の差を把握できている
差を埋める手段を、目的ごとに分けて考えられる
SNS・知人の成功談ではなく、自分の目的に合わせて判断できる
不動産投資を含む各手段について、"自分の目的に合うか" で評価できる
チェックがつかない項目があったら、そこから埋めていくのが最短ルートだと考えています。
まとめ
"お金を増やす" 自体は目的にならず、手段でしかありません
出発点は目的逆算(いつまでに・何のために・いくら必要か)です
手段は目的に合わせて選ぶもので、預金・投信・株式・iDeCo・不動産投資はそれぞれ向き不向きがあります
不動産投資はその1つで、
・長期の家賃インカム
・元本返済の積み上げ
・株式投資や為替投資との分散
といった目的に合いやすいです
"もっと増やしたい" が一人歩きしていると感じたら、一度立ち止まって目的を書き出すことをお勧めします
ONZA Estateは不動産投資メディアですが、"投資をしろ" だけのスタンスは取りません。
目的逆算の結果、不動産投資が必要ない方には必要ないと伝えますし、合う方には合う物件の選び方を一緒に整理します。
この順番だけは、どの記事でも崩さないようにしています。
目的・時間軸・現状資産を整理したうえで、不動産投資が選択肢に入るか確認したい方は、LINEからお気軽にお問い合わせください。
フラットに整理したうえで、必要なら物件の話、必要でなければその旨をお伝えします。
不動産投資に関するご相談は、LINEからお気軽にどうぞ。毎日7:00〜21:00、無料で対応しています。