旧耐震RCマンションは本当に危険か ── データと構造で冷静に見る

2026-06-16

旧耐震の物件を見ると、安全性に不安を感じる方は多いです。
確かに、地震の被害データを見れば、旧耐震期の建物のほうが被害が大きい傾向は事実です。
ただ、それを理由に旧耐震を一律で切り捨てるのは、判断として少し雑だと思います。

とくにRC(鉄筋コンクリート)のマンションは、木造とは事情が違います。
この記事では、旧耐震のRCマンションが本当に危険なのかを、地震の実データと建物の構造、そして耐震診断の読み方まで踏み込んで、冷静に見ていきます。
私は元ワンルームマンションデベロッパーでトップ営業を務め、いまはONZA Estateの代表として投資用物件を見ています。

なお、旧耐震物件の建替え・再建築・売却や融資といった経済面のハードルは、別記事の築古マンションの見方で整理しています。
本記事では、安全性そのものに絞ります。

新耐震と旧耐震の違い

まず、線引きを押さえます。

新耐震と旧耐震の境目は、建築確認を受けた日が1981年6月1日以降かどうかです。
建物の完成日ではなく、建築確認の日付で決まる点に注意します。
このため、1981年や1982年に竣工した建物でも、建築確認の時期によっては旧耐震扱いになることがあります。

設計で想定している地震の大きさが違います。

旧耐震:震度5強程度の中規模地震で倒壊しないことを想定

新耐震:中規模地震では大きな損傷を受けず、震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しないことを想定

1978年の宮城県沖地震の被害を受けて基準が見直され、新耐震では、建物の規模や構造に応じて、保有水平耐力など大地震時の安全性を確認する考え方が取り入れられました。
大地震を正面から想定するようになったのが、新耐震のいちばんの違いです。

なお、2000年には木造を中心に基準がさらに見直されています。
RCマンションでは、新耐震以降も部分的な改正はあるものの、大きな枠組みは1981年の改正で形作られています。

地震データ

では、実際の地震ではどうだったか。

阪神・淡路大震災(1995年)の建物被害を、内閣府・国土交通省の資料で見ると、統計上、新耐震のほうが被害は小さい傾向が見られます。
木造を多く含む建物全体の統計では、おおむね次のような傾向です。

1981年以前に建てられた建物:大破・倒壊が約3割

1982年以降に建てられた建物:大破・倒壊が約1割

ここで注意したいのは、統計は建築年ベースで集計されており、建築確認日ベースの新旧耐震区分とは完全には一致しない点です。
1981年は旧耐震と新耐震が混在する年であり、資料側の分類に合わせた表記になっています。

また、この数値は木造を多く含む建物全体の統計であり、RCマンション単体の被害率ではありません。
亡くなった方の多くが、建物の倒壊によるものでした。
同じ条件なら新耐震を選ぶほうが安心、という原則は動きません。

RCマンションは木造と違う

ここからが本題です。

同じ阪神・淡路大震災でも、RCの分譲マンションに絞ると、景色が変わります。
兵庫県の分譲マンションのデータでは、被害の状況はおおむね次のようになっています。

旧耐震:無被害が約5割、軽微な被害までを含めると約85%

新耐震:無被害も約5割、軽微な被害までを含めると約93%

つまりRCの分譲マンションは、旧耐震でも大半が軽微な被害までの範囲で持ちこたえています。
木造で「旧耐震が次々と倒壊した」というイメージを、そのままRCに当てはめるのは正確ではありません。

RC造は、設計や管理状態が良ければ、柱・梁・壁で地震力を受け止めやすい面があります。
ただし、構造形式や劣化状況によって差が大きいです。
RCの旧耐震は、一律に危険と決めつけるのではなく、個別に中身を見るべき対象です。

弱点が出やすい構造

とはいえ、旧耐震のRCにも、弱点が出やすいタイプはあります。

せん断補強の不足:1971年の基準改正より前の建物は、柱の帯筋(補強の鉄筋)の間隔が広く、地震で柱が脆く壊れやすい

ピロティ形式:1階が店舗や駐車場で壁が少なく、柱だけで支える構造は、1階に力が集中しやすい

偏心の大きい平面:1階の壁配置が偏っていると、ねじれの力が働きやすい

上下に不連続な壁:途中階で壁の量が大きく変わると、その階に被害が集中しやすい

保有水平耐力が未検証:大地震の力に耐えられるかの計算がされていない

逆に、壁が多くバランスのよい形で、これまで適切に維持されてきた建物は、旧耐震でも相応に粘ります。
同じ「旧耐震RC」でも、中身はかなり違う、ということです。

ピロティと壁量の見方

ピロティ形式は、1階に駐車場や店舗を確保するために壁を抜いた構造です。
上の階に壁があるのに1階だけ柱のみ、という形になりやすく、地震の力が1階に集中します。
阪神・淡路大震災では、ピロティ階が押しつぶされた例が報告されています。

壁量の見方は、図面で1階の耐震壁(構造上の壁)の配置を確認するのが基本です。
外周だけでなく内側にも壁があり、平面的に偏りが少ない建物のほうが、ねじれに強い傾向があります。

せん断補強の有無

せん断補強は、柱の中に巻かれている帯筋(フープ)の間隔と量で決まります。
1971年改正前の建物は、帯筋の間隔が広く、地震で柱が脆性的に壊れる「せん断破壊」のリスクが高いです。
柱の表面に炭素繊維シートを巻く改修や、鋼板で巻き立てる改修で、せん断耐力を補強できる場合があります。

耐震診断の読み方

中身は、感覚ではなく数値で確かめられます。

耐震診断で出るIs値(構造耐震指標)が、その指標です。
国土交通省の基準では、次のように区分されています。

Is値0.6以上:地震に対する倒壊・崩壊の危険性が低い

Is値0.3以上0.6未満:危険性がある

Is値0.3未満:危険性が高い

Is値は重要な目安ですが、建物の形、劣化状況、コンクリート強度、補強計画とセットで見る必要があります。
また、Is値とあわせて、累積強度指標(CT・SD指標)など別の指標も診断書には記載されます。
診断書を読む際は、Is値の数字だけでなく、診断の前提となるコンクリート強度の実測値や、劣化度の評価も合わせて確認します。

耐震改修で何が変わるか

旧耐震でも、耐震診断を受けてIs値を把握し、必要な耐震改修を行うことで、倒壊・崩壊リスクを下げられる場合があります。
ただし、新耐震と同等と見なせるかは、改修内容と診断結果を確認する必要があります。
到達水準は、建物の構造、劣化状況、改修範囲、費用、管理組合の合意状況によって変わります。

建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)のもとで、診断や改修の制度も整っています。
自治体によっては、診断費用や改修費用の補助制度がある場合があります。
自己居住用として購入する場合など、一定要件を満たせば住宅ローン控除等に関係することがありますが、投資用物件では別に考える必要があります。

旧耐震を検討するなら、まず耐震診断の結果と、改修の履歴を確認するのが出発点です。

管理組合で確認する資料

安全性の判断は、診断書だけで完結しません。
管理組合と建物の運用状況を、資料で確認します。

耐震診断報告書:実施されているか、Is値はいくつか、診断者は誰か

耐震改修の履歴:いつ、どの範囲を、どう改修したか

長期修繕計画:耐震改修や大規模修繕が位置づけられているか

修繕積立金の残高:改修や修繕の原資が確保されているか

総会議事録:耐震や修繕に関する議論がされているか、合意形成の状況

建物の劣化診断:コンクリートの中性化、鉄筋の腐食、外壁のひび割れなど

管理組合が機能していれば、診断と改修の議論は議事録に残ります。
逆に、議事録に耐震の話題がほとんど出てこない、長期修繕計画が形だけ、という場合は、いざというときに合意形成が進みにくいリスクがあります。

建物の劣化と耐震性

コンクリートは、時間とともに中性化が進み、鉄筋が錆びやすくなります。
鉄筋が錆びると体積が膨張し、コンクリートを内側から押し割る「爆裂」が起きます。
爆裂が進むと、構造としての耐力が落ちます。

外壁のひび割れや、ベランダの天井のサビ汁、コンクリートの欠けは、劣化のサインです。
内覧時に、外壁や共用部の状態を見ておくと、管理の質が読み取れます。

投資判断のチェックリスト

ここまでを、投資判断の形に落とします。

耐震診断の結果(Is値)と、耐震改修の履歴を確認する

診断書の前提(コンクリート強度の実測値、劣化度の評価)まで読む

ピロティ形式、偏心、上下不連続の壁など、弱点構造に当たっていないかを見る

せん断補強(柱の帯筋)の状況を、改修履歴とあわせて確認する

活断層の近くなど、想定される揺れが大きい地域かを確認する

管理組合が機能し、長期修繕計画に耐震が位置づけられているかを見る

修繕積立金の残高と、総会議事録での議論の質を確認する

建物の劣化状況(外壁のひび割れ、鉄筋のサビ)を内覧時に見る

建替え・再建築・融資・出口の経済面のハードルは別途確認する

耐震診断で倒壊・崩壊リスクが一定程度低いと確認でき、残るリスクが価格に十分織り込まれているなら、旧耐震RCも検討対象になりえます。
耐震診断はリスク評価であり、絶対的な安全保証ではない点には注意します。
逆に、診断もされず弱点構造のまま、価格だけ安いという物件は、安さに飛びつかないことです。

価格にどう織り込むか

旧耐震RCは、新耐震と比べて価格が安く出ることが多いです。
その安さが、診断・改修・将来の建替えや売却の難しさといったリスクに見合っているかを見ます。
株式投資や為替投資と違い、不動産は個別性が強く、同じ「旧耐震RC」でも条件は一つひとつ違います。
都市部の好立地で、診断と改修が進み、管理組合が機能している物件であれば、リスクを織り込んだうえで検討する余地があります。

まとめ

旧耐震RCの安全性を整理します。

新旧の境目は建築確認1981年6月1日。新耐震は大地震を正面から想定している

地震データでは、統計上、新耐震のほうが被害は小さい傾向。同じ条件なら新耐震が安心という原則は動かない

ただしRC分譲マンションは旧耐震でも大半が軽微な被害までで持ちこたえた。木造のイメージで一律に危険視しない

弱点(せん断補強不足・ピロティ・偏心・未検証)に当たるかを見る。中身は物件ごとに違う

耐震診断のIs値で数値化でき、改修でリスクは下げられる場合がある。Is値だけでなく前提も読む

管理組合の機能、長期修繕計画、議事録、劣化状況まで含めて判断する

投資判断は、診断結果・改修履歴・地域リスクを確認し、残るリスクが価格に織り込まれているかで見る

旧耐震RCは、「危険だから一律で避ける」でも「古くても気にしない」でもなく、診断と構造で中身を確かめて判断する対象です。


検討中の旧耐震RCが安全性の面でどうか、耐震診断や改修履歴をどう読むか、価格に見合うかを一緒に整理したい方は、LINEからお気軽にご相談ください。
安全性と経済面の両面から、買ってよい物件かを一緒に見ていきます。

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