建て替え・再建築不可・旧耐震 ── 築古マンションをどう見るか

2026-06-09

築古のマンションを考えるとき、"いざとなれば建て替えればいい"と当てにしがちです。

ただ、マンションの建て替えは、現実にはほとんど進みません。
再建築不可や既存不適格まで含めて、出口(売却)と融資で詰まりやすい論点があります。

この記事では、それらを買う前に理解しておくべきハードルとして整理します。
すべてが即アウトという話ではなく、価格や条件で納得できるかを冷静に見るための材料として読んでください。

建て替えの現実

まず、建て替えの実態から見ます。

国土交通省の公表資料では、2025年3月末時点でマンション建て替えの実績は累計323件、約26,000戸にとどまります(準備・計画中を除いた実施例の累計)。
膨大なマンションのストックから見れば、ごくわずかです。

進みにくい理由は、大きく2つあります。

費用:建て替えると、戻って住むためにまとまった自己負担が出ることが多いです

合意形成:建て替えの決議には、原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上の賛成が必要です

2026年4月施行の建物の区分所有等に関する法律、いわゆる区分所有法の改正では、再生を進めやすくする見直しが入りました。
耐震性の不足など一定の事由がある場合は、建て替え決議の要件が5分の4から4分の3に緩和され、所在のわからない区分所有者について、一定の手続きを経て決議の母数から外せる制度もできました。
ただし、原則の建て替えは引き続き5分の4で、費用と合意のハードルは大きいままです。

つまり、制度が少し動いても、建て替えが現実に進むケースは限られます。
"いざとなれば建て替え"を前提に買うのは、避けたいところです。

購入前チェック

管理組合の長期修繕計画で、建て替え・大規模修繕の議論がどこまで進んでいるか

議事録で、耐震診断・改修や再生検討の履歴があるか

区分所有者の所在状況(賃貸化比率、相続未登記の有無)

再建築不可という落とし穴

次に、そもそも建て替えができない物件があります。

建築基準法では、原則として、敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していることが求められます(接道義務)。
道路は原則として幅員4m以上ですが、2項道路など個別確認が必要なケースもあります。
これを満たさない物件は、原則として"再建築不可"になり、今の建物を壊すと建て直せない可能性があります。

古い住宅地や、路地の奥まった敷地に多いです

一定のリフォームはできることが多いですが、建築確認が必要な増改築や建て替えは原則として難しいです

融資が付きにくく、売るときも買い手が限られます

ただし、隣地の取得や買い増し、セットバック、建築基準法第43条の認定・許可などで再建築の余地が出るケースもあります。
確認するときは、現地の道路種別を役所の建築指導課で照会するのが基本です。

再建築不可は、保有中は気づきにくくても、売却や借り換えのときに重くのしかかります。

既存不適格 ── 建て替えると小さくなる

建て替えはできても、建て替えると今より小さくなる物件もあります。

"既存不適格"とは、建てた当時は適法だったのに、その後の法改正で、いまの基準(容積率・高さ・斜線など)に合わなくなった建物のことです。
違法建築とは違い、既存の建物は適法に存在しています。

問題は、容積率や高さを目一杯使って建てた物件です。
いまの厳しい基準で建て替えると、同じ規模を再現できず、床面積や戸数が減ります(建て縮み)。
戸数が減れば建て替えの採算が合わず、ますます建て替えが進みません。

確認したい資料

検査済証、確認済証

建築計画概要書(役所で取得可能)

用途地域・容積率・高度地区・日影規制などの都市計画情報

京都の物件を例に

例えば、私が扱うことも多い京都の物件では、この既存不適格がとくに効いてきます。

京都市は2007年の新景観政策で、建物の高さやデザインを厳しく規制してきました。
京都市内ではエリアごとに高さ規制が細かく定められ、中心部の一部でも31mなどの上限があります。
容積や高さを使い切った既存マンションは、建て替えると小さくなる可能性が高くなります。

近年は緩和の動きもあります。
2023年4月には、京都駅南側(最大25m→31m)や阪急西院駅周辺(20m→31m)など、駅周辺の一部で高さ規制が緩和されました。
記事公開時点では、京都駅周辺でさらなる高さ規制の見直しも議論されています。
ただし、これは企業誘致や人口流入を狙った一部エリアの話で、世界遺産の周辺など多くの場所は依然として厳しい規制のままです。

京都の築古は、"建て替えても現況を再現できない可能性がある"前提で見て、高さ規制や容積率、緩和エリアかどうかを個別に確認します。

京都で確認すべき情報源

京都市都市計画情報等検索ポータルサイト(用途地域・高度地区・容積率)

京都市の景観政策・眺望景観創生条例の対象範囲

都市計画課・建築指導課での個別照会

旧耐震の融資・出口ハードル

築古を考えるうえで、旧耐震かどうかも重要です。

新耐震との境目は、建築確認を受けた日が1981年6月1日です。
これより前の確認だと旧耐震にあたります。

旧耐震の物件には、出口と融資のハードルがあります。

金融機関、物件状態、借り手属性によりますが、メガバンクでは難しいことが多く、ノンバンクや一部地銀では金利が高くなりやすい傾向があります

実需に売る出口では、住宅ローン控除や【フラット35】について、築年数や耐震基準適合証明書などの条件が論点になり、買い手が限られることがあります

安全性への懸念から、価格交渉も厳しくなりやすいです

旧耐震の出口パターン

耐震基準適合証明書を取得して、実需向けに住宅ローン適用余地を広げる

投資家向けに、現金または投資用ノンバンク融資の買い手を想定して値付けする

立地が太ければ、土地値ベースの買い手(戸建て建築、隣地統合)に出口を求める

旧耐震を全否定するわけではありませんが、耐震診断や改修の有無を確認し、融資と出口のハードルは前提に置いておきます。

東京の都市部だけでなく、京都・大阪・神戸など関西の中心エリアでも、旧耐震の流通価格は同じ立地の新耐震に比べてディスカウントされる傾向があり、買うときも売るときもその差を織り込む必要があります。

判断の軸

ここまで挙げたのは、避けるべき兆候というより、正しく理解しておくべきハードルです。
立地や賃貸需要、供給など、買う前に見たい兆候の全体像は、別記事の
買う前に見抜く「やめとけ物件」の兆候で整理しています。

大事なのは、建て替えを当てにしないことです。
そのうえで、立地・賃貸需要・敷地持分を含む資産性・出口・融資で見ていきます。

買ってよい条件の例

賃貸需要が太く、家賃が下がりにくい立地

建て替え不可・既存不適格・旧耐震・流動性の低さが、価格に十分織り込まれている

耐震診断・改修の履歴が確認でき、管理組合が機能している

投資家向けの融資ルートが現実的に見えている

避けたい条件の例

接道や道路種別が確認できないまま、表面利回りだけで判断する

容積・高さを使い切った既存不適格で、緩和エリアでもないのに"将来の建て替え"を価格根拠にしている

管理組合が機能不全で、長期修繕計画や修繕積立金が実態と乖離している

立地や賃貸需要が太い物件は、家賃が下がりにくく、投資家の利回り評価でも売却価格が支えられやすい面があります。
株式投資や為替投資と比べたときの不動産の強みは、賃料と立地という実体に支えられたキャッシュフローで、これは築古でも残ります。
ただし主役は、こうしたリスクを正しく理解したうえで、価格と条件に納得できるかどうかです。

まとめ

築古・旧耐震まわりの論点を整理します。

マンションの建て替えは現実にはほとんど進みません(累計323件・2025年3月末)。当てにしない

再建築不可(接道を満たさない)は原則として建て替えができず、融資・出口で詰まりやすいです

既存不適格は、建て替えると今より小さくなり、採算が合いにくいです

京都は景観規制で既存不適格が多く、2023年に一部で緩和されたものの、多くは依然厳しい規制のままです

旧耐震は融資・出口のハードルが大きく、耐震適合証明や買い手想定で工夫が要ります

建て替えを当てにせず、立地・賃貸需要・敷地持分を含む資産性・出口・融資で、慎重に判断することが、リスクを抑えるうえで大切です。


築古や旧耐震、再建築まわりが気になる物件を、出口・融資・資産性の観点で一緒に見たい方は、LINEからお気軽にご相談ください。
買う前に構造を理解しておくだけで、避けられるつまずきは多いです。

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