J-REITと現物不動産投資、何が違うのか ── レバレッジ・コントロール・流動性で整理する

2026-06-19

"不動産に投資する"と言っても、入口は一つではありません。

大きく分けて、二つあります。
一つは、J-REIT(不動産投資信託)。
証券化された不動産を、株のように買う方法です。
もう一つは、現物不動産。
物件そのものを買って、自分で貸す方法です。

どちらも、もとをたどれば不動産から家賃を得る点は同じです。
ただ、お金の入れ方も、持ち方も、出方も、まるで違います。
この記事では、両者の差が出る軸で整理します。
先に言っておくと、どちらが上という話ではありません。
何を取りたいかで選ぶものです。
そのうえで、ONZA Estateが好立地物件を中心とした投資用不動産の仲介をしている理由も、軸を並べれば見えてきます。

まず、共通点を押さえる

比較の前に、同じところを先に置いておきます。
ここを混ぜると、判断がぶれます。

両者とも、収益の中心は不動産から生まれる賃料です。
J-REITの分配金も、もとをたどれば主にオフィスビルや住宅、商業施設の賃料などです。
現物の家賃と、根っこは同じインカムです。

だから、どちらも同じ力に揺れます。

不動産市況が悪化すれば、価格(投資口価格・物件価格)は下がりうる

空室が増えれば、収益は痩せる

金利が上がれば、両者とも逆風を受ける

利回りは、どちらも保証されていない

つまり、不動産だから安全、という話ではありません。
J-REITも現物も、変動リスクを負う点は共通です。
ここを踏まえたうえで、違いを見ていきます。

J-REITとは何か

念のため、J-REITの仕組みを短く整理します。

J-REITは、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、住宅などの複数の不動産に投資し、その賃料収入などを投資家に分配する仕組みです。
東京証券取引所に上場していて、株式と同じように市場で売買できます。

特徴的なのが、税の扱いです。
利益の90%超を分配するなどの要件を満たすと、投資法人の段階では法人税が実質的にかからない仕組み(導管性)になっています。
そのぶん、利益が分配に回りやすい構造です。

市場全体の平均的な分配金利回りは、執筆時点(2026年6月)では、東証REIT指数ベースでおおむね4%台前半です。
この利回りも市況によって動くので、最新の数値は日本取引所グループなどの公表データで確認してください。

J-REITは用途で性格が変わる

ひとくちにJ-REITといっても、投資対象の用途はさまざまです。
オフィス、商業施設、住宅、物流施設、ホテルなど、何を中心に組み入れているかで、性格が変わります。

ざっくり言うと、商業施設やホテルなど、景気や消費、観光の動向に連動しやすいタイプは、住宅系より分配金利回りが高めになりやすいです。
テナントの売上に賃料が連動したり、大型テナントが抜けたときの影響が大きかったりするためです。
そのぶん、賃料や稼働の振れも大きく、不安定さが残ります。

これに対して、住宅(レジデンス)を中心とするタイプは、人が住み続けるという需要が土台にあるので、賃料が景気に左右されにくく、収益が安定しやすい傾向があります。
そのぶん、利回りは控えめになりがちです。

つまり、利回りの高さは、その裏にある変動の大きさとセットです。
これは現物でも同じで、安定した家賃を生む住宅系の立地ほど、収益は読みやすくなります。

差が出る軸で整理する

ここからが本題です。
J-REITと現物で、はっきり差が出る軸を表にします。

J-REIT現物不動産
ローンの活用投資家本人は原則現金で購入(投資法人の内部では借入あり)投資家本人がローンを使い、自己資金の何倍も動かせる
コントロール運用をプロに委ねる物件・管理・賃料・リフォームを自分で決める
団体信用生命保険なし投資用ローンに付帯できる商品がある
流動性市場で売買しやすい売却に数ヶ月以上かかることも
最低投資額数万円から属性と物件次第。与信があれば頭金を抑えられるが、諸費用などは必要な場合も
分散一口で複数物件に分散一物件に集中しやすい
手間かからない管理の手間がかかる

この表は、上下で性格が分かれます。
下半分(流動性・最低投資額・分散・手間)は、REITの手軽さです。
上半分(ローン・コントロール・団信)は、現物の作り込みです。
順に見ていきます。

流動性と手軽さ

まず、REITの強みをはっきり認めておきます。

REITは、数万円から買えて、市場が開いていれば売買しやすく、一口で複数の物件に分散され、管理の手間もありません。
運用はプロが担います。
少額で不動産の値動きと分配を受け取りたい、現物不動産より短い期間で現金化したい、手間をかけたくない ── そういう人には、REITは合理的な選択です。

これは、現物にはない明確な強みです。
現物は、ローンの与信や諸費用などの準備が必要で、売却にも数ヶ月以上かかることがあり、管理の手間もかかります。
手軽さと流動性で比べれば、REITに分があります。
ここは正直なところです。

レバレッジ ── 個人がローンを使えるか

一方で、個人投資家にとって、現物にしかない力があります。
ローンを使えることです。

正確に言うと、J-REITも投資法人の内部では借入を使って運用しています。
ただ、投資家本人が物件ローンを組み、自己資金以上の現物を持てる点が、現物ならではの違いです。
現物は、金融機関のローンを使って、自己資金の何倍もの資産を動かせます。
しかも、返済の原資の中心に、入居者からの家賃を充てられます。
家賃で返しながら、毎月の元本返済を通じて、物件価格から残債を引いた純資産が積み上がっていきます。

J-REITは、投資家本人は基本的に現金で買います。
100万円分を買えば、100万円分の不動産に投資したことになります。
これに対して現物は、たとえば自己資金300万円台で、2,000万円を超える物件を持つこともできます。
同じ手元資金でも、投資家本人が動かせる規模がまるで違います。

なぜローンを使うと効くのか。
借入のコストや返済の負担を踏まえても、物件の収益力が十分に残る場合、自己資金あたりのリターンが伸びるからです。
この自己資金効率や、時間まで含めた利回りの見方は、別記事
表面利回りの先 ── CCRとIRRで具体的に扱っています。

ただし、ローンは両刃です。
金利が上がれば返済は重くなり、空室が続けば家賃で返しにくくなります。
借りられるから強いのではなく、家賃で無理なく返せる範囲で借りるから効く、という順番です。

コントロール ── 自分で価値を動かせるか

もう一つ、現物ならではの軸が、コントロールです。

現物は、立地と物件を自分で選び、管理会社や賃料、リフォームの中身まで自分で決められます。
空室が出れば、賃料や募集条件に手を打てます。
良い物件を選び、丁寧に運営すれば、自分の判断が結果に効いてきます。

REITは、運用をプロに委ねます。
手間がかからない裏返しで、中身の物件運営には関与できません。
どの銘柄を買うかは選べますが、その中のビルをどう運営するかは決められません。

自分でコントロールできる範囲に集中したい人には、現物が向きます。
運用はお任せでいい、という人には、REITが向きます。

団体信用生命保険

現物のローンには、団体信用生命保険(団信)を付けられる商品があります。

契約者に万一のことがあったとき、保障の条件に該当すれば、残りのローンが保険で弁済されることがあります。
条件に合えば、残債のない収益物件を家族に残せる可能性があります。
生命保険に近い役割を持つことがある、ということです。
ただし、加入できるか、どこまで保障されるか、金利の条件は、商品によって異なります。
現金で買うJ-REITには、この仕組みはありません。

団信を保障として組み込みたいなら、現物に分があります。
団信を生命保険の代わりとして見る考え方は、別記事
団信のレバレッジで詳しく扱っています。

税のかかり方も違う

税の扱いも、両者で異なります。

J-REITの分配金:一般的に20.315%で源泉徴収され、申告不要や申告分離課税などを選べる。なお、J-REITの分配金は配当控除の対象外

現物の不動産所得:総合課税で、給与などと合算。建物部分の減価償却を計上でき、赤字なら一定の範囲で損益通算できることもある

現物は、建物部分の減価償却を計上できるため、結果として課税所得を抑えられる場面があります。
ただし、土地等の取得に要した負債の利子部分など、損益通算できないものもあります。
税効果は、あくまで副次的なものです。
節税だけを目的に物件を買うのはおすすめしません。
あくまで、家賃で成り立つ収支が土台です。

どちらが自分に向くか

軸を並べると、向き不向きが見えてきます。

REITが向く人:少額から始めたい、すぐ売買したい、手間をかけたくない、複数物件に分散したい、借入を使わずに不動産へ投資したい

現物が向く人:ローンで資産規模を伸ばしたい、物件と運営を自分でコントロールしたい、団信付きの商品を保障として使いたい、家賃と元本返済で長期に資産を積みたい

どちらか一方に決める必要もありません。
流動性や分散はREITで、ローンとコントロールは現物で、と役割を分けて両方持つ考え方もあります。

まとめ

J-REITと現物不動産は、優劣ではなく、役割が違います。

共通点:どちらも収益の中心は賃料。市況・空室・金利の影響を受け、利回りは保証されない

REITの強み:少額・売買しやすい・分散・手間なし。手軽さと流動性で勝る

現物の強み:個人でローンを使えて、運営に自分で関与できる。他人資本で規模を動かし、自分で価値を守れる(団信付きの商品を選べる場合もある)

税も違う:REITは原則20.315%の源泉徴収、現物は総合課税で減価償却・損益通算

選び方:手軽さと流動性ならREIT、ローンとコントロールなら現物。両方を役割で分けてもいい

ONZA Estateが好立地物件を中心とした投資用不動産の仲介をしているのは、ローンを活用し、自分のコントロールで価値を守りながら、家賃と元本返済で時間をかけて資産を積む ── この設計が、長期の資産形成に合いやすいと考えているからです。
ただしそれは、正しく選び、無理なく持てる物件であることが前提です。
立地が弱く、返済に無理があれば、ローンの効果は逆に回ります。
だからこそ、物件選びと収支設計が肝心です。


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