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不動産高騰でもREIT低迷ーー市場創設25年、58銘柄すべてがNAV1倍割れ、成長を阻む制度が足かせ|ONZA的市況ニュース

2026-09-15

不動産高騰でもREIT低迷ーー市場創設25年、58銘柄すべてがNAV1倍割れ、成長を阻む制度が足かせ|ONZA的市況ニュース

記事内容:不動産高騰でもREIT低迷、市場創設25年で58銘柄すべてがNAV1倍割れ

2026.9.15の日経新聞で、日本のREIT(不動産投資信託)市場が長期低迷から抜け出せずにいると報じられました。
現物の不動産価格は高騰していますが、REITはその価値を下回る価格で取引されており、背景には成長を阻む日本特有の構造があると記事は指摘しています。
市場創設から25年、REITは岐路に立っています。

REITは投資家から集めた資金でオフィスや住宅、ホテルなどの不動産を取得し、その賃料収入を投資家に分配する金融商品で、大型不動産を直接購入するのが難しい個人でも、少額からREITに投資することで不動産市場の成長の恩恵を受けられます。
東京都新宿区のホテル、ハイアットリージェンシー東京はジャパン・ホテル・リート投資法人が保有し、大阪・梅田の商業施設HEP FIVE(ヘップファイブ)は阪急阪神リート投資法人が保有者に名を連ねています。
日本では2001年に東京証券取引所がJ-REIT市場を開設し、同年9月に2銘柄が上場、現在は58銘柄が上場しています。
投資法人は配当可能な利益の90%超を分配金に回すなどの条件を満たすことで法人税が免除されるため分配金利回りは比較的高くなる傾向があり、投資家が売買するのは投資法人の投資口で、物件の所有権を直接得られるわけではありません。

2023年以降、REIT市場は異常な状態にあります。
58銘柄の時価総額の合計は16兆円で、保有する不動産価格は取得時ベースで合計約25兆円と、実際の価値を下回る水準で取引されています。
この割安さを示す指標がNAV倍率で、株式市場のPBR(株価純資産倍率)に相当します。
現在のREIT市場ではNAV倍率の1倍割れが常態化し、9日時点で1倍を上回る銘柄は58銘柄中1つもなく、理論上は会社を続けるより解散した方が株主価値が高いと評価されているに等しい状態です。
日本の株式市場は日経平均株価が6月に史上初の7万円台に乗せ、AI銘柄の乱高下を繰り返しながらも高値圏での推移が続き、東証は上場企業に資本効率の改善を促し、TOPIXの銘柄を絞り込む改革を進めるなど市場の姿を変えてきました。

REIT市場は対照的で、割安さに目をつけた投資家の流入は目立たず、再編も広がっていません。
2025年にはシンガポールの投資ファンド3Dインベストメント・パートナーズがNTT都市開発リート投資法人と阪急阪神リート投資法人へのTOB(公開買い付け)を相次ぎ発表し、純投資を目的に投資口(株式に相当)の取得を試みましたが、失敗に終わりました。
日本ではREITそのものは不動産を保有する箱にすぎず、投資信託法で従業員の雇用が禁止されているため、物件の売買や入居者との賃料交渉などは外部の資産運用会社に委託し、運用会社には不動産会社や金融機関、鉄道会社などのスポンサーが出資する仕組みです。
3Dのケースでは買い付けのプレミアム(上乗せ幅)が6〜7%程度と物足りなかった側面もありますが、スポンサーであるNTT都市開発や阪急阪神不動産が投資口の取得に動いたことも大きく、みずほ証券の大畠陽介シニアアナリストは「究極の買収防衛として、スポンサーによる買い増しという禁じ手が許されている」と指摘しています。
25年前、日本の不動産市場はバブル崩壊で凍り付いており、REIT市場の創設には不動産の証券化を通じて少しでも資金を流入させる狙いがありました。
市場を支える投資家には安定した分配金を求める地方銀行が流入し、年金の代わりに生活費の足しを得たい個人が買い手になったため、投資口価格の上昇を狙うよりも安定を求める市場観が形作られました。
REITに詳しい尾本太郎弁護士は、現行制度の下ではスポンサーの垣根を越えた再編が難しいと指摘しています。

米国のREITは異なる発展を遂げました。
M&A(合併・買収)が活発で、割安であれば買収や非公開化によって退出する例もあり、米国REITの時価総額の合計は2020年以降で2割超増えました。
野村資本市場研究所の関雄太シニアフェローは、米国REIT市場の成長は新陳代謝の結果だと指摘しています。
米国ではデータセンターや通信基地局、高齢者施設などのヘルスケアといった新たな分野への投資が進み、近年の市場拡大を支えていますが、日本では制度上の足かせもあり、オフィスなど伝統的な不動産の比重がなお大きい状況です。
日本でもREITを取り巻く前提は崩れ始めており、長期金利が30年ぶりに3%を上回り、利回りだけでは投資家を引き付けられなくなっています。
日本株や海外株と成長性で比較され、投資資金を奪い合う環境にさらされており、四半世紀を経てREIT市場全体を再設計すべき時を迎えていると記事は述べています。

記者の視点として、REITの運用会社も手をこまねいてきたわけではなく、物件改修で賃料を引き上げてインフレ耐性を高めつつ、低利回り物件は売却して投資家への還元にまわしてきました。
不動産証券化協会によると、2025年のREITによる物件譲渡額は2024年から2割増の8246億円と過去最高でした。
それでも急速な金利上昇に対し、個々の努力では市場全体の低迷を覆すには限界があり、上場企業が資本効率改善に向けて変貌を遂げた一方で、REIT市場の骨格は25年前から変わっていません。
米国のREITが時価総額を拡大する転機になったのは1990年代に広がったUPREIT(アップリート)と呼ばれる仕組みで、税制上の優遇措置により優良な不動産をREIT市場に呼び込む経路が広がりました。
日本でもREITによる物件の開発を認めるなど成長資産を組み入れやすくする制度改革の余地があり、尾本弁護士は「備品のレンタルなど賃料収入以外も収益計上できるようにして、収益源を多角化する制度改革が必要だ」と話し、M&Aによる業界再編を望む声も多いと記事は伝えています。

ポイント:REIT市場の現在地

👉 58銘柄すべてがNAV1倍割れ

時価総額の合計16兆円に対し保有不動産は取得時ベースで約25兆円で、9日時点でNAV倍率が1倍を上回る銘柄は1つもありません。

👉 割安でも再編が起きない構造

REITは不動産を保有する箱で、売買や賃料交渉は外部の運用会社に委託し、スポンサーの買い増しが買収防衛として働くため、2025年の3DによるTOBも失敗に終わりました。

👉 安定志向の買い手が市場観を形作った

安定した分配金を求める地方銀行と、生活費の足しを求める個人が買い手となり、価格上昇よりも安定を求める市場観が定着しました。

👉 米国は新陳代謝で拡大、日本は前提が崩れ始めた

米国はM&Aとデータセンターなど新分野への投資で時価総額が2020年以降2割超増え、日本は長期金利が30年ぶりに3%を超えて利回りだけでは投資家を引き付けられなくなっています。

REITと現物の分かれ目:同じ不動産でも価格の決まり方と決定権が違う

記事の核心は、同じ不動産に2つの価格がついている点です。
現物の価格は不動産市場の需給で決まり、高騰しています。
REITの投資口の価格は証券市場の需給で決まります。
長期金利が3%を超えると、低いリスクで得られる収益の選択肢が増えるため、REITにはより高い分配金利回りか成長性が求められ、分配金の増加が追いつかなければ投資口の価格には下押し圧力がかかります。
そこに、地方銀行や個人という安定志向の買い手は価格の上昇を求めず、割安を突く外部の投資家にとってはスポンサーの買い増しが障壁になる、という背景が重なって割安が放置される、という流れです。
NAV倍率は保有不動産の評価額から負債を差し引いた純資産価値との比較で、取得額ベース約25兆円の不動産を持つ市場の時価総額が16兆円にとどまり、すべての銘柄がその1倍を下回る現状は、持ち方の違いから生じる価格の決まり方の差です。

個人が不動産を持つ入口としてREITと現物を比べるとき、分かれ目は、価格は何で決まるか、収益は何から入るか、売却や修繕を誰が決めるか、の3つです。

●価格の決まり方

・REIT:投資口の需給で決まり、今はNAV倍率1倍割れ、つまり負債を差し引いた純資産価値を下回る価格で取引されている

・現物:不動産市場の需給で決まり、今は高騰した価格で買うため、同じ家賃なら利回りは以前より薄くなる

●収益と資金の入れ方

・REIT:配当可能な利益の90%超を分配する分配金が収益で、少額から複数の物件に分散でき、証券口座で売買できる

・現物:入居者との契約に基づく家賃が収益で、借入を使って持てるため自己資金に対する家賃の効率を高められる(借入は変動金利を主軸に、上がっても返せる余力とセット)

●決定権

・REIT:投資主は投資主総会で議決権を行使できるが、個別物件の賃料設定、修繕、売却の判断を日常的に行うのは運用会社(記事が伝えるスポンサーの買い増しは、その判断が投資家の手元にないことの表れ)

・現物:賃料の設定、修繕、売却の時期を所有者が決められ、日々の運営は管理会社に委託できる

REITと現物の違いをレバレッジ、コントロール、流動性の軸で見た整理についてはJ-REITと現物不動産投資、何が違うのか ── レバレッジ・コントロール・流動性で整理するで整理しています。

記事が伝える現物の高騰は、現物を選ぶ側にとっては買値が高いという条件です。
REITが低利回り物件を過去最高の8246億円売却して還元に回しているように、今の市場に出てくる物件には、売り手が利回りの低さを理由に手放したものも含まれます。
確かめる順番は、表示の利回りを購入諸費用と運営費を引いた実質に引き直す、実質利回りと借入金利の差を把握する、駅からの距離と通勤需要で家賃が続く裏付けを見る、の3段階です。
表面利回りと実質利回りの差については
利回り表示の見方 ── 表面利回りと実質利回りはこんなに違うで整理しています。
長期金利の上昇は固定型を中心に借入条件にも影響しうるため、実際に提示される借入金利と返済額を個別に確かめ、金利が上がっても返せる余力をセットにします。

ONZAとしての整理

今回の記事で目を引くのは、58銘柄すべてがNAV1倍割れで、取得時ベース25兆円の不動産が時価総額16兆円で評価されている点です。
同じ不動産でも、持ち方で価格の決まり方が変わります。
ONZAが現物をインカム資産の中心に置くのは、家賃が入居者との契約で入り、賃料、修繕、売却の判断を所有者が持てるためです。
REITの少額、分散、売買のしやすさは、それと別の役割を持つ道具です。
決定権と借入を使いたい場合は現物、少額と分散を優先する場合はREITという役割の違いで選び、両方を持つ組み合わせもあります。

もう一つは、長期金利が30年ぶりに3%を超え、利回りだけでは投資家を引き付けられないという記事の指摘です。
現物も同じ環境にあり、高騰した買値と上昇局面の借入金利のもとで、家賃利回りは以前より薄くなります。
ONZAが駅からの距離と需要の持続性を最初の物差しに置くのは、利回りの数字より先に家賃が続く条件を確かめるためです。
通勤の利便性があり、単身や共働き世帯の需要を確認できる好立地の区分は、家賃を維持しやすい分、堅実な利回りで長く持つ資産として検討しやすく、賃料水準、競合の供給、築年は個別に確かめます。
REITが低利回り物件を売却して還元に回しているのと同じように、現物でも利回りが薄くなった物件を持ち続けるか、売却して次に回すかを所有者が決められます。
この決定権を手元に置いておくことが、REITと現物の分かれ目を個人の規模に置き換えたものです。

まとめ

👉 記事内容の要点

58銘柄のREITは時価総額合計16兆円に対し保有不動産は取得時ベース約25兆円で、9日時点でNAV倍率が1倍を上回る銘柄は1つもない

REITは不動産を保有する箱で売買や賃料交渉は外部の運用会社に委託し、スポンサーの買い増しが買収防衛として働くため、2025年の3DによるTOBも失敗した

地方銀行と個人という安定志向の買い手が市場観を形作って割安でも再編が起きず、米国はM&Aと新分野への投資で2020年以降時価総額が2割超増えた

長期金利が30年ぶりに3%を超えて利回りだけでは投資家を引き付けられず、2025年の物件譲渡額は過去最高の8246億円で、記事は市場全体の再設計を求めている

👉 行動指針

REITと現物を、価格の決まり方、収益と資金の入れ方、決定権の3つで分けて考え、少額と分散を優先するならREIT、決定権と借入を使うなら現物という役割で選ぶ

現物を選ぶ場合は高騰した買値を前提に、表示利回りを実質に引き直し、借入金利との差を把握したうえで、駅からの距離と通勤需要で家賃が続く裏付けを確かめる

借入は変動金利を主軸に、金利が上がっても返せる余力をセットにし、利回りが薄くなった物件を持ち続けるか売却するかの判断を所有者として手元に置く

ご相談について

投資用でご検討の方

REITと現物のどちらが目的に合うかは、資金、決定権、借入の使い方で変わります。
現物でご検討中の物件について、実質利回りと借入金利の差、家賃が続く需要の裏付けまで、一緒に試算いたします。

売却をご検討の方

REITが低利回り物件を売却しているように、利回りが薄くなった物件や住まなくなった家を持ち続けるか手放すかは所有者の判断です。
残債、家賃収入、想定される買い手の属性を並べて、売る・貸す・持ち続けるの選択肢を一緒に確認します。

居住用でご検討の方

住まいは、暮らしやすさと無理のない資金計画で選ぶのが基本です。
金利が動く前提での返済計画も含めて、返せる額を軸に一緒に整理していきましょう。

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