ホルムズ通過のタンカー増、海峡経由の原油は6割まで回復ーー位置信号を切る闇タンカーと瀬取り、WTIは91〜95ドル、HSBCは混乱の新常態を予想|ONZA的市況ニュース
2026-09-28

記事内容:位置信号を切ったタンカーがホルムズ海峡を通過、海峡経由の原油は衝突前の6割まで回復
2026.9.28の日経新聞で、イランが事実上封鎖するホルムズ海峡をひそかに通過する"闇タンカー"が急増し、同海峡を通る原油の供給量が米国とイランの軍事衝突前の6割の水準まで回復したと報じられました。
戦時下でも原油価格が最高値(1バレル約150ドル)の水準まで急騰していない立役者になっていると記事は伝えています。
足元の原油価格は比較的落ち着いています。
国際原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は25日、1バレル91〜95ドル程度で推移しました。
衝突後の高値(119ドル台)から2割程度低く、投機マネーが殺到した2008年の史上最高値(147ドル台)からはさらに遠い水準です。
国際エネルギー機関(IEA)が「史上最大のエネルギー危機」と表現した3月以降、中東情勢は悪化の一途をたどっています。
世界の石油供給の2割が通過するホルムズ海峡の封鎖に加え、7月以降は迂回路の紅海側で親イラン武装組織がタンカーへの攻撃を強め、9月上旬には中東最大の産油国サウジアラビアのパイプラインが攻撃を受けて稼働を停止し、欧州向けの出荷をキャンセルしました。
それでも原油価格が極端に上がっていないのは、船舶自動識別装置(AIS)を切ってホルムズ海峡を通過する闇タンカーの効果だとの見方が広がっています。
国際航路を通るタンカーには、国際海事機関(IMO)によってAISによる位置信号の発信が原則義務付けられています。
船舶同士の衝突を避けたり、管制が通航を制御しやすくしたりするためです。
安全への脅威などの懸念がある場合は緊急措置としてAISを切ることもでき、AISをオフにすればイラン側が位置情報を把握しにくくなり、無人機(ドローン)による攻撃や拿捕のリスクが下がります。
欧州の調査会社ケプラーのデータによると、AISを切ったタンカーの積載量も含め、ホルムズ海峡を通過したとみられる原油は9月に日量936万バレルと、8月から356万バレル増えました。
2月末の衝突後で最大で、衝突前に同海峡を通っていた原油(日量1500万バレル)の6割程度まで回復しています。
ケプラーの鳥潟ゆういプリンシパルマーケットアナリストは「AISを切って海峡を通過し、湾外でアジア向けのタンカーに積み替える動き(瀬取り)は中東からの原油供給を支えている」と話しています。
通航を増やしているとみられるのはサウジアラビアとイラクです。
サウジは衝突後に紅海側からの迂回輸出を増やしましたが、再びホルムズ経由の輸出に力を入れようとしています。
英調査会社アーガス・メディアによると、国有石油会社サウジアラムコは9〜11月に、オマーン沖での瀬取りを経由した原油のスポット(随時契約)の入札を始めました。
これまで原則として、毎月設定する公式販売価格による長期契約での販売しかしてこなかったサウジとしては異例の取引ですが、同海域での引き渡しなら、リスクの高い海峡に入れないタンカーでも受け取れます。
ペルシャ湾の奥に位置するイラクは、衝突前は輸出の9割超をホルムズ海峡経由に頼っていました。
石油輸出国機構(OPEC)のデータでは、イラクの原油生産量は5月に2月比で6割(日量260万バレル)減っています。
シリアやトルコを経由するパイプラインの建設を急ぐものの、現状はホルムズを通じて輸出せざるを得ず、中東メディアによると、8月以降は同国の近海まで取りに来る買い手を対象に1バレルあたり20〜30ドル安く販売しています。
闇タンカーを通じた取引は複雑な積み替えや大幅な迂回を強いられ、運賃が上がります。
英LSEGによると、中東と極東を結ぶ大型オイルタンカー(VLCC、載荷重量約30万トン)の1日あたりの用船料は24日に123万ドル(約1.9億円)と、2月末から5.7倍になりました。
英HSBCは9月上旬、北海ブレント原油の予想価格を2026年10〜12月に平均1バレル95ドル、2027年に同85ドルと、従来の予想から20〜25ドル引き上げました。
HSBCのキム・フスティエ氏は「ホルムズ海峡が半ば恒久的に混乱し、紛争前には戻らない状況が『ニューノーマル(新常態)』になるだろう」と指摘しています。
ポイント:原油の供給と価格の現在地
👉 ホルムズ経由の原油は衝突前の6割まで回復
AISを切った闇タンカーや瀬取りで、9月は日量936万バレルと8月から356万バレル増え、衝突前の1500万バレルの6割程度に戻りました。
👉 WTIは91〜95ドル、衝突後の高値から2割低い水準
紅海でのタンカー攻撃やサウジのパイプライン停止が続く中でも、原油価格は極端には上がっていません。
👉 サウジは瀬取り経由のスポット販売、イラクは値引き販売
サウジアラムコはオマーン沖での瀬取りを経由した入札を始め、イラクは近海まで取りに来る買い手に1バレル20〜30ドル安く販売しています。
👉 運賃は5.7倍、HSBCは予想を20〜25ドル引き上げ
VLCCの用船料は2月末の5.7倍になり、HSBCはブレントを26年10〜12月に95ドル、27年に85ドルと予想し、混乱が新常態になるとみています。
不動産との関係:原油の新常態は、共用部の電気代と修繕の資材に時間差で届く
記事が伝えるのは、闇タンカーと瀬取りでホルムズ経由の供給が6割まで戻り、供給不足への懸念がいくらか和らいで原油価格は落ち着いているものの、HSBCが予想を20〜25ドル引き上げ、ホルムズの混乱が紛争前に戻らない新常態になるとみている構図です。
原油の価格は家賃には直接つながりませんが、建物を維持するコストには、電気代と修繕の資材という2つの経路で、時間差をおいて届きます。
確かめるのは、電気料金に反映される時期と、修繕の見積もりがいつの単価かの2点です。
1つ目は電気代です。
電気料金には燃料の輸入価格を反映する燃料費調整の仕組みがあり、関西電力の場合、原油・LNG・石炭の輸入価格から算定する平均燃料価格の3カ月分が、その3カ月後の月の料金に反映されます。
1〜3月の平均が6月分、7〜9月の平均が12月分という対応です。
原油だけで料金が決まるわけではありませんが、記事が伝える9月の燃料の水準は、LNGや石炭と合わせた平均燃料価格として、12月分以降の電気料金に反映されていく計算です。
関西電力の低圧の料金では、国の電気・ガス料金支援による値引きが2026年8月分から10月分まで適用されています。
区分マンションでは、エレベーター、共用廊下の照明、給水ポンプなどの共用部の電気代は管理組合が管理費から支払い、一棟ではオーナーが直接支払います。
区分なら管理組合の収支報告で共用部の電気代の推移と管理費の残高を、一棟なら共用部の電気代の推移と、共用灯のLED化や人感センサーなど使用量を減らす手当ての余地を確かめておきます。
2つ目は修繕の資材です。
塗料、塩ビの配管、断熱材、屋上のアスファルト防水など、修繕工事で使う資材には石油を原料とするものが多くあり、原油の水準は資材の価格を通じて工事の見積もりに効きます。
HSBCの見立てのように原油が紛争前の水準に戻らないのであれば、修繕の見積もりも紛争前の単価に戻ることを前提にしない方が実態に合います。
区分なら長期修繕計画がいつの時点の単価で作られているかを、一棟や戸建てなら次の外壁や防水の工事に向けて見積もりをいつ取るかを確かめておきます。
修繕積立金と長期修繕計画の見方については大津市の中古マンションは築年数と管理で見るーー修繕積立金・長期修繕計画・認定制度で整理しています。
ONZAとしての整理
今回の記事で目を引くのは、ホルムズ経由の原油の供給が闇タンカーと瀬取りで衝突前の6割まで戻り、WTIが衝突後の高値から2割低い91〜95ドルで推移する一方、HSBCが予想を20〜25ドル引き上げ、ホルムズの混乱を新常態とみている点です。
原油の価格は個人には動かせません。
ONZAは不動産の収益の源泉を家賃に置き、原油のような相場の動きは運営費の側で受け止めて見ています。
家賃収入に対して、管理費、修繕積立金、共用部の電気代などの運営費がどれだけの割合を占めているかを確かめ、燃料費調整が12月分以降に反映されていく冬に向けて、その割合がどう動くかを見ておくことが実務になります。
インフレの局面で家賃と実物資産がどう動くかについてはインフレと不動産 ── 家賃と実物資産は物価にどう効くかで整理しています。
もう一つは、同じコストの上昇が新築の供給にも効く点です。
資材とエネルギーのコストが紛争前に戻らなければ新築の建築費も高止まりし、採算の合わない開発の着工を遅らせる方向に働きうるため、周辺で供給が増える余地は開発計画と着工の状況で確かめます。
駅からの距離、通勤先へのアクセス、単身と世帯の流入、周辺の競合賃料を確認できる好立地の区分は、新しい競合が増えにくい局面では家賃を保ちやすくなりうる一方、共用部の電気代や修繕費には同じコストの上昇が届くため、立地と運営費の両方で見ておきます。
まとめ
👉 記事内容の要点
AISを切った闇タンカーと瀬取りで、ホルムズ海峡を通る原油は9月に日量936万バレルと衝突前の6割程度まで回復した
WTIは91〜95ドルと衝突後の高値から2割程度低く、紅海での攻撃やサウジのパイプライン停止が続く中でも極端には上がっていない
サウジは瀬取りを経由したスポット販売を始め、イラクは近海まで取りに来る買い手に1バレル20〜30ドル安く販売している
VLCCの用船料は2月末の5.7倍になり、HSBCはブレントの予想を20〜25ドル引き上げ、ホルムズの混乱が新常態になるとみている
👉 行動指針
電気料金の燃料費調整は3カ月分の平均燃料価格を3カ月後の料金に反映するため(関西電力なら7〜9月の平均が12月分)、冬の共用部の電気代がどう動くかを管理組合の収支や物件の運営費で確かめる
修繕の見積もりは紛争前の単価に戻る前提を置かず、長期修繕計画の単価の時点と、次の外壁や防水の工事に向けた見積もりの時期を確かめる
家賃収入に対する運営費の割合を確かめ、共用灯のLED化など使用量を減らす手当ても合わせて検討する
ご相談について
投資用でご検討の方
原油の価格は家賃には直接届きませんが、共用部の電気代や修繕費を通じて運営費に届きます。
検討中・保有中の物件について、管理費と修繕積立金の推移、長期修繕計画の単価、家賃収入に対する運営費の割合を一緒に確認いたします。
売却をご検討の方
売却では、管理組合の収支や修繕計画の見直しの状況も買い手の判断材料になります。
お持ちの物件の管理の状況を整理して、売り出しの準備から一緒に進めます。
居住用でご検討の方
マンションを選ぶときは、管理費と修繕積立金の額だけでなく、共用部の電気代や修繕計画がいつの単価で見直されているかも確かめておくと、住んでからの負担の見通しが立てやすくなります。
暮らしに合う住まいと、無理のない資金計画を一緒に整理していきましょう。
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