空き家を放置するとどうなる ── 特定空家・管理不全空家のリスクと固定資産税

空き家は、置いておくだけなら害がないように見えます。
ですが実際には、何もしなくても維持費と税金がかかり続け、傷みが進めば近隣への賠償責任まで生じ得ます。
さらに2023年12月施行の改正空家対策特別措置法で、倒壊しそうな家だけでなく「放置すれば危なくなりそうな家」も行政の指導・勧告の対象になり、放置そのものが制度上のリスクになりました。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、空き家を放置すると何が起きるのかを、制度・税金・責任の面から順に整理します。
不安をあおる意図ではなく、どこまで進むと何が起きるかを知り、早めに動くための材料としてお読みください。
制度の内容は2026年7月時点の情報にもとづくもので、最新は国土交通省・お住まいの市区町村でご確認ください。

放置で起きること——劣化・維持費・防犯防災・資産価値

まず、制度に関わらず起きることから整理します。

建物の劣化が加速する
人が住まない家は換気や通水がされず、湿気やカビ、雨漏りの放置で傷みが早く進みます。
庭木や雑草も伸び放題になり、手入れのハードルは年々上がります。

維持費は住んでいなくてもかかる
固定資産税、火災保険料、通風・清掃や庭木の手入れといった管理の手間・費用は、空き家のままでも毎年かかり続けます。

防犯・防災上の問題
管理されていない空き家は、不法投棄や不審者の侵入、放火のリスクを抱えます。
害獣・害虫のすみかになれば、周辺にも影響が及びます。

資産価値の低下
劣化が進むほど、貸す・売るときの条件は不利になります。
全国の空き家は900万2千戸・空き家率13.8%と過去最高を更新しており(総務省・令和5年住宅・土地統計調査 確報、2024年9月25日公表)、放置期間が長いほど競合の中で選ばれにくくなります。

近隣に損害を与えたときの責任——所有者は「無過失責任」

放置空き家のリスクとして見落とされがちなのが、損害賠償です。

空き家の外壁や瓦が落ちて通行人がけがをした、塀や建物が倒れて隣家を傷つけた。
こうした場合、民法717条(土地の工作物責任)により、所有者は損害を賠償する責任を負います。
この所有者責任には免責の規定がなく、「注意していたから仕方ない」が通用しない無過失責任です。
空き家では所有者が占有者を兼ねることが多く、実際上、責任は所有者に集中します。
台風や大雪の後に瓦や外壁が落ちやすくなるため、遠方の空き家ほど「気づかないうちに危険な状態になっていた」が起こりやすい点に注意が必要です。

管理不全空家——「特定空家の予備軍」も指導・勧告の対象に

2023年12月13日施行の改正空家対策特別措置法で、「管理不全空家」という区分が新設されました。
窓が割れたまま、草木が茂り放題など、このまま放置すれば特定空家になるおそれのある空き家が対象です。
市区町村は管理不全空家に対して指導ができ、改善されなければ勧告ができます。
そして勧告を受けると、後述する固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。
「まだ倒れそうではないから大丈夫」ではなく、管理が行き届いていない段階から制度の対象になった、というのがこの改正のポイントです。

特定空家——4類型と、指導から行政代執行までの流れ

より状態が悪い空き家は「特定空家」に認定されます。
特定空家は、次のいずれかに該当する空き家です。
・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家に対して、市区町村は助言・指導→勧告→命令の順で段階的に措置を行います。
勧告を受けると住宅用地特例が外れ、命令に正当な理由なく違反すると、空家特措法にもとづき50万円以下の過料に処されます。
市区町村の立入調査を拒み、妨げ、忌避した場合も20万円以下の過料の対象です。
それでも改善されない場合は、行政代執行として市区町村が所有者に代わって解体などを行い、その費用は全額所有者に請求されます。
解体の内容やタイミングを所有者が選びにくいまま、費用負担だけが残る重い措置です。

固定資産税はどう変わる——住宅用地特例の解除で最大6倍程度

税金面の影響を整理します。
住宅が建っている土地には固定資産税の住宅用地特例があり、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準が1/6に軽減されています。
「古い家でも建てておけば土地の税金が安い」と言われてきたのはこのためです。
ところが、管理不全空家または特定空家として勧告を受けると、この特例の対象から外れます。
小規模住宅用地の課税標準の軽減が外れた場合、土地の固定資産税額は最大で6倍程度、都市計画税も約3倍に増える可能性があります(実際の税額は自治体の課税内容によって異なります)。
「放置して建物を残しておけば節税になる」という考え方は、勧告を受けた時点で成り立たなくなりました。
制度の運用や対象は自治体・時点で変わるため、最新は国土交通省・お住まいの市区町村の公式情報でご確認ください。

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放置を避ける動き方——管理・貸す・売る・解体

リスクを避ける方法は、突き詰めると「管理する」か「動かす」かの二択です。
・自分で管理する(定期的な換気・通水・手入れ)
・貸す(賃貸需要のある立地なら家賃収入を得ながら傷みも防げる)
・売る(現況・更地・古家付き土地・買取から選ぶ)
・解体する(老朽化が進んでいる場合)
遠方で通えない場合は管理代行サービスという手もあり、売り方の詳細や更地にした場合の税金は別記事で解説しています。
相続した空き家なら、相続登記(2024年4月から義務化・取得を知った日から3年以内・過去分は2027年3月31日まで)を先に済ませておくと、どの選択肢にも動きやすくなります。
どれを選ぶかは立地と建物の状態しだいですが、共通するのは、放置を長引かせず方向性を決めることです。

まとめ

空き家の放置は、劣化と維持費、近隣への無過失の賠償責任、そして管理不全空家・特定空家の指定から固定資産税の増加・過料・行政代執行へと、段階的にリスクが積み上がっていきます。
逆に言えば、管理か活用か売却かを早めに決めて動けば、これらの大半は避けられます。
「まだ大丈夫」のうちに、ご家族で方向性を話し合うことが何よりの対策です。

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