借地権・再建築不可の家を売るには ── 地主の承諾・接道義務と売り方の選択肢

「借地権の家だから」「再建築不可だから」売れない──と決めつける必要はありません。どちらも買い手が限られやすい物件ではありますが、仕組みを知れば売り方の選択肢はいくつもあります。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、借地権の売却(地主の承諾・譲渡承諾料・承諾が得られないときの手続き)と、再建築不可物件の売却(接道義務の仕組み・例外の道・売り方)を整理します。
制度・法律の内容は2026年7月時点のものです。個別の契約・法務の判断は弁護士・司法書士に、建築の可否は自治体にご確認ください。

借地権とは・再建築不可とは──売却前に確認すること

この記事で扱う2つの物件は、売りにくさの理由がそれぞれ違います。
借地権とは、建物の所有を目的に土地を借りる権利のことです(借地借家法。地上権または土地の賃借権で、実際の借地の多くは賃借権です)。土地は地主のもの・建物は自分のもの、という状態で、売却には「地主との関係」という固有の論点が加わります。
再建築不可の家は、土地も建物も自分のものですが、法令上の制限で建物を建て替えられない敷地です。買主が「建て替えできない・ローンを使いにくい」ため、買い手が限られます。
共通する出発点は、思い込みではなく書類と調査で現状を確認することです。
・借地:土地賃貸借契約書(期間・地代・譲渡や建替えの特約)と登記事項証明書。権利が賃借権か地上権か、契約の種類(旧法借地権・普通借地権・定期借地権)もここで確認します
・再建築不可:公図・測量図と、接道の状況(現地・自治体調査)
以下、それぞれの仕組みと売り方を見ていきます。

借地権を売却するには──地主の承諾が前提

借地権の家の売却には、はっきりしたルールがあります(2026年7月時点。以下は実務上の借地の多くを占める土地賃借権の場合です)。
・地主の承諾が必要:賃借権の譲渡には賃貸人(地主)の承諾が必要です(民法612条)。借地上の建物を売ると借地権も一緒に移るため、家の売却=借地権の譲渡として承諾の対象になります
・無断譲渡はできない:承諾を得ずに譲渡すると、契約解除の原因になり得ます。売却を考えたら、早い段階で地主に相談するのが実務の基本です
・譲渡承諾料の慣行:承諾の際には譲渡承諾料(名義書換料)を支払う慣行があり、一般に借地権価格の10%前後が目安とされます。法律上の義務ではなく慣行のため、契約書の定めや地域・事情によって変わります
・承諾が得られないとき:地主に不利になるおそれがないのに承諾してもらえない場合は、裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てる制度があります(借地借家法19条・借地非訟と呼ばれる手続きです)。時間と費用がかかるため、弁護士に相談したうえでの選択肢です
このほか、買主が住宅ローンを使う場合は抵当権設定への地主の協力、建替え前提の買主なら建替え承諾も論点になります。地主との関係を整えながら進めることが、借地権売却の中心です。

借地権の売り方──4つの選択肢

売り先の選択肢を整理します。どれが合うかは、地主の意向と物件の条件次第です。

売り方内容注意点
第三者に売る仲介で一般の買主に売却する地主の承諾と承諾料が前提。買主のローン利用に地主の協力が必要な場合がある
地主に買い取ってもらう借地権を地主に売却し、土地を完全所有権に戻す地主に買い取る意向・資金があるかによる。交渉は査定をもとに
地主と一緒に売る(同時売却)借地権と底地(借地が設定された土地の所有権)をまとめて第三者に売却し、代金を分ける買主は完全な所有権を取得できるため需要が広がる。地主との調整・分配の合意が必要
底地を買い取ってから売る地主から底地を買い取り、完全所有権にしてから売却する資金が必要だが、物件の価値・売りやすさは上がる。価格交渉と資金計画が前提

地主との協力関係が築けるほど、選択肢は広がります。まず地主の意向を確認し、複数の売り方で査定を取って比べるのが着実です。

再建築不可とは──接道義務の仕組み

再建築不可の理由は、建築基準法のルールにあります(2026年7月時点)。
・接道義務:建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接していなければなりません(建築基準法43条・原則)。火災時の避難や緊急車両の進入を確保するためのルールです
・再建築不可となる敷地:この接道義務を満たさない敷地(道路に接していない・接する幅が2m未満・接する道が建築基準法上の道路でない等)は、今の建物はそのまま使えても、建て替えができません
・例外の道もある:接道義務を満たさない敷地でも、建築基準法43条2項の認定・許可により建築が認められる場合があります(特定行政庁=建築基準法に基づく建築行政の権限を持つ行政庁による認定、または建築審査会の同意を得た許可)。可能性があるかは、自治体の建築指導部門等での事前相談で確認できます
売却の前に「本当に再建築不可なのか」「例外の可能性はないのか」を自治体で確認しておくと、売り方の選択肢と価格の見立てが変わります。思い込みで安く手放す前に、まず調査です。

再建築不可の売り方──4つの選択肢

再建築不可の家の売り先も、複数あります。

売り方内容注意点
隣地の所有者に売る隣の土地と一体になれば接道を満たし、隣地所有者にとって利用価値が生じることがある相手が限られるため時間がかかることも。打診は不動産会社を通すと進めやすい
接道を確保してから売る隣地の一部を買い取る・借りる等で接道義務を満たし、再建築可能にして売る測量・交渉・費用がかかる。かけた費用を売値で回収できるかの見極めが必要
現況のまま住む・貸す需要に売る建て替えず、リフォームして住む・貸す前提の買主(実需・投資家)に現況で売る建て替え不可・ローンを使いにくい分、価格は抑えめになりやすい。現況と修繕履歴の説明が丁寧なほど売りやすい
専門の買取業者に売る再建築不可を扱う買取業者に直接売却する早く手放せる一方、価格は期間・確実性との兼ね合いで仲介と差が出やすい。複数社で比較を

再建築不可の物件は、買主がローンを使いにくく建て替えもできないため、価格の面では条件が不利になりやすいのは事実です。ただ、それは「買い手がいない」ではなく「買い手の探し方が変わる」ということです。隣地・実需・投資家・買取と、当てる先を変えながら広げていきます。

売り方の選択や査定の取り方は、LINEでご相談ください。物件の状況に合わせて確認すべき項目を整理できます。

進め方──現状確認から査定まで

実際に動くときの順番です。
・書類と現状を確認する:借地なら土地賃貸借契約書(期間・地代・譲渡や建替えの特約)と登記事項証明書。再建築不可なら公図・測量図と、自治体(建築指導部門等)での接道・再建築可否の確認
・関係者の意向を確認する:借地なら地主に売却の意向を伝え、承諾・買い取り・同時売却の可能性を探ります。再建築不可なら隣地所有者への打診も選択肢に
・複数の売り方で査定を取る:仲介での売却と買取の両方、借地なら売り方4パターンを見比べて、価格と手間・時間のバランスで選びます
・専門家に相談する:借地の法務は弁護士・司法書士、建築の可否は自治体、税金は税理士。仲介会社には借地・再建築不可の取引経験を確認します
特殊な物件ほど、「調べてから動く」の順番が結果を分けます。焦って1社の言い値で決めず、選択肢を並べてから判断してください。

まとめ

借地権・再建築不可の家の売却は、次のように整理できます。
・借地権の売却:土地賃借権の譲渡には地主の承諾が必要(民法612条)。譲渡承諾料は借地権価格の10%前後が目安の慣行。承諾が得られないときは裁判所の許可の制度(借地借家法19条)もあるが、まず地主との相談から
・借地の売り方は4つ:第三者へ/地主に売る/地主と同時売却/底地を買い取って完全所有権化。地主との協力で選択肢が広がる
・再建築不可の理由は接道義務:幅員4m以上の道路に2m以上(建築基準法43条)。43条2項の認定・許可の可能性は自治体で確認できる
・再建築不可の売り方は4つ:隣地へ/接道を確保して/現況のまま実需・投資家へ/買取業者へ。買い手の探し方を変えて広げる
・共通の順番:書類と現状の確認→関係者の意向→複数の売り方で査定→専門家に相談
売りにくさには必ず理由があり、理由が分かれば打ち手も決まります。まず契約書と接道の確認から始めてください。

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