相続した空き家を売る ── 3,000万円特別控除の要件・手続き・税金

相続した空き家を売ると決めたとき、まず知っておきたいのが「被相続人居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」です。
使えれば譲渡所得から最大3,000万円を差し引け、税負担が大きく変わります。
ただし要件は細かく、適用には期限があり、別の特例との選択も絡みます。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、相続した空き家の売却にしぼって、控除の要件・売り方・手続き・税金を実務目線で整理します。
なお、本記事の税制情報は2026年6月時点の国税庁情報等にもとづくもので、適用可否や最新の期限・必要書類は国税庁・自治体・税理士にご確認ください。
また、売却は「貸す・自分で住む・解体」と比べたうえで選ぶのが前提で、ここではその「売る」を決めた後の話を扱います。

3,000万円特別控除とは——譲渡所得から最大3,000万円

相続した空き家を売って利益(譲渡所得)が出たとき、一定の要件を満たせば、その譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です(国税庁・被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)。
適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。
令和6年1月以降の譲渡では、その家屋・敷地を相続した相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額の上限は2,000万円になります(2人以下は最大3,000万円のまま)。
控除を使って譲渡所得がゼロになる場合でも、確定申告は必須です。

適用要件——家屋・売却・期限をチェック

要件は大きく「家屋」と「売却」に分かれます。
【家屋の要件】
・昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
・区分所有建物登記がされた建物(マンション等)でないこと
・相続開始の直前に、被相続人がひとりで居住していたこと
・被相続人が老人ホーム等に入所していた場合も、要介護認定等を受け、入所後に賃貸などへ使っていないなど一定の要件を満たせば対象
【売却の要件】
・相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
・売却代金が1億円以下であること
・相続のときから売るときまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
とくに「一度でも貸すと使えなくなる」点は重要で、貸す選択とは両立しません。
「いずれ売るかもしれない」なら、貸す前にこの控除と比べておくことが大切です。

全体の流れは、相続登記→査定・媒介契約→売り方を決める→確認書を取る→確定申告、という順です。
以下で、売り方・手続き・税金の要点を順に見ていきます。

控除が使える3つの売り方

控除を使うには、売り方が決まっています。
・家屋を耐震改修し、現行の耐震基準を満たして家屋ごと売る(確認書の様式1-1)
・家屋を取り壊し、更地にして敷地を売る(様式1-2)
・2024年1月以降の譲渡は、買主が引渡し後の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う形でも可(様式1-3)
3つ目は令和6年の改正で加わった方法で、売主が改修や解体をしなくてよくなり、使いやすくなりました。
どの方法でも、次に挙げる確認書が必要です。

手続き——確認書の取り方と確定申告

控除を受けるには「被相続人居住用家屋等確認書」が要ります。
これは空き家の所在地の市区町村役場(建築・住宅・空き家対策などの担当課)で取得します。
確定申告で税務署に出す書類ですが、発行するのは税務署ではなく市区町村である点に注意してください。
主な必要書類は次のとおりです。
・確認申請書(売り方に応じて様式1-1〜1-3)
・被相続人の除票住民票の写し
・相続人の住民票の写し
・売買契約書の写し
・登記事項証明書
・電気・ガス・水道の閉栓証明や現況写真など、空き家だったことを示す書類
・耐震改修証明書(改修した場合)または解体証明書(取り壊した場合)
必要書類は自治体や売り方によって追加されることがあり、交付までは2週間程度が目安ですが、確定申告の時期は窓口が混み合い1か月以上かかることもあります。
なお、確認書は要件の一部を確認する書類で、特例の適用を確約するものではなく、最終的な適用判断は確定申告時に税務署が行います。
申告は売却した翌年の2月16日から3月15日に行い、控除で譲渡所得がゼロになる場合も申告が必要です。

必要書類は自治体や売り方で変わるため、早めの確認が安心です。
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譲渡所得税と取得費加算——どちらが有利か

譲渡所得税は「売却価格−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で求めた譲渡所得に対してかかります。
譲渡費用には、仲介手数料、売買契約書の印紙代、売却のための取壊し費用などが含まれます。
取得費が分からない場合は売却価格の5%を取得費にできますが(概算取得費)、その分だけ譲渡所得が大きくなりやすいため、購入時の資料が残っていないか先に確認しておくとよいです。
税率は、譲渡した年の1月1日時点の所有期間で決まり、相続では被相続人が取得した日を引き継ぎます。
そのため多くは所有期間5年超の長期譲渡(税率20.315%)に当たり、5年以下の短期譲渡(39.63%)より負担が軽くなります。

相続した財産を売るときには、もう一つ「取得費加算の特例」があります。
相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年(おおむね相続開始から3年10か月)以内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に加えられ、譲渡所得を減らせる制度です。
ただし、3,000万円特別控除とこの取得費加算は併用できず、どちらか有利な方を選びます。
目安として、取得費に加算できる相続税が大きい場合は取得費加算、譲渡所得が3,000万円の範囲に収まり控除でゼロにできる場合は3,000万円控除が有利になりやすい、という関係です。
判断は個別の数字しだいなので、税理士に試算してもらうのが確実です。

売却の進め方——相続登記から引渡しまで

売却の流れは次のとおりです。
・相続登記(名義変更)を済ませる(2024年4月から義務化・取得を知った日から3年以内)
・境界や権利関係を確認し、複数社に査定を依頼する
・媒介契約を結び、販売活動を行う
・買主と売買契約を結び、決済・引渡しをする
名義が被相続人のままでは売れないため、相続登記は最初に済ませます。
控除の3年の期限も相続開始日から進むので、売ると決めたら早めに動くことが大切です。
適用の可否や有利不利は数字で変わるため、確認書の取得や申告とあわせて、税理士・不動産会社に相談しながら進めると確実です。

まとめ

相続した空き家の売却では、3,000万円特別控除を使えるかどうかで、税負担や売却後に残る金額に影響します。
押さえどころは、家屋と売却の要件を満たすか、令和9年12月31日までの期限に間に合うか、取得費加算とどちらが有利か、そして確認書をそろえられるかです。
貸す・住む・解体とも比べたうえで「売る」を選ぶなら、要件と期限を早めに確認し、専門家と進めるのが後悔しない近道です。

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