家を売ったときの税金と特例まとめ ── 3,000万円控除・軽減税率・譲渡損失
家の売却で気になるのが「税金はいくらかかるのか」です。
先に全体像を言えば、課税されるのは「売却価格」ではなく「利益(譲渡所得)」に対してで、税金がかかるのは利益が出たときだけです。しかもマイホーム(自宅)の売却には利益を大きく圧縮する特例がそろっており、課税がゼロになるケースも多くあります。逆に損失が出た場合にも、税負担を軽くできる特例があります。
「売ったら大きな税金が来るのでは」という漠然とした不安は、①利益が出るか②特例が使えるか、の2段階で確認すれば具体的な数字に変わります。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、譲渡所得の基本の計算、利益が出たときの特例(3,000万円控除・軽減税率・買換え特例)、損失が出たときの特例、住宅ローン控除との関係、確定申告までを一枚地図として整理します。
内容は国税庁の公表情報に基づく2026年7月時点のものです。特例には適用期限・要件があり、税額は個別事情で変わるため、最終確認は税理士・税務署へお願いします。
基本の計算──譲渡所得と長期・短期
利益(譲渡所得)は次の式で計算します。
・譲渡所得=売却価格−(取得費+譲渡費用)
・取得費:買ったときの価格や購入費用(建物は減価償却後)。分からない場合は売却価格の5%を概算取得費にできます
・譲渡費用:仲介手数料・印紙税など売却にかかった費用
税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間で変わります(国税庁)。
・所有5年超(長期譲渡所得):20.315%
・所有5年以下(短期譲渡所得):39.63%
相続した家は、被相続人(親など)が取得した時期と取得費を引き継ぎます。なお、相続した実家・空き家の売却には、この記事で扱う自宅の特例とは別の特例(相続空き家の3,000万円特別控除・相続税の取得費加算)もあるため、該当する方は税理士にあわせて確認してください。
ここまでが土台で、次の特例がこの「譲渡所得」や「税率」を軽くする仕組みです。
利益が出たときの特例──3,000万円控除・軽減税率・買換え
マイホーム(居住用財産)の売却で利益が出たとき、主な特例は次の3つです。
| 特例 | 内容 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除。多くの自宅売却で課税がゼロになる基本の特例 | 自分が住んでいる(住んでいた)家の売却。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却。親子・夫婦など特別な関係への売却でない等 |
| 10年超所有の軽減税率 | 3,000万円控除後の課税譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の税率が14.21%に下がる(超える部分は20.315%)。3,000万円控除と併用できる | 売却した年の1月1日時点で家屋・土地とも所有期間10年超。3,000万円控除の要件を満たすこと |
| 特定の買換え特例 | 売却益への課税を、買い換えた新居を将来売るときまで繰り延べる(非課税になるわけではない) | 所有10年超・居住10年以上・売却価格1億円以下など。3,000万円控除・軽減税率とは選択適用(併用不可)。適用期限あり |
※国税庁タックスアンサー No.3302・No.3305・No.3355(2026年7月時点)
イメージをつかむため、3,000万円控除の試算例を挙げます。
○前提:売却価格4,000万円、取得費2,500万円、譲渡費用150万円
○計算:譲渡所得=4,000万円−(2,500万円+150万円)=1,350万円
○結果:3,000万円控除後の課税譲渡所得は0円(1,350万円≦3,000万円)
※要件を満たし特例を使えた場合の一例です。実際の適用可否・税額は税理士・税務署にご確認ください
基本の考え方は、「まず3,000万円控除、所有10年超なら軽減税率も併用」が出発点になりやすく、買換え特例は課税の繰延べ(先送り)である点を理解したうえで選ぶ、という順番です。
買換え特例や各特例の適用期限は延長の有無が年度で変わるため、使う年の最新情報を必ず確認してください。
損失が出たときの特例──損益通算と繰越控除
売却で損失(譲渡損失)が出た場合も、要件を満たせば税負担を軽くする特例があります(国税庁 No.3370・No.3390、2026年7月時点)。
損益通算とは、譲渡損失を給与所得など他の所得と相殺することで、その年の所得税・住民税を減らせる仕組みです。相殺しきれない分は、翌年以後3年間繰り越せます(繰越控除)。
特例は2類型あります。
・買い換える場合の特例:自宅を売って新居に買い換えたときに使える型。新居に10年以上の住宅ローンを組むこと等が要件です
・住宅ローンが残っている場合の特例:売却額がローン残高を下回ったとき(オーバーローン)に使える型。対象になるのは、譲渡損失と「ローン残高−売却額」のいずれか少ない方です
いずれも所有期間5年超などの要件と適用期限が定められています。
期限の延長の有無を含め、最新の適用可否は国税庁・税理士に確認してください。
ローンが残る家の売却の実務は、別記事(住宅ローンが残っている家を売る)でも詳しく整理しています。
住宅ローン控除との関係──併用の考え方
住み替えでは、売却側の特例と新居の住宅ローン控除の関係に注意が必要です。
・3,000万円特別控除・軽減税率・買換え特例といった「利益側」の特例を使うと、新居の住宅ローン控除は併用できない場合があります
・一方、「損失側」の譲渡損失の特例は、住宅ローン控除と併用できる扱いとされています
どちらを使う方が有利かは、売却益の大きさ・新居のローン残高・控除期間で変わり、単純にどちらが得とは言えません。
住み替えで利益が出そうな場合は、売却の前に「特例を使うか、ローン控除を取るか」を税理士・税務署に確認しておくと判断しやすくなります(適用関係の詳細は国税庁の案内をご確認ください)。
確定申告を忘れずに──特例の適用は申告が条件
実務でいちばん多いつまずきが確定申告です。
この記事で挙げた特例は、いずれも売却した翌年の確定申告が適用の条件です。
・3,000万円控除で税額がゼロになる場合も、申告して初めて適用されます
・損失側の特例(損益通算・繰越控除)も申告が条件で、繰越を続ける年は連続して申告が必要です
・申告には、売買契約書(購入時・売却時)、譲渡費用の領収書、住民票関係の書類などを使います。適用する特例ごとの必要書類は国税庁の案内で確認できます
取得費の分かる書類(購入時の契約書など)は税額を大きく左右するため、捨てずに保管しておきましょう。
申告を忘れると特例を使えないため、売却が決まった段階で翌年の申告までをスケジュールに入れておいてください。
特例の使い分け──確認する順番
最後に、自分のケースでどの特例を見ればよいか、確認の順番を整理します。
・利益が出そうな場合:まず3,000万円特別控除の要件を確認→所有10年超なら軽減税率の併用を確認→住み替えで新居のローン控除も使いたい場合は、特例とどちらを取るか比較(買換え特例は繰延べである点を理解したうえで選択肢に入れる)
・損失が出そうな場合:買い換えるなら買換え型、ローンが残るならオーバーローン型のどちらに当たるかを確認→損益通算・繰越控除の要件を確認
・どちらの場合も:適用期限の延長の有無と細かな要件を国税庁の最新情報で確認し、翌年の確定申告をスケジュールに入れる
この順番で見れば、「税金がいくらかかるか」はおおよそ見積もれます。あとは個別の数字を当てはめて、最終判断を税理士・税務署に確認するだけです。
売却益や特例の当てはまりを確認したい場合は、LINEで物件と状況をお送りください。確認すべき項目を整理できます。
まとめ
家を売ったときの税金は、次の順で確認すれば整理できます。
・利益が出るかをまず計算する:譲渡所得=売却価格−(取得費+譲渡費用)。税率は所有5年超20.315%・5年以下39.63%
・利益が出たら特例を当てる:基本は3,000万円控除、所有10年超なら軽減税率(6,000万円以下14.21%)を併用。買換え特例は繰延べであることを理解して選択
・損失が出ても特例を確認する:買換え型とオーバーローン型の2類型で、損益通算+3年繰越が可能な場合があります
・住宅ローン控除との併用関係と、翌年の確定申告を忘れない
特例には期限・要件があり、延長の有無も年度で変わります。最終判断は必ず国税庁の最新情報と税理士・税務署で確認してください。
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