家を売るときの必要書類 ── 権利証をなくしたときの対処まで

家の売却では、意外なほど多くの書類を使います。そして書類の中でいちばん質問が多いのが「権利証が見当たらない」です。
結論から言えば、権利証は再発行されませんが、なくしても家は売れます。決められた代替の手続きがあるからです。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、売却の必要書類を段階別に整理し、権利証(登記識別情報)の基礎、なくしたときの3つの方法、税金に直結する取得費の書類、準備の段取りまでをまとめます。
制度の内容は2026年7月時点のものです。登記の個別手続きは司法書士に、税は税理士にご確認ください。

必要書類の全体像──段階別に見る

売却で使う主な書類を、使う場面ごとに整理します。

段階主な書類補足
査定・売出し時登記事項証明書(あれば)・固定資産税納税通知書・間取り図や仕様書手元になくても査定は始められる。正確な情報があるほど査定の精度が上がる
売買契約時実印・印鑑証明書・本人確認書類・収入印紙登記で使う印鑑証明書は発行後3か月以内のものが必要。取得のタイミングは不動産会社・司法書士の案内に従うと確実
決済・登記時権利証(登記識別情報通知または登記済証)・実印・印鑑証明書・固定資産評価証明書・住民票(登記上の住所と現住所が違う場合)・売却代金の受取口座の情報評価証明書などの取得時期は司法書士・不動産会社の案内に従って準備する
確定申告時購入時の売買契約書・領収書、売却時の契約書・費用の領収書取得費の証明は税額に直結(後述)

物件の種類によって加わる書類もあります。
・戸建て・土地:建築確認済証・検査済証、測量図・境界確認書
・マンション:管理規約、長期修繕計画や管理費・修繕積立金の資料
すべてを最初に揃える必要はありません。ただ、「どこに何があるか」を売出し前に確認しておくと、契約から決済までがスムーズになります。

権利証(登記識別情報)の基礎──再発行されないが、なくしても売れる

権利証まわりの基礎を整理します(2026年7月時点)。
・権利証とは:不動産の登記名義人であることを示す書類の通称です。一般に「権利証」と呼ばれるものには、現在の「登記識別情報通知」(12桁の符号が記載された目隠しシール付きの通知書)と、以前の制度で交付された紙の「登記済証」があります。2005年施行の不動産登記法改正で登記済証から登記識別情報に変わりましたが、改正前に取得した不動産の登記済証は今も有効です
・再発行されない:登記識別情報・登記済証は、紛失・盗難などどんな理由でも再発行されません
・なくしても所有権は失わない:権利証をなくしても、不動産の所有権や登記記録上の権利には影響しません(法務局の案内でも明示されています)
・権利証だけでは登記できない:売却に伴う名義の登記では、実印・印鑑証明書なども含めた確認が行われます。権利証を拾った第三者が、それだけで勝手に名義を移せるわけではありません
つまり、「なくした=大変なことになる」ではありません。売却の決済で権利証を出せない場合の代替手続きが法律で用意されているので、次で説明します。

権利証をなくしたときの3つの方法

権利証を提供できない場合の登記手続きは、3つあります(不動産登記法23条・2026年7月時点)。

方法内容特徴
事前通知制度登記申請後、法務局(登記官)が売主本人に本人限定受取郵便等で通知し、2週間以内に間違いない旨を申し出ることで登記が実行される費用はかからないが、登記の完了が事後になるため、代金支払いと同時に確実な登記を求める売買の決済では使いにくい
司法書士等による本人確認情報の提供司法書士等が売主本人と面談し、本人確認書類をもとに「本人確認情報」を作成して法務局に提出する売買の実務で最も使われる方法。費用は5万〜15万円程度が目安(事案・依頼先で異なる)
公証人による認証売主本人が公証役場に出向き、本人確認に関する認証を受ける手数料は1件3,500円と低額。本人が公証役場に出向く手間がある

売買の決済は「代金の支払いと登記の準備を同時に行う」ため、その場で確実性を担保できる本人確認情報の提供が実務では中心です。
大事なのは段取りです。紛失に気づいたら、早めに不動産会社・司法書士に伝えてください。早めに伝えることで、売却スケジュールに合わせて代替手続きを準備できます。本人確認情報の作成には面談などの準備が必要なため、決済日が近い場合は早急に司法書士へ確認してください。

権利証の有無が分からない場合や書類の確認は、LINEでご相談ください。状況に合わせて必要な書類のリストを整理できます。

取得費の書類は税金に直結──購入時の契約書を探す

書類の中で、金額への影響がいちばん大きいのが購入時の売買契約書です。
・売却の利益(譲渡所得)は「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で計算します。購入時の契約書・領収書は、取得費を証明する書類です
・契約書がなく取得費が分からない場合、売却金額の5%を取得費とみなす扱い(概算取得費)になります(国税庁No.3258)。実際の購入額がもっと高ければ、その分利益が大きく計算され、税負担が増える場合があります
・契約書が見つからない場合も、購入代金の振込記録(通帳)、住宅ローンの契約書や返済予定表、購入時のパンフレットなど、周辺資料で実際の取得費を立証できるケースがあります。あきらめる前に税理士に相談してください
売却を考え始めたら、権利証と一緒に「購入時の書類一式」も探しておく──これが税金面でいちばん効く準備です。詳しい税金の仕組みは別記事(家を売ったときの税金と特例まとめ)で整理しています。

準備の段取り──いつ・何を揃えるか

時系列での動き方です。
・売出し前:権利証の所在と、購入時の書類一式を確認します。見つからなければこの時点で不動産会社に伝えます(代替手続きの段取りを早めに組めます)
・売出し中:戸建て・土地は測量図・境界確認書の有無を確認します。境界が不明確な場合の対応は時間がかかるため、早めの着手が安全です
・契約前:実印・印鑑証明書・本人確認書類を準備します
・決済前:住所変更がある場合は住民票等を準備し、司法書士の案内に沿って登記書類を整えます
・売却後:確定申告に向けて、売却時の契約書・費用の領収書を保管します
書類の準備は、売却活動そのものと並行して進められます。「全部揃ってから相談」ではなく、「相談しながら揃える」で問題ありません。

まとめ

家を売るときの書類は、次のように整理できます。
・段階別に押さえる:査定時は少なくてよい。契約時は実印・印鑑証明、決済時は権利証と登記書類、申告時は購入時の契約書
・権利証は再発行されないが、なくしても売れる:所有権は失わず、事前通知制度・司法書士の本人確認情報(5万〜15万円程度が目安)・公証人の認証(1件3,500円)の3つの代替手続きがある(2026年7月時点)
・売買の実務では本人確認情報が中心:決済の確実性のため。紛失に気づいたら早めに不動産会社・司法書士へ
・税金にいちばん効くのは購入時の契約書:なければ概算取得費(売却金額の5%)となり税負担が増える場合がある。周辺資料での立証も税理士に相談
・段取りは「相談しながら揃える」:売出し前に権利証と購入時書類の所在確認から
書類は売却の壁ではなく、段取りの問題です。まず手元の確認から始めてください。

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