住み替えの進め方 ── 売り先行と買い先行、どちらから始めるか
住み替えを決めたとき、最初の分かれ道が「今の家を売るのが先か、新居を買うのが先か」です。
住み替え(買い替え)の進め方には売り先行と買い先行があり、それぞれ向き不向きはあるものの、どちらが正解と決まっているわけではありません。
大事なのは、自分が何を優先したいか──資金の確実性か、仮住まいの回避か、新居選びの自由度か──を先に決めることです。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、売り先行と買い先行の違い、4つの軸での比較、優先順位別の選び方、つなぎの手段(買い替え特約など)、実務の手順までを整理します。
制度は2026年7月時点の内容で、費用などの数字は一般的な目安です。個別の資金計画・税務は金融機関・税理士にご確認ください。
売り先行と買い先行とは──どちらが正解でもない
まず言葉の整理です。
・売り先行:今の家の売却を先に進め、売却価格と引渡し日を確定させてから(または目処を付けてから)新居を購入する進め方
・買い先行:新居を先に確保してから、今の家の売却を進める進め方
どちらも広く使われている進め方で、優劣はありません。
また実際には、「売りに出しながら新居も探す」という併走で進むケースが多く、売り先行・買い先行はきれいに二分されるものではなく「どちらに軸足を置くか」の話です。
そのうえで、軸足の置き方で何が変わるのかを、次の4つの軸で見ていきます。
4つの軸で比べる──売り先行と買い先行
同じ軸で両者を並べます。
●資金計画
・売り先行:売却額を踏まえて新居の購入予算を固めやすくなります
・買い先行:売却額が未確定のまま購入するため、資金の余力と売却見込みの確認がより重要になります
●住まいの移行(仮住まい=一時的に暮らす賃貸住宅などへの引越し)
・売り先行:引渡しまでに新居が決まらないと、仮住まいと2回の引越しが必要になることがあります
・買い先行:新居の入居時期を合わせられれば、直接引っ越して仮住まいと2回の引越しを避けやすくなります
●売却の余裕
・売り先行:期限に追われず売れるため、価格交渉で焦りが出にくい形です
・買い先行:新居の支払いが始まると住居費が二重になり得るため、売却を急ぎたくなりやすい形です
●新居選び
・売り先行:引渡し期限までに探す時間の制約があり、希望の物件に出会えるかはタイミング次第です
・買い先行:期限に追われず選べる一方、その間の資金負担を許容できることが前提になります
こうして並べると、売り先行は「お金の確実性」、買い先行は「住まい選びと移行のスムーズさ」に強みの重心があることが分かります。
優先順位で選ぶ──何をいちばん大事にするか
進め方は、記事が決めるものではなく、あなたの優先順位から決まります。対応関係は次のとおりです。
・資金の確実性を最優先したい:売り先行が向きます。売却額を確定させてから、無理のない新居予算を組めます
・仮住まいと2回の引越しを避けたい:買い先行が向きます。売り先行でも、引渡し時期を長めに設計する・引渡し猶予(決済・引渡しの後、引越しまでの数日を買主と合意して住み続ける調整)を使うことで仮住まいを回避できる場合があります(詳しくは住みながら売る記事で解説しています)
・新居をじっくり選びたい:買い先行が向きます。ただし資金に余裕があることが前提です
・売却価格をできるだけ落としたくない:売り先行が向きます。売り急ぎの値下げ圧力を受けにくくなります
また、前提条件として効いてくるのが「残債と手元資金」です。
住宅ローンの残債が多く、売却代金を新居の資金に充てる必要があるなら、売り先行を軸に検討しやすくなります(つなぎの手段や資金調達の可否も含めて設計します)。
逆に、手元資金に余裕があり二重の住居費に耐えられるなら、買い先行の選択肢が広がります。
優先順位と資金の前提、この2つを突き合わせるのが選び方の本筋です。
つなぎの手段──買い替え特約・引渡し猶予・ローン
売りと買いのタイミングのずれを埋める実務の手段も知っておくと、選択肢が広がります。
| 手段 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 買い替え特約 | 新居の購入契約に「自宅が期限までに一定額以上で売却できなければ白紙解除できる」条項を付け、買い先行の資金リスクを抑える | 新居の売主の合意が必要で、売主は白紙解約のリスクを負うため応じてもらえないことも多い。期限・売却条件・解除時の手付金の扱いは契約前に確認 |
| 引渡し時期の調整・引渡し猶予 | 契約から引渡しまでを長めに設計し、足りないときは決済後数日〜1週間程度の引越し猶予を買主と合意する(売り先行で仮住まいを避ける手段) | 買主・買主側金融機関の承諾が前提。猶予中の取り決めは特約に明記 |
| つなぎ融資 | 自宅の売却代金が入るまでの短期の借入で、新居の支払いを先行させる | 金利は住宅ローンより高めの傾向。取扱金融機関が限られる |
| 住み替えローン(買い替えローン) | 残債と新居の資金をまとめて借りる | 借入額が大きく審査条件は金融機関次第。残債が多い場合は早めの相談が現実的 |
いずれも「必ず使える」ものではなく、相手方や金融機関の条件次第です。
使える手段を早めに確認しておくと、進め方の設計が現実的になります。
売り先行か買い先行か、物件と資金の前提で迷う場合は、LINEで状況をお送りください。進め方の整理ができます。
実務の手順──残債確認からスケジュール設計まで
どちらに軸足を置く場合も、手順は共通です。
・住宅ローンの残債を確認する(返済予定表・金融機関のWebで正確に)
・複数社の査定で売却見込み額を把握する(査定額は保証ではなく意見価格です)
・残債・手元資金・見込み額を並べて、優先順位を決める
・進め方(売り先行・買い先行・併走)を選び、媒介契約を結ぶ
・売却活動と新居探しを連携させる(売却の引渡し日と新居の入居日をできるだけ近づける交渉が、仮住まい・二重負担を減らす要になります)
売却と購入を同じ不動産会社に依頼すると、引渡し日程の調整など連携が取りやすくなる場合があります。
スケジュールの目安として、売却は査定から引渡しまで3か月〜半年程度かかることが多いため(物件条件で変わります)、住み替え全体では半年〜1年のスパンで計画を組むと余裕を持てます。
費用と税金の注意──仮住まい・特例の適用関係
最後に、見落としやすいお金の注意点です。
・仮住まいの費用:売り先行で仮住まいが必要になった場合、賃貸の初期費用・家賃・2回分の引越し費用・家財の一時保管料などがかかります。金額は物件と期間次第なので、可能性がある場合は早めに概算を見ておきましょう
・二重の住居費:買い先行では、売却までの間、今の家と新居の費用が重なる期間が生じ得ます。何か月まで許容できるかを先に決めておくと、売却価格の判断がぶれにくくなります
・税金の特例の適用関係:自宅売却の3,000万円特別控除と、新居の住宅ローン控除は、併用できない場合があります。どちらを使う方が有利かは売却益とローン残高で変わるため、住み替えでは事前に税理士・税務署へ確認するのが安全です(国税庁)
お金の全体像は「売却の手取り+手元資金−新居の総費用−移行コスト」で見ます。
この式に仮住まい・二重負担・税金を織り込んで初めて、売り先行と買い先行を同じ土俵で比べられます。
まとめ
住み替え・買い替えの進め方のポイントは3つです。
・優先順位から決める:資金の確実性・仮住まい回避・新居選びの自由度・売却価格のどれを大事にするかで、売り先行か買い先行かの軸足が決まります。実際は併走で進むことも多く、二分法で悩みすぎる必要はありません
・残債と手元資金を先に確認する:売却代金を新居に充てる必要があるなら売り先行を軸に検討しやすく、資金に余裕があるなら買い先行の選択肢が広がります
・つなぎの手段を知っておく:買い替え特約・引渡し時期の調整・つなぎ融資などは、相手方や金融機関の条件次第で使える調整弁です。早めに確認して設計に織り込みます
進め方に正解はありませんが、「優先順位→資金の前提→手段」の順に整理すれば、自分に合う道筋は見えてきます。
住み替えの進め方・売却と購入の段取りのご相談は、LINEからお気軽にお問い合わせください。
残債と資金の前提を踏まえて、売り先行・買い先行どちらの設計が合うか一緒に整理いたします。
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