離婚で家を売却するには ── 財産分与・名義と住宅ローン・進め方の整理
離婚にあたって、いちばん大きな財産である家をどうするか──手順と確認項目を整理することから始めるのが着実です。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、離婚時の家の売却と財産分与について、基本ルール、名義とローンが離婚で自動には変わらないこと、家の扱いの3つの選択肢、税金、ペアローン・連帯保証の注意点、売却して分ける場合の流れまでを実務中心にまとめます。
制度・法律の内容は2026年7月時点のものです。財産分与の協議や税の個別判断は、弁護士・税理士にもご確認ください。
財産分与の基本──2分の1が基本・請求期間は5年に
まず土台となるルールです(2026年7月時点)。
・財産分与とは:離婚した一方が相手方に財産の分け方の清算を求められる制度です(民法768条)。婚姻中に夫婦で築いた財産が対象で、家や預貯金の名義がどちらになっているかは問いません
・割合は2分の1が基本:2026年4月1日施行の改正民法で、寄与の程度が明らかに異なる場合を除き相等しいものとする「2分の1ルール」が明文化されました
・対象外の財産もある:結婚前から持っていた財産や、相続・贈与で得た財産(特有財産)は原則として分与の対象になりません。実家を相続していた場合などはここに当たります
・請求期間は5年に延長:財産分与を請求できる期間は、改正民法で離婚から2年→5年に延長されました(2026年4月1日以後に成立した離婚に適用。それより前の離婚は2年のままです)
家は夫婦の財産の中でも大きく、かつ現金のように割れない資産です。だからこそ、次の「現状把握」から始めます。
名義とローンは離婚では変わらない──最初に確認する3点
大事な前提がひとつあります。離婚届を出しても、家の登記名義・住宅ローン契約・連帯保証は自動には一切変わりません。それぞれ別の手続きが必要です。
そこで、話し合いの前に次の3点を確認します。
・登記名義と持分:法務局で登記事項証明書(登記簿謄本。不動産の権利関係の公的な記録)を取得し、単独名義か共有名義か、持分割合を確認します
・ローンの残高と契約形態:金融機関の残高証明書等で残債を確認し、契約が単独債務か、ペアローン・連帯債務か、連帯保証人は誰かを把握します
・家の査定額:複数社の査定で売却見込み額を把握します。残債と比べて、売却でローンを完済できるか(アンダーローンか、オーバーローンか)が分かります
この3点が揃うと、「家を売るといくら残るのか(足りないのか)」という共通の数字を土台に話し合えます。
数字で確認できる材料を先に揃えておくと、その後の協議を進めやすくなります。
家をどうするか──3つの選択肢
家の扱いは大きく3つに分かれます。それぞれの内容と注意点です。
| 選択肢 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 売却して現金で分ける | 家を売り、ローンを完済した残りを財産分与のルールに沿って分ける | 分けやすく、名義やローンの関係も同時に整理しやすい。ローン完済できるか(残債と査定の比較)の確認が前提 |
| どちらかが住み続ける | 住む側が家を取得し、相手の取り分を代償金(相手の取り分に相当するお金)などで精算する | 名義変更やローンの引き継ぎには金融機関の承諾・審査が必要。住まない側の名義・保証が残ると後々のリスクになりやすい |
| 賃貸に出す | 売らずに貸して家賃収入を分ける・ローン返済に充てる | 共有のまま貸すと管理や修繕の意思決定を離婚後も共同で続けることになる。取り決めを書面に残す前提で。ローンが残る家を貸す場合は金融機関への確認も必要 |
どれが正解ということはなく、住宅の状況(残債・査定)、子どもの環境、双方の資金力で決まります。
決める材料として、次に税金とローンの扱いを押さえておきます。
税金──渡す側と受け取る側で扱いが違う
財産分与と家にかかわる税金の基本です(国税庁・2026年7月時点)。
・家そのものを財産分与として渡す側:分与した時の時価で譲渡したものとされ、購入時より値上がりしていれば譲渡所得の課税対象になり得ます(国税庁No.3114)。住んでいた家なら、離婚成立後の分与・売却であれば3,000万円特別控除が適用され得ます(離婚前の配偶者への譲渡は対象外)
・財産分与を受け取る側:原則として贈与税はかかりません。夫婦の財産関係の清算・生活保障のためのものだからです。ただし、もらいすぎと認められる部分や、税金逃れ目的と認められる離婚の場合は例外的に課税されます(国税庁No.4414)
・分与で家を受け取った人が将来売るとき:分与を受けた日に、その時の時価で取得したことになります(取得費・所有期間の起点。国税庁No.3114)
・家を売却して現金で分ける場合:売却時の譲渡所得は通常の売却と同じ扱いで、住んでいた家なら3,000万円控除の対象になり得ます
「家のまま渡すか、売って現金で分けるか」で税の扱いが変わるため、大きな含み益がありそうな場合は特に、実行前に税理士へ確認してください。
ペアローン・連帯保証──「自動では外れない」に注意
ローンを二人で組んでいる場合の注意点です。
ペアローン・連帯債務・連帯保証は、離婚しても自動では外れません。完済まで返済義務・保証責任が続きます。「相手が住み続けるから」と名義や保証をそのままにすると、将来相手の返済が滞ったときに請求が来る形が残ります。
整理する主な方法です。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 売却してローンを完済する | 売却代金で完済し、抵当権を抹消。名義・保証の関係も同時に整理される | 残債と査定の比較が前提。完済に足りない場合は不足分の設計が必要 |
| 借り換え(単独ローン化) | 住み続ける側が単独で新たなローンを組み、既存ローンを完済する | 単独の返済能力での審査がある。諸費用もかかる |
| 債務者・保証人の変更 | 免責的債務引受(今の債務者を返済義務から外し、別の人が債務を引き受ける方法)や保証人の差し替えを金融機関と交渉する | 金融機関の承諾・審査が必要で、簡単ではない前提で早めに相談 |
住み続ける選択をする場合も、「ローンと保証をどう整理するか」までセットで決めることが、離婚後のトラブルを防ぐ要点です。
売却して分ける場合の流れ──5ステップ
・現状把握:前述の3点(名義・残債・査定)を揃えます
・方針と条件の合意:売ること、最低売却価格、費用の負担、代金の分け方を夫婦で合意します。共有名義の場合、物件の売却には双方の同意が必要です(詳しくは別記事「共有名義の家・土地を売るには」で整理しています)
・合意を書面にする:財産分与の内容は離婚協議書にまとめ、可能なら公正証書(公証役場で作成する公的な文書)にしておくと、支払いが滞った場合などに備えられます
・売却の実行:不動産会社と媒介契約を結び売却活動へ。契約・決済には名義人全員の実印・印鑑証明などが必要で、ローンは決済時に完済し抵当権を抹消します(ローン中の売却の実務は別記事「住宅ローンが残っている家を売る」で整理しています)
・完済できない場合:オーバーローンのときは、不足分の扱いを金融機関・弁護士と相談しながら設計します。オーバーローン自体は珍しいことではなく、まず差額の正確な把握が出発点です
離婚成立の前後どちらで売るかはケースによりますが、財産分与・税金の扱いに関わるため、タイミングは弁護士・税理士に確認しながら決めるのが安全です。
家の査定や、売却・残債整理の見通しは、LINEでご相談ください。状況に合わせて確認すべき項目を整理できます。
まとめ
離婚時の家の売却と財産分与は、次の順で整理できます。
・財産分与の基本:婚姻中に築いた財産は名義を問わず対象で2分の1が基本(2026年4月施行の改正民法で明文化)。請求期間は離婚から5年(施行後の離婚の場合)
・名義とローンは自動で変わらない:登記名義・持分/残債と契約形態/査定額の3点をまず確認し、数字を土台に話し合う
・選択肢は3つ:売却して現金で分ける/どちらかが住み続ける/賃貸に出す。状況に合わせて選ぶ
・税金は立場で違う:渡す側は譲渡所得(離婚後なら3,000万円控除もあり得る)、受け取る側は原則贈与税なし(2026年7月時点)
・ペアローン・保証は外す設計まで:売却完済・借り換え・免責的債務引受のいずれも金融機関の承諾が必要。早めに相談
大きな決断が重なる時期だからこそ、家のことは数字と手順で確認しながら進めてください。
家の売却・住み替えのご相談は、LINEからお気軽にお問い合わせください。
名義・残債・査定の整理から、売却までの段取りを一緒に確認いたします。
購入・賃貸のご相談も承っています。
ONZA Estate | 滋賀・京都エリアの不動産仲介