共有名義の家・土地を売るには ── 全員同意の原則とまとまらないときの選択肢
相続した実家が兄弟の共有名義になっている、夫婦で半分ずつの名義で家を買った──共有名義の不動産は、こうした形で身近に生まれます。
いざ売ろうとしたとき最初につまずくのが、「自分ひとりの判断では物件を売れない」という共有ならではのルールです。
本記事では、ONZA Estate代表の飯田の視点から、共有名義の基本、物件全体を売るときの全員同意の原則、共有持分だけを売却する場合との違い、売却の進め方、税金(3,000万円控除の扱い)、共有者間で意見がまとまらないときの選択肢、相続共有の整理までをまとめます。
制度・法律の内容は2026年7月時点のものです。個別の判断は司法書士・税理士・弁護士など専門家にもご確認ください。
共有名義とは──持分という「割合の権利」
共有名義とは、1つの不動産を複数人がそれぞれの持分(もちぶん)で所有している状態です。
持分は「割合の権利」であって、「この部屋は自分のもの」という場所の区分ではありません。持分2分の1なら、物件全体に対して2分の1の権利を持っている、という意味です。
共有名義が生まれる典型は2つあります。
・相続:遺産分割で実家を相続人の共有にした場合や、分割協議がまとまる前の状態(法定相続分での共有)
・共同購入:夫婦や親子が資金を出し合い、それぞれの負担額に応じた持分で登記した場合(ペアローンなど)
共有そのものが悪いわけではありません。ただ、売却などの場面では単独名義にない手順が必要になります。その中心が、次の「全員同意の原則」です。
全体を売るには全員の同意が必要──持分だけなら単独で売れる
共有名義の売却には、はっきりした原則があります(2026年7月時点)。
●物件全体を売る場合
・共有者全員の同意が必要です。民法では、共有物に変更を加える行為は他の共有者の同意なしにはできないと定められており(民法251条)、物件全体の売却はこれに当たります。1人でも反対すれば、全体の売却はできません
●自分の持分(共有持分)だけを売却する場合
・他の共有者の同意は不要で、単独で売却できます(確立した取り扱いです)。ただし「他人と共有状態の権利」を買う形になるため一般の買い手は限られ、価格も物件全体を売って持分割合で分けた金額より低くなりやすいのが実情です
つまり、経済的に有利なのは「全員で全体を売って代金を分ける」形です。
だからこそ、共有名義の売却は「全員の合意をどう整えるか」が実務の中心になります。
売却の進め方──5つのステップ
全員で売る場合の流れです。単独名義との違いを中心に押さえてください。
・持分と共有者を確認する:法務局で登記事項証明書(登記簿謄本。不動産の権利関係の公的な記録)を取得し、共有者全員の氏名と持分割合を正確に確認します。「誰がどれだけ持っているか」の認識ずれを最初になくします
・全員の意思を確認する:売る・売らないだけでなく、最低いくらなら売るか(価格の下限)まで話し合っておくと、後の値下げ判断で揉めにくくなります。合意内容は書面に残しておくと安心です
・媒介契約を結ぶ:不動産会社への売却依頼(媒介契約)は、共有者全員が売主として結ぶのが原則です
・売買契約・決済:契約書への署名・捺印、決済・登記には共有者全員の実印・印鑑証明書などが必要です。遠方などで立ち会えない共有者は、委任状で代理を立てることができます
・代金と費用を分ける:売却代金は持分割合で分配し、仲介手数料などの費用も同じ割合で負担するのが基本です。持分と違う割合で分けると、差額が贈与とみなされ贈与税の対象になる場合があるため注意してください
手順自体は通常の売却と同じで、「全員分の意思確認と書類」が加わるだけです。共有者が多い・遠方にいる場合は、書類のやり取りの時間も見込んで早めに動きます。
税金──3,000万円控除は共有者それぞれに
売却で利益(譲渡所得)が出た場合の税金は、共有者ごとに計算します(国税庁・2026年7月時点)。
・売却価格や取得費・譲渡費用も原則として各自の持分に応じて整理し、譲渡所得を持分割合で各自が計算します。確定申告も一人一人が行います
・住んでいた家の売却なら、要件を満たす共有者はそれぞれが最高3,000万円の特別控除を使えます(国税庁No.3308)。控除額は「全員で3,000万円」ではなく「適用できる1人につき最高3,000万円」です
・注意点として、敷地だけを共有していて家屋を所有していない人は、原則としてこの控除の対象になりません
・相続した空き家を売る場合には、別の特例(相続空き家の3,000万円特別控除)もあります。要件が細かいため、該当する方は税理士に確認してください
夫婦共有のマイホームなら、二人とも要件を満たせば合計で最大6,000万円まで控除できる計算になり、共有が税務上プラスに働く場面もあります。
個別の取得費の整理や特例の適用可否は、税理士・税務署にご確認ください。
まとまらないときの選択肢──話し合いから分割請求まで
共有者の意見が揃わない場合の選択肢を整理します。まず試すべきは、売却の条件(価格・時期・分け方)を具体的な数字にして話し合うことです。反対の理由が「売りたくない」ではなく「安く売られそうで不安」なら、査定データで解消できることもあります。
それでもまとまらない場合の手段です。
| 手段 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 共有者間で持分を売買する | 売りたい人の持分を、残りたい共有者が買い取る(またはその逆) | 価格は査定をもとに決める。親族間でも安すぎる価格は贈与とみなされる場合がある |
| 共有持分のみを第三者に売却する | 自分の持分だけを単独で売る。買い手は持分を扱う不動産会社などが中心になる | 価格は低くなりやすい。他の共有者と新たな共有関係が生じるため、事前に共有者へ相談しておく方が円満に進みやすい |
| 共有物分割請求 | 共有状態の解消を求める手続き。各共有者はいつでも請求できる(民法256条)。協議でまとまらなければ調停・訴訟に進むことがあり、事案に応じて現物分割(不動産そのものを分ける方法)・代償分割(1人が取得し他の共有者へ金銭を支払う方法)・換価分割(売却・競売などで換金し代金を分ける方法)が検討される | 時間と費用がかかる最終手段。弁護士への相談を前提に検討する |
どの手段が良いかは、住んでいる人の有無・資金・関係性で変わります。優劣を決めつけず、「全員で売る」に近づける努力を先に、それが難しければ負担の少ない手段から検討する順番が現実的です。
売却の進め方や共有者間の整理は、LINEでご相談ください。物件と名義の状況に合わせて確認すべき項目を整理できます。
相続共有は早めに整理する──放置しないための一手
最後に、これから共有が生まれる場面──相続の話です。
相続した不動産を「とりあえず共有で」と放置すると、次の相続でさらに共有者が増え、修繕も売却も全員の足並みが必要な状態が続きます。空き家になった実家が動かせなくなる典型的なパターンです。
整理の一手を挙げます。
・遺産分割協議で単独名義にする:売却や活用を主導する相続人の単独名義にしてから動くと、その後の手続きがシンプルになります
・換価分割を使う:不動産を売却して、代金を相続人で分ける前提の分割方法です。「全員が公平に受け取りたい」場合に共有のまま持ち続けない選択肢になります
・相続登記を済ませる:相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務です(2024年4月施行)。名義が被相続人のままでは売却できないため、売る・売らない以前にまず登記を整えます
共有は「今の状態」であって、「そのままにしておくしかないもの」ではありません。関係者が元気で話し合えるうちに方針を決めるのが、いちばんの対策です。
まとめ
共有名義の家・土地の売却は、次のように整理できます。
・原則を押さえる:物件全体の売却は共有者全員の同意が必要(民法251条)。自分の共有持分だけなら単独で売却できるが、価格は低くなりやすい
・経済的には「全員で全体を売る」が有利:だから実務の中心は全員の合意づくり。持分確認(登記事項証明書)→意思確認→全員で媒介契約→委任状も使い決済→持分割合で分配
・税金は共有者ごと:3,000万円控除は適用できる1人につき最高3,000万円。申告も一人一人(2026年7月時点)
・まとまらないときは段階的に:共有者間の持分売買→持分のみ売却→共有物分割請求(最終手段・弁護士相談)
・相続共有は早めに整理:単独名義化・換価分割・3年以内の相続登記
共有名義は手順さえ整えれば普通に売却できます。まず登記事項証明書で現状を確認するところから始めてください。
共有名義の不動産のご相談は、LINEからお気軽にお問い合わせください。
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