官製マネー、米に集中加速ーーAI偏重で政府系投資の半分24兆円が北米へ、新興国は7年ぶり低水準|ONZA的市況ニュース
2026-09-13

記事内容:官製マネーが米国に集中、AI偏重で政府系投資の半分が北米へ
2026.9.13の日経新聞で、世界で膨張を続ける政府系ファンド(SWF)などの官製マネーを米国が吸い上げていると報じられました。
2025年は年金基金を含めた政府系投資額のうち半分にあたる1540億ドル(約24兆円)が北米に向かい、落ち込んだのは新興市場向けです。
AIブームがリスクマネーの偏りを生んでいると記事は指摘しています。
政府系ファンドは、政府が保有する余剰資金を運用する投資ファンドで、運用益による税収補完などを目的に設立され、石油やガスなどの資源収入や外貨準備などの国家資産を財源としています。
資金の出し手で際立つのはアブダビ投資庁など中東の政府系ファンドで、地域別の運用額の割合は2021年に中東・北アフリカがアジアを上回り、足元では世界の4割を占めます。
原油依存からの脱却を目指す中東諸国は、運用で安定した投資収益を狙っています。
向かう先はAI覇権にまい進する米国です。
2月には米AI開発新興のアンソロピックが政府系ファンドなどから300億ドルの出資を受けたと発表し、UAEアブダビ首長国の投資合弁会社MGXやカタール投資庁も出資しました。
MGXは2025年、米オープンAI向けのデータセンターを建設するスターゲート計画にも投資し、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は4月に発表した2030年までの5カ年戦略でAIを戦略分野に位置づけています。
調査会社グローバルSWFによると、世界の政府系投資のうち米国に流れた比率は2018年以降2〜3割で推移してきましたが、AI向け投資が本格化した2025年には一気に52%まで高まり、2026年1〜6月も58%とさらに上昇しました。
一方、2025年の中国やインドを含む新興市場への投資額は500億ドルと7年ぶりの低水準に落ち込み、全体の2割を下回りました。
2026年1〜6月も250億ドルと低調が続いています。
世界の投資マネーは中国離れが進んでおり、中国国家外貨管理局によると、中国国外から中国への投資額は2021年の3441億ドルから2024年は426億ドルにまで落ち込み、2025年は800億ドルと戻したものの水準は低いままです。
中国国内で長引く不動産不況が投資を敬遠させ、当局による監視の強化も外資離れを加速させる一因のようだと記事は伝えています。
中国から外への投資は一帯一路向けで増えていますが、外部からのリスクマネーを巻き込む動きには結びついていません。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、官民を合わせた世界の運用資産残高が2025年末に147兆ドルに達したと推計しており、円に換算すると約2京円規模です。
グローバルSWFによると、世界の政府系ファンドの運用残高も年々増えて8月時点で16兆5700億ドルとなり、単純計算で世界全体の運用額の1割を占めます。
長期的な視野でリスクをとれる政府系投資は本来、世界各国で進むインフラ整備など大規模事業の担い手です。
第一ライフ資産運用経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「AI一辺倒からの脱却が必要だ」と警鐘を鳴らし、中東情勢の緊迫化を受けて重要性が増すエネルギー関連投資にも資金を振り向けるべきだと主張しています。
外部からの投資が細る途上国では財政悪化の懸念が強まり、地政学的リスクも高まります。
米国への投資が一段と過熱すれば、たとえばデータセンターの収益期待が剥落した際などの経済ショックがより大きくなり、グローバルに投資を進める日本の企業や投資家も、巨大なマネーの偏在がもたらすリスクへの備えが欠かせないと記事は結んでいます。
ポイント:官製マネーの偏在を巡る現在地
👉 政府系投資の半分、1540億ドルが北米へ
米国向けの比率は2018年以降の2〜3割から、2025年に52%、2026年1〜6月は58%へ高まりました。
👉 出し手は中東、向かう先はAI
中東・北アフリカが世界の運用額の4割を占め、アンソロピックへの300億ドル出資やスターゲート計画など、米国のAIに資金が集まっています。
👉 新興市場は7年ぶり低水準、中国離れが進む
2025年の新興市場向けは500億ドルと全体の2割を下回り、中国への投資は2021年の3441億ドルから2024年は426億ドルに落ち込みました。
👉 偏在のリスクへの備え
政府系ファンドの残高は16兆5700億ドルで世界の運用額の1割に相当し、収益期待が剥落した際のショックは大きくなると記事は警鐘を鳴らしています。
不動産との関係:マネーの偏在を、個人の資産の偏りと収益の源泉で点検する
記事の主題は、マネーの偏在です。
偏った先である米国のAI関連には、収益期待が剥落した際のショックが大きくなるという問題があり、向かわなくなった先である新興市場やインフラには、資金が細るという別の問題があります。
偏在は両側に問題を作る、というのが記事の見方です。
集中が起きた経路は、アンソロピックへの300億ドル出資やスターゲート計画のように米国でAI関連の大型案件が相次ぎ、長期で運用する政府系資金がその成長期待を投資先に選んだことで、米国向けの比率が2〜3割から52%、58%へ上がった、という順番です。
投資の主体も対象も異なりますが、値上がりした資産の比率が高まり、配分が意図せず偏るという点は、個人の資産にも当てはめて考えられます。
家計の金融資産の増加は株高による評価益の拡大が主因だと内閣府が経済財政白書で指摘しているとおり、相場が上がると、意図しなくても株式の比率は膨らみます。
政府系投資の地域配分と家計の資産配分を同じものとして扱うのではなく、偏りが生まれる形が似ている、という限りでの比較です。
点検の物差しは、収益の源泉が何かです。
記事が挙げるデータセンターの収益期待は、将来の稼働と価格に対する期待で、期待が剥落すれば価格が先に動きます。
不動産の収益の源泉は家賃で、入居者との契約に基づいて入ります。
株式の収益は値上がり益と配当、不動産の収益は家賃という違いがあり、住宅の家賃は通勤の利便性、世帯や単身の人口の動き、地域の雇用、周辺の供給などで動くため、AI関連の収益期待とは異なる要因で動きやすい収入です。
これが、株式の比率が膨らんだときに、不動産が資産全体のなかで果たす役割です。
ただし、不動産にも資金が離れる局面はあります。
記事が伝える中国の例がそれで、中国国外から中国への投資額は2021年の3441億ドルから2024年の426億ドルまで細り、記事は長引く不動産不況と当局の監視強化が外資離れの一因のようだと伝えています。
この数字は政府系投資の新興市場向けとは別の統計ですが、需給が崩れた不動産市場から資金が離れうることを示す例です。
収益の源泉、流動性、借入の使い方という軸で株式と現物不動産を比べた整理については現物不動産 vs 株式(インデックス投資)── レバレッジ・インカム・流動性で整理するで整理しています。
だからこそ、不動産を偏りの点検先に置くときにも条件があります。
家賃が続くのは需要が続く場所だけで、駅からの距離、通勤先への出やすさ、世帯数の動き、周辺の募集がどれくらいの期間で決まっているかが、その裏付けになります。
需要の裏付けのない供給には資金が続かないことを、中国の例は示しています。
通勤先へのアクセス、単身と世帯の人口の動き、周辺物件の募集期間、競合する供給を確かめ、入居が続く見込みが立つ物件であれば、AIの収益期待とも新興市場からの資金流出とも別の理由で家賃が入る資産として検討しやすくなります。
資産のどれだけを守りに置き、どれだけを攻めに置くかという配分の考え方については投資資金の8:2ルール ── 守り8割・攻め2割で組み立てるで整理しています。
記事が日本の投資家に求める偏在への備えを個人の資産に置き換えると、値上がり期待に依存する資産に加えて、家賃のように源泉の違う収益を持つ資産を含めて偏りを点検する、という視点になります。
順番は、株式や投信、不動産ごとの評価額を並べ、それぞれの収益の源泉を確かめ、不動産については通勤需要、募集期間、競合の供給を確かめる、の3段階です。
ONZAとしての整理
今回の記事で目を引くのは、米国向けの比率が2025年に52%、2026年1〜6月に58%へ高まり、政府系ファンドの残高16兆5700億ドルが世界の運用額の1割に相当するという規模です。
これほどのマネーの流れを個人が動かすことはできず、相場は動かせません。
個人にできるのは、資産の収益の源泉を分けて持つことです。
ONZAが不動産をインカム資産として位置づけている理由はここにあります。
家賃は入居者の暮らしから生まれ、AIの収益期待が剥落するかどうかとは源泉が違います。
特定のテーマへの集中度を確かめ、源泉の違う収益を組み合わせて、一つの期待の変化に資産全体が引きずられない形にしておく。
それが、記事のいう偏在への備えを個人の規模に置き換えたものです。
もう一つは、記事が伝える中国の不動産不況と外資離れです。
需給が崩れた不動産からは資金が離れるという事実は、不動産なら何でも偏りの点検先になるわけではないことを示しています。
ONZAが駅からの距離と需要の持続性を最初の物差しに置くのは、家賃が続く条件がそこにあるためで、通勤と暮らしの動線がそろえば郊外でも需要はあり、動線がそろわなければ都市部でも家賃は続きません。
借入で持つ場合は、金利が上がっても返せる余力をセットにします。
長期の視野でリスクをとれる政府系マネーが本来はインフラの担い手だと記事が述べるように、個人の長期のマネーも、期待でなく実需に置くことで、長く持ち続けられる資産になります。
まとめ
👉 記事内容の要点
2025年の政府系投資額の半分にあたる1540億ドルが北米に向かい、米国向け比率は2018年以降の2〜3割から52%、2026年1〜6月は58%へ高まった
出し手は世界の運用額の4割を占める中東の政府系ファンドで、アンソロピックへの300億ドル出資やスターゲート計画など米国のAIに集中している
新興市場向けは500億ドルと7年ぶりの低水準で、中国への投資は不動産不況と監視強化で2021年の3441億ドルから2024年は426億ドルに落ち込んだ
政府系ファンドの残高は16兆5700億ドルと世界の運用額の1割で、AI一辺倒からの脱却と、収益期待が剥落した際のショックへの備えを記事は求めている
👉 行動指針
株高で膨らんだ株式の比率を確かめ、資産の偏りを収益の源泉(期待か、契約に基づく家賃か)で点検する
不動産を偏りの点検先に置くなら、駅からの距離、通勤先への出やすさ、世帯数の動き、募集から成約までの期間で家賃が続く需要の裏付けを確かめる
借入で持つ場合は、金利が上がっても返せる余力をセットにし、期待でなく実需で長く持ち続けられる物件を選ぶ
守りと攻めの配分を決めたうえで、値上がり期待の資産に加えて、家賃のように源泉の違う収益を持つ資産を組み合わせる
ご相談について
投資用でご検討の方
家賃が続く需要の裏付けがある物件かどうかが判断の土台になります。
検討中の物件について、家賃の裏付けと金利上昇時の収支まで、一緒に試算いたします。
売却をご検討の方
資産全体の偏りを見直して売却を考える場合は、残債、家賃収入、想定される買い手の属性を並べて確かめます。
物件の状況とご意向に合わせて、売る・貸す・持ち続けるの選択肢を一緒に確認します。
居住用でご検討の方
住まいは、暮らしやすさと無理のない資金計画で選ぶのが基本です。
金利が動く前提での返済計画も含めて、返せる額を軸に一緒に整理していきましょう。
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