世界で進む首都圏離れーー主要国の6割で人口集中が緩和、住宅高騰を映す|ONZA的市況ニュース
2026-08-02

記事内容:主要国の6割で、首都圏への人口集中が緩和
2026.8.2の日経新聞で、世界の主要国で首都圏への人口集中が和らいでいるとの分析が報じられました。
経済協力開発機構(OECD)加盟国の6割で集中の緩和が確認され、背景には住宅価格の高騰やリモートワークの浸透があるとみられています。
一方、日本は首都機能の分散構想が幾度も持ち上がりながら、一極集中が止まらないと指摘されています。
分析の枠組みを確認します。
国連の世界都市化見通し2025年版をもとに、OECD加盟37カ国(データがないオーストラリアを除く)について、総人口に対する首都圏人口の割合を調べたものです。
国連は人口密度が一定以上の一帯を都市圏と定義しており、そのうち首都を含むところが首都圏です。
日本では1都3県より少し狭いエリアを指します。
37カ国の平均値は2021年の16.9%をピークに下降へ転じ、直近の推計値がある23年も前年比で低下しました。
ドイツやノルウェーなど24カ国で集中が緩和しています。
フランスの事例が詳しく紹介されています。
23年の首都圏人口は前年比7000人増と、増加数は10年前の7分の1でした。
自然増で前年を上回ってはいるものの、首都圏とほぼ重なるイルドフランス地域圏では、17年から23年にかけて年平均3万6000人程度の転出超過が続いています。
仏国立統計経済研究所(Insee)は25年のリポートで「住宅費の高さが都市部を離れる動機になっている」と言及しました。
記事は集中の仕組みも整理しています。
一般に、人や企業は集積が集積を呼びます。
インフラの共有による税負担の軽減や取引コストの低下、交流によるイノベーションの創出など、集積の経済が働くためです。
一方で、集中が行き過ぎると、交通渋滞による生産性の低下や、住宅コストの増加による消費の抑制などを招きます。
住宅価格の上昇は、大きな都市ほど急でした。
OECDによると、過去10年間で住民数150万人以上の都市圏では住宅価格が約68%上昇し、25万〜150万人の都市圏(50%)や10万〜25万人の都市圏(37%)を上回りました。
中間層でも手が届かない水準とされます。
新型コロナウイルス禍も影響しました。
行動抑制で都心の就業機会が減ったほか、リモートワークが普及し、アイルランドの首都ダブリンでは22年に4780人の転出超過となりました。
一方、中央集権の傾向が強い日本では様相が異なります。
首都圏への人口集中度は右肩上がりで、30年には27.6%へ高まる見通しです。
韓国も23年の集中度が43.3%と、10年の42.1%から上昇しました。
首都圏を選ぶ背景には高い所得への期待があり、パーソルキャリアのJob総研が社会人を対象にした25年の調査では、仕事をする地域に1都3県を選ぶとの回答が7割を占め、理由は給与が高くなることが最多でした。
ただ、1都3県の1人当たり可処分所得は全国平均の1.118倍(15年)から1.084倍(22年)に低下し、ソウル首都圏も1.143倍から1.117倍に下がっています。
記事は、必ずしも暮らしの豊かさにつながっているとはいえないと指摘します。
是正に向けては、インドネシアがジャカルタからヌサンタラへの首都移転を進め、韓国も世宗市へ行政機能の一部を移しました。
東京大学の佐藤泰裕教授は「東京と異なる産業が集積する拠点を育てることは、既存の産業が競争力を失った際のリスク分散になる。
自然災害リスクへの対応を含め、一極集中の解消には一定の合理性がある」と話しています。
ポイント:世界の首都圏離れ
👉 OECDの6割の国で首都圏集中が緩和
37カ国平均の集中度は2021年の16.9%をピークに低下へ転じ、24カ国で集中が和らいでいます。
👉 背景は住宅高騰とリモートワーク
過去10年で150万人以上の都市圏の住宅価格は約68%上昇し、中間層でも手が届かない水準とされます。
👉 日本は一極集中が続く見通し
首都圏の集中度は右肩上がりで、2030年には27.6%へ高まる見通しです。
👉 所得の期待と豊かさのギャップ
1都3県の1人当たり可処分所得は全国平均の1.118倍から1.084倍へ低下し、必ずしも豊かさにつながっていないと指摘されています。
不動産との関係:人口の流れが、住まいの需要と価格をつくる
この記事の人口の流れは、不動産にとって需要そのものです。
住宅の価格や家賃は、そのエリアに住みたい人の数と、住宅の数のバランスに大きく左右されるためです。
記事の因果を不動産の側から読み直すと、行きと帰りの往復の関係が見えてきます。
行きの経路は、集積が人を集め、住宅の需要が高まり、価格が上がるという流れです。
そして価格が上がりすぎると、今度は住宅費の高さそのものが都市を離れる動機になり、需要の伸びにブレーキがかかる。
これが帰りの経路です。
イルドフランスの転出超過では住宅費の高さが動機として指摘され、ダブリンでは就業機会の変化とリモートワークの普及が背景とされました。
住宅費と働き方の変化は、それぞれ別の経路で人の流れを動かし得ます。
価格は需要を映す鏡であると同時に、行き過ぎれば需要を動かす要因にもなり得ます。
日本に目を戻すと、首都圏への集中は当面続く見通しです。
同時に、可処分所得の相対的な優位が縮小しているという記事の数字は、所得の高さだけで暮らしの豊かさを判断しにくくなっていることを示しています。
国ごとの集計データが個別の物件の値動きを示すわけではありませんが、住宅費と働き方が住む場所の選択を変え得るという方向性は、ここから読み取れます。
人口が増え続けるエリアでも、住宅費が家計に見合うかどうかは別の問題として残る。
この2つを分けて見ることが、記事から引き出せる需給の見方だと考えています。
ONZAとしての整理
不動産の需給を考えるときは、人口の総数だけでなく、需要と供給の中身を将来視点で見ることが基本だと考えています。
需要の側は、そのエリアに住み続けたい人がどれだけいるかという持続可能性。
供給の側は、住宅がこれから増える余地がどれだけあるか。
集中が続くエリアでも、供給が増え続ける場所では需給は緩みやすく、人口が横ばいでも、供給の余地が小さい場所では需給は締まりやすくなります。
世界の6割で起きた変化は、住宅費が人の流れを動かし得ることを示すデータであり、価格の勢いだけでエリアを判断しないことの大切さを教えてくれます。
家計の側では、記事の可処分所得の数字が示すとおり、所得の高さと暮らしの豊かさは別物になり得ます。
住まい選びでは、収入に対する住宅費の割合が無理のない範囲に収まるかを軸にすることをおすすめします。
働き方や住む場所の選択肢が広がるなかで、住宅費と暮らしのバランスをどう取るか。
ご自身の優先順位から整理することが、後悔の少ない選び方につながります。
まとめ
👉 記事内容の要点
OECD加盟国の6割で首都圏への人口集中が緩和し、37カ国平均の集中度は2021年の16.9%をピークに低下へ転じた
背景には住宅価格の高騰(150万人以上の都市圏で過去10年約68%上昇)とリモートワークの浸透がある
日本は首都圏への集中が右肩上がりで、2030年には27.6%へ高まる見通し
1都3県の1人当たり可処分所得は全国平均の1.118倍から1.084倍へ低下し、必ずしも豊かさにつながっていないと指摘されている
👉 行動指針
エリアの需給は、人口の総数だけでなく、需要の持続可能性と供給の増える余地という将来視点で見る
住宅費の高さは需要を動かす要因にもなると押さえ、価格の勢いだけでエリアを判断しない
住まい選びは、収入に対する住宅費の割合が無理のない範囲かを軸に整理する
投資で物件を見るときは、駅からの距離や周辺の募集状況など、そのエリアを選ぶ実需が続くかを確かめる
ご相談について
投資用でご検討の方
エリアの需給は、物件の家賃や空室に大きく影響します。
検討中のエリアについて、需要の持続可能性と供給の動きまで含めて一緒に確認いたします。
売却をご検討の方
人口や需給の動きは、買い手の関心にも表れます。
保有物件の状況とご意向に合わせて、売る・貸す・持ち続けるの選択肢を一緒に確認します。
居住用でご検討の方
住まいは、暮らしやすさと無理のない資金計画で選ぶのが基本です。
住宅費と収入のバランスも含めて、一緒に整理していきましょう。
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