AIで投資リターンは変わるのか――「効率的市場」と平均回帰の話|ONZA的市況ニュース
2026-06-26

記事内容
2026.6.26の日経新聞のコラム「大機小機」が、「AI(人工知能)は資産運用のリターンをどう変えるか」というテーマを取り上げました。
きっかけは、米国の学術誌に載った一本の論文です。「AIを使って運用したファンドは、使わないファンドよりリターンが高かった」。では、AIで運用すれば勝ち続けられるのか――コラムはここを掘り下げます。
結論から言うと、「AIを使っても、最後はみんな横並びになる」と書かれています。
理由はこうです。AIが有利だと分かれば、ほかのファンドも次々にAIを導入します。さらに、調査から売買まで自動でこなす「AIエージェント」が広まれば、使いこなしの差も小さくなります。
その結果、ファンドごとの成績の差は縮まり、どこも似たような「市場平均」のリターンに近づいていきます。
これは、専門用語でいう「効率的市場」に近づくということです。
効率的市場とは、誰も他人を出し抜けない市場のこと。みんなが同じ情報と道具を持つと、人より儲ける余地(超過リターン)が消えていくからです。
すると皮肉なことに、AIで武装するほど、何も工夫せず市場平均にそのまま乗る「インデックスファンド」が、いちばん賢い選択になります。
では、その市場平均のリターン自体は、これから上がるのでしょうか。
AI関連株は大きく上がっていて、期待はふくらみがちです。実際、AIが台頭した直近の約6年間は、年19.0%という高いリターンでした。
ただ、長い目で見ると話は変わります。米MSCIによれば、過去50年(1970〜2020年)の先進国株の平均リターンは年8.3%。インターネットもスマホも生産性を大きく高めましたが、株のリターンの「水準」そのものは、ほとんど変わってきませんでした。
新しい技術への期待は、たいてい早い段階で株価に織り込まれてしまうからです。だからコラムは、いまの高いリターンも、いずれ平均(年8%台)へ戻る「平均回帰」が起こりうる、と結んでいます。
ポイント
👉 「AIを使うファンドは高リターン」という研究
米国の学術誌に、AIを使って運用したファンドのほうが、使わないファンドよりリターンが高い、との論文が掲載されました。
👉 でも、いずれ差は消える
高リターンなら皆がAIを使い、AIエージェントで競争が激化。ファンド間の成績の差は縮み、市場平均に近づいていく、とコラムは予想します。
👉 行き着く先は「効率的市場」
誰が運用しても同じリターンになる「効率的市場」が実現すると、かえってインデックスファンド(市場平均に連動する商品)が最適になる、という皮肉が起こりえます。
👉 直近のAI相場は年19.0%
過去50年の先進国株の平均リターンは年8.3%。AIが台頭した直近約6年は19.0%と明らかに高い水準です。10年ごとでは70年代8.3%・80年代14.3%・90年代9.2%・2000年代マイナス2.3%・10年代12.7%と、時期で大きく振れています。
👉 歴史は「平均回帰」を示す
ネットもスマホも生産性を高めましたが、株のリターンの水準は大きく変わりませんでした。足元の高リターンも、いずれ平均へ戻る可能性がある、というのがコラムの結論です。
不動産との関係
このコラムには、不動産にも通じる学びが二つあります。
一つは、「みんなが同じ道具(AI)を持つと、人より得をする余地が消える」。もう一つは、「期待が先走っても、リターンは長い目で見れば平均に戻りやすい」。順にみていきます。
まず一つ目。
不動産は、株ほど「効率的」な市場ではありません。物件は一つひとつ条件が違い、地域性も強く、売り手と買い手が一対一で価格を決めるため、情報が広く共有されにくいからです。
だから、AIが普及しても「誰が見ても同じ価格」にはなりにくい領域です。
とはいえ、効率的でないことは両刃の剣です。情報がそろわないぶん、掘り出し物に見えて実は割高、という見誤りも起きやすく、手間もリスクも株より大きくなります。
二つ目の「平均回帰」は、不動産にもそのまま当てはまります。
最近の値上がりを「この先もずっと続く」と決めてかかると、価格を支える土台――家賃・所得・実需――から離れたところで、つまずきやすくなります。
ONZAとしての整理
このコラムが残す教訓は、シンプルです。
新しい技術が出るたびに「今度こそ違う」と言われます。けれど歴史を見ると、長期のリターンは、生産性や実需といった「土台」のほうへ戻ってきました。期待のほうが、いつも先に走るのです。
不動産の見方も、これと同じです。
AIや好景気で世の中が盛り上がっているときほど、私たちは「その価格を、家賃・所得・実需という土台がどこまで説明できるか」を確かめます。
相場のニュースに一喜一憂する前に、価格と土台の距離をみる。これが、長く資産と付き合ううえでの基本だと考えています。
まとめ
👉 要点まとめ
「AIを使うファンドは高リターン」という研究の一方、AIが広がれば差は消え、市場平均に近づく(=効率的市場)。皮肉にもインデックスが最適になりうる
直近約6年のAI相場は年19.0%と高いが、過去50年の平均は年8.3%。ネット・スマホでも株のリターンの水準は大きく変わらず、平均回帰の歴史
期待が先走る局面ほど、リターンは長い目で見て「土台」へ戻りやすい
👉 行動指針
最近の高リターンを、そのまま将来へ引き延ばして期待しない(平均回帰を前提に置く)
不動産は、価格が家賃・所得・実需という土台に対して無理のない水準かをみる
相場の「期待」と、生産性・家賃・実需という「土台」を、分けて捉える
ご相談について
投資用でご検討の方
金利のある世界では、その物件の家賃が地域の実需に支えられているかが、長く持つうえでの土台になります。
金利前提を含めた収支と、出口(売却・住み替え)まで一緒に整理いたします。
売却をご検討の方
市況や期待が動く局面では、価格の出し方とタイミングが結果を左右します。
今の市況でお持ちの物件がどう評価されるか、需要と流動性の面からお伝えします。
居住用でご検討の方
相場のニュースに気持ちが動きやすい局面ほど、暮らしと収支の地に足のついた判断が大切です。
暮らしやすさと周辺の需要、金利を踏まえて、ご家族に無理のない選び方を一緒に考えます。
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