京都市

京都市でテナントを借りるーー店舗賃貸・事務所賃貸の坪単価、立地、契約ポイント

京都市で店舗や事務所を構えて開業・出店するときは、住まい探しとは見るポイントが変わります。
賃料は坪単価で比べるのが基本で、契約では保証金や原状回復の条件が居住用と異なり、京都市では看板の規制にも注意が必要です。

この記事では、京都・滋賀エリアを専門とするONZA Estate代表の飯田の視点から、京都市で店舗賃貸・事務所賃貸を検討するときの賃料の目安、立地の選び方、事業用ならではの契約の確認点、市の創業支援までを整理いたします。
数値や制度は2026年10月時点で確認した情報です。

京都市でテナントを構える前にーー商圏の特徴

京都市は人口約143万人(2025年国勢調査の速報値)の大都市で、2025年の観光客数は6,279万人、観光消費額は2兆474億円にのぼります。
大学・大学院の学生も15万5,713人(2025年度)と多く、地元の住民、通勤者、学生、観光客という複数の人の流れが重なっています。
誰に来てほしい店かを最初に決めておくと、立地を選びやすくなります。

京都市のテナントの立地は、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
○ 中心部の繁華街・ビジネス街(四条河原町・烏丸・京都駅周辺など)
○ 周辺の区の駅前・商店街
○ 幹線道路沿いや住宅地

テナント賃料の目安ーー坪単価で見る

貸店舗・貸事務所は、総額ではなく「坪単価(1坪あたりの月額賃料)」で比べるのが基本です。
2026年10月時点でアットホームに掲載されていた京都市の貸店舗1,538件(重複を除き1,209件)をもとにすると、坪単価の中央値は次のとおりです。

エリア坪単価の中央値(月額)件数
京都市全体1.1万円1,209件
中心部4区(中京・下京・東山・上京)1.3万円696件
周辺7区0.9万円513件
京都河原町駅2.2万円60件
京都駅1.9万円21件
烏丸御池駅1.7万円48件
祇園四条駅1.6万円102件
北大路駅0.8万円45件

京都市全体では半数が0.8万〜1.6万円の範囲に入り、賃料の中央値は22万円、面積の中央値は約68㎡です。
たとえば10坪の店舗で坪1.1万円なら、賃料は月11万円が目安です。
小さな区画ほど坪単価は高く、30㎡未満の中央値は1.4万円、100㎡以上は1.0万円でした。
いずれも募集賃料(管理費等は含まない)をもとにした目安で、階数や広さ、物件の状態で大きく変わります。

事務所の掲載(1,037件)は店舗と兼用の区画が多く、店舗の一覧にない事務所156件の坪単価の中央値は約9,500円でした。

参考として、2026年の地価公示では、商業地の平均価格は下京区が約241万円/㎡、中京区が約203万円/㎡で、山科区(約27万円/㎡)の約9倍です。
ただし地価は土地の価格で賃料そのものではないため、賃料は募集中の物件で個別に確かめましょう。
エリアや物件選びのご相談は、
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立地タイプ別の向き・不向き

立地向いている店・客注意点
中心部の繁華街・ビジネス街観光客・通勤者・学生など、人の流れを取り込みたい飲食・物販・サービス坪単価が高く、駐車場は確保しにくい
周辺の区の駅前・商店街地元の住民や学生が通う飲食・美容・クリニック・学習塾など観光客の通りがかりは少なく、口コミや常連で育てる前提
幹線道路沿い・住宅地車で来る客や、地域の固定客を相手にする店通行量や見つけやすさで集客が変わり、看板の工夫が要る

観光客の多い通りでは、季節や曜日、時間帯による人の流れの差も確かめておくと安心です。

居抜きとスケルトン、どちらで借りるか

前の店の内装や設備が残る「居抜き」と、内装のない「スケルトン」では、初期費用と開業までの期間が大きく変わります。
前述の掲載1,538件のうち、「居抜き」の条件が付いた物件は258件でした。
●初期費用と期間
・居抜き:内装や設備を引き継げるため、工事費を抑え、開業までの期間を短くしやすい
・スケルトン:内装と設備を一から整えるため、費用と時間がかかる
●自由度
・居抜き:前の店の造りが、自分の業態に合うとは限らない
・スケルトン:業態に合わせて自由に設計できる
●引き継ぎと退去
・居抜き:造作の譲渡料がかかる場合があり、古い設備は後から交換費用がかかることもある
・スケルトン:退去時にスケルトンに戻す条件が付くことがあり、退去時の費用も見込んでおく

京町家を店舗として使いたい場合は、京都市景観・まちづくりセンターが事務局を務めるマッチングサイト「MATCH YA(マッチヤ)」で、事業用の京町家の物件情報も探せます。

事業用賃貸の契約で居住用と違う点

保証金と償却
事業用では、敷金にあたるものとして保証金が設定され、退去時に一定額を差し引く「償却」が付くこともあります。
金額や返還の条件は物件ごとに違うため、契約書で確認します。

原状回復
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、民間の賃貸住宅を対象にした基準です。
店舗や事務所では契約で取り決めた内容が基本になり、内装をすべて撤去して返す条件が付くこともあるため、退去時の費用も見込んでおきましょう。

消費者契約法と定期借家
事業として借りる場合、借主は消費者契約法の「消費者」にあたらないため、契約内容は事前に十分確認することが大切です。
また、定期借家で転勤などのときに借主から1か月で解約できる仕組みは、床面積200㎡未満の居住用の建物に限られ、店舗や事務所には適用されません。
途中で解約するときの予告期間や違約金の条件も、契約前に確かめておきましょう。

賃料以外の費用
共益費や看板の使用料などが別にかかることもあります。
保証金、内装工事費、設備費、賃料の数か月分を合わせた「開業までの総額」を早めに見積もっておくと、無理のない出店につながります。

京都ならではの確認点ーー看板の規制と市の創業支援

京都市では景観を守るため、屋上に設置する看板などの屋外広告物と、点滅式・可動式の照明を使った広告物を、市内の全域で禁止しています。
さらに市内は21種類の規制区域と7つの特別規制地区に分かれ、看板の大きさや高さ、色などの許可基準が地域ごとに異なります。
物件を決める前に、出したい看板が出せるかを京都市の広告景観づくり推進課などで確認しておきましょう。

創業の準備では、京都市の「特定創業支援等事業」も確認しておきたい制度です。
京都商工会議所などが行うセミナーや個別相談で、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野の支援を受けて市の証明書を取得すると、次のようなメリットがあります(対象はこれから事業を始める方と創業後5年未満の方)。
○ 市内で株式会社・合同会社を設立するときの登録免許税が、資本金の0.7%から0.35%に軽減(最低税額は株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円)
○ 創業関連保証を事業開始の6か月前から利用でき、市の創業支援資金(創業型)の融資限度額が1,500万円から3,500万円に拡充
○ 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の利率引き下げ
○ 小規模事業者持続化補助金の創業型(上限200万円)に申請できる

まとめ:京都市でテナントを借りるチェックリスト

○ 商圏:住民・通勤者・学生・観光客の流れが重なる。来てほしい客を先に決める
○ 賃料:坪単価で比べる(掲載物件の中央値は全体1.1万円・中心部4区1.3万円・周辺7区0.9万円・2026年10月時点)
○ 立地:中心部・周辺の駅前・幹線道路沿いで、客も賃料も変わる
○ 物件:居抜きかスケルトンかで、初期費用と開業までの期間が変わる
○ 契約:保証金・償却、原状回復、途中解約の条件を契約前に確認する(事業用の賃貸は消費者契約法の対象外)
○ 京都ならでは:看板の規制を物件決定前に確認し、特定創業支援等事業も活用する

人の流れが多様な京都市だからこそ、どんな客に向けて、どの立地で店を構えるかを先に決めることが、長く続く出店につながります。

京都の街全体の特徴は、別記事「京都市はどんな街?」もあわせてご覧ください。
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